表示件数
0

鉄路の魔女 〜Megalopolitan Witches. Act 8

「確かにそうだけども」
奴らは私らの糧を無駄に食い散らかすんだぞ!とシルバーは言うと、オレンジはそうねと答える。
「彼女たちはわたくしたち魔女の糧、イマジネーションをむさぼる邪魔者でしょうね」
それでも、とオレンジは和傘を下ろしながら続ける。
「わたくしにとってはいつまで経っても“仲間”なのだから」
わたくしはつい、守りたくなるものよとオレンジは呟いた。
「…そう」
昔から変わらないわね、姉さんとスカーレットはゆっくり立ち上がる。
「過去にこだわり、やたらと過去を大切にする…」
さすが、最古の“地下の魔女”とスカーレットはオレンジの方に歩み寄る。
「でもねぇ」
スカーレットは顔を上げる。その目は真っ直ぐに姉の姿を見据えていた。
「あたしたちには今しかないの」
この街が、世界が、いつ毀(こわ)れるかも分からないからとスカーレットは続ける。
「あたしたちは、今のために走り続けるわ」
スカーレットはそう言い切った。オレンジは暫くの沈黙の後、そうと呟きこう言った。
「それなら、わたくしを倒してから行きなさい!」
オレンジは傘の柄をバッと取り外し、中から仕込み刀を取り出した。
「言われなくともそのつもりよ‼︎」
スカーレットは再度赤い鎌を生成すると、それを構えて走り出した。オレンジもまた仕込み刀を構えて駆け出す。路地の真ん中で、2人の得物がぶつかり、甲高い音が鳴る。
「相変わらず頑固なのね姉さん」
「貴女も変わらないわ」
姉妹は鍔迫り合いをしながらそんなことを言い、2人はパッと後方へ飛び退く。そのまま2人は暫く武器を向け合いながら睨み合っていたが、そこへ突然オレンジの頬を銀色のナイフがかすめる。オレンジはスカーレットの後ろからシルバーがナイフを投げてきたことに驚くが、その隙にスカーレットが鎌で斬りかかる。しかしオレンジはそれを刀で防いだ。
「さっさとそこを通して下さらない?」
スカーレットは鎌で相手を押し切ろうとするが、オレンジは後ずさりつつもそれに耐える。

0

企画「鏡界輝譚スパークラー」の後から思いついたキャラ その2

・小祝 平穏(こいわい へいおん)
性別:男
身長:177cm
所属:緒道美術学苑
学年:3年
“死神”とあだ名されるスパークラー。
口数が少なく単独行動を好むことが多い。
かつて所属していたSTIで2度も所属部隊のメンバーが全滅する事件に遭遇しており、それが原因で余計人を寄せ付けないようになった。
“死神”というあだ名は、彼自身に原因がほとんどないものの2度も所属部隊の壊滅に遭遇しているがためについた不名誉なもの。
背が高くいつも黒のロングレザージャケットを羽織っていることもあってか、下級生を中心に恐れられている。
しかし本当は優しく、助けを求める声を聞けばちゃんと飛んでいって助けてくれる。
オノ美に来たのは前に所属していたSTIで仲間を亡くし居場所をなくしていた時に、オノ美所属の友達から「うちへ来ないか」と勧誘されて高3の春に転入したとのこと(転入には色々煩雑な手続きがあったらしいが)。
その後ある新入生を助けたことで一方的に彼女に懐かれるようになり、オノ美に勧誘してくれた友達に引きずりこまれるように件の新入生と自主結成部隊に所属することになる。
オノ美ではデザインを専攻しているが、前のSTIでは服飾について学んでいたとか。
雰囲気は怖いが何気におしゃれで自分で服を作ったりもできるらしい。

〈緒道美術学苑(おのみちびじゅつがくえん)〉
廣島・緒道にある美術系STI。
高校のみ、美術科のみを設置している。
入学時に油彩画・日本画・彫刻・デザイン・映像の中からどれか1つを専攻する。
そんなに強いSTIではないが、近隣に強豪STIが存在するためその辺は問題になっていない。
所属スパークラーによる制作物の展覧会が盛ん。

0

視える世界を超えて エピソード9:五行 その⑫

「じゃあお前がやれよ、潜龍の」
「何?」
「だから潜龍の、お前がリーダー。私は別に、この寄合さえ完成しちまえば誰が偉いとかはどうでも良いんだよ。だからお前が代表な。お前にとっても都合良いだろ? ちなみに、お前がやらなかった場合、一番不満が出ないであろう青葉ちゃんがやることになるぜ」
「…………分かった、引き受けよう。……で、何をすればいいんだ?」
「知らないよ。お前がテッペンなんだからお前が考えろ。もう私には責任無いからな」
「貴様…………」
結局、平坂さんと種枚さんで今後の方針を固めるということに決まり、残りのメンバーは自由解散ということになった。

