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Daemonium Bellum RE:ふぉーるんらぼらとり その②

「ここ、は……」
今目覚めた方の男性は、周りを見渡し、室内にいる唯一自由な存在にすぐ目を付け、食ってかかった。
「おい貴様! 誰に向かってこんなことをしている! さっさと解放しろ! 無礼な片羽根の罪人が、殺してくれる!」
「おーこっわ。こんな風に言われて解放するひと居るわけ無いじゃないですかぁ、ねー?」
「ネー」
長髪の青年は、先に起きていた男性と意気投合したように同意し合った。
「貴様、舐め腐りやがって……!」
パチパチと奇妙な音が鳴る。さっき起きた方の男性を見ると、彼の身体の周囲を青白い電流が走っていた。そういえばこの人、背中に白くて長い鳥の翼が1対揃って生えている。まるで……。
「『天使』に楯突くことの意味、とくと知れ!」
彼が叫ぶと同時に、電流が長髪の青年に向けて飛んで行った。青年は冷静に長剣で電流を弾き、流れ弾が私の足下にぶつかり焦げ跡を残す。
「あー、いけないんだー。地上に平和をもたらす天使さまが人間殺しかけたー」
「ウッワドン引くわー。地上の先住民たる俺ら『悪魔』を虐めるのはまァ良いとしても? だって迷惑するのは俺らだけだし? けどこんな無力でか弱い生き物イジめるのはさすがに最低だろー」
2人が揶揄うように言う。天使氏は悔しそうに歯ぎしりしながらも大人しくなった。

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厄祓い荒正し ep.1:でぃすがいず  その⑤

(角度ヨシ! 振り抜け!)
「はい!」
勢い良く泥の刀剣を振ると、それに従って刀身が勢い良く伸長し、地上の一点、雑木の下を貫いた。
「手応えあり、刺さりました」
(よっしゃ、引けィ!)
「はい!」
刀剣をぐい、と引っ張ると、鉤状に変化した刃が縮みながら、突き刺さった対象を引っ張り上げた。
「…………妖獣? ですかね」
(トゲトゲした鼠……にしちゃあデケエな)
油色の毛皮に身を包み、背中にはさっきまで飛ばしてきていたためか、少し禿げてはいるけれど棘状の体毛が並んでいる、大きめのネズミみたいな生き物が、泥刀の鉤に引っかかっていた。
(体毛を飛ばしていたわけか。にしたってあの速度はブッ飛んでるよなァ)
「気を付けましょう。また撃ってくるかも」
(いやァー……させねーよィ)
泥刀を神様の泥の余剰が伝い、瞬く間に妖獣を覆い尽くしてしまった。
(毛針も抑えた。コレで捕獲完了ってェわけよ)
「……流石神様」
(もっと褒めてくれても良いぜィ? お前は唯一の我が信徒だ。信仰と