市民センターからの帰り道、すっかり暗くなっていた道を白神さんと隣り合って歩く。
「いやぁ、わくわくするなー。ね、千葉さんや?」
「いや、自分は別に、どうとも……」
「んー? 千葉さんも〈五行会〉に入るんだよ?」
至極当然といった顔と口調で、白神さんが言ってきた。
「はい?」
「だってわたし、良さげな人を好きに身内にして良いんでしょ?」
「それは……どうなんだ……?」
「これで千葉さんはわたしのものだね」
「……それも、どうなんですかね……?」

0

鉄路の魔女 〜Megalopolitan Witches. Act 7

「スカイ、グリーン!」
空中で叫ぶスカーレットに呼応して、グリーンは緑色の太刀で幻影の口から伸びる舌に斬りかかる。幻影は情けない悲鳴を上げ、半身をのけぞらせるがそこへ跳躍したスカイが幻影の頭部に着地し、手に持つ空色の打刀を突き刺す。
幻影は暴れてスカイは地上に飛び降りる。そして地上ではシルバーが生成した銀色のナイフを次々と幻影に投げつけて幻影の体力を削っていく。幻影がわめく中、近くの建物の屋上からスカーレットが飛び降りる。
「さぁ、覚悟なさ…」
スカーレットはそう言いながら赤い鎌を構えて幻影に飛び込もうとするが、突然現れた少女に体当たりされて突き飛ばされる。
「⁈」
スカーレットはそのまま地面に転がる。周りの魔女たちは呆然とし、何が起きたのか分からないスカーレットは少しうめきながら上半身を持ち上げる。
幻影の目の前には、山吹色の和服を着たみかん色の髪の少女が和傘をさして立っていた。
「…あなたは」
姉、さん…?とスカーレットは呟く。
「貴女には“彼女”をやらせない」
和服姿の少女はそう言ってスカーレットに目を向ける。
「アンタは…!」
“オレンジ”‼︎と後方でその様子を見ていたシルバーは叫ぶ。
「お前、何のつもりだ!」
まさか…とシルバーは続けるが、オレンジは気にせず幻影の方を向く。
「まぁ、こんな姿になって」
痛かったでしょうとオレンジは幻影の頭部に手を伸ばす。幻影は小さくうめいた。
「よせ!」
シルバーはオレンジを止めようと駆け出すが、オレンジは目の前までシルバーが近付いた所で和傘を閉じて彼女に向けた。
「よしなさい」
オレンジはポツリと呟く。どうして⁈とシルバーは尋ねると、オレンジは悲しげに目を細めた。
「だって、“彼女”たちはかつてわたくしたちと同じ魔女だったのよ」
オレンジのその言葉に魔女たちは微妙な顔をする。

0

視える世界を超えて エピソード9:五行  その⑪

一頻り各自で盛り上がり、しばらくしてそれも落ち着いた。
「……さて、そろそろ話が飲み込めたところだろうし、いくつか決めごとをしたいと思うんだが、構わないね?」
種枚さんがそう切り出した。
「あまりトチ狂ったことを言わなければな」
平坂さんが答えた。
「別にお前らみたいなのに不利に働く提案はしないよ」
種枚さんが出した決め事は3つ。
一つ、新入りを引き入れた際には他の4人に報告すること。
一つ、可能な限り相互に連絡を取り、直接面会すること。この際5人全員の集合は努力目標で構わない。
一つ、身内の救援要請には、可能な限り応えること。
「な? 別に悪い話じゃなかったろ?」
「……まあ、そうだな」
平坂さんも納得している様子だった。
「はいはーい、メイさんからこれまた質問」
また白神さんが手を挙げた。
「何だよシラカミメイ」
「この5人で始めるってのは良いんだけど、リーダーとか代表みたいなのっているの?」
この問いには、種枚さんと平坂さん、犬神ちゃんの3人がぴくりと反応した。
「キノコちゃんがリーダーなんじゃないの? 発案者だし」
「馬鹿言え、こんな鬼子の下に就けっていうのか」
「私は正真正銘、ただの人間なんだけどねェ?」
「どこがだ」
また言い合いが始まった。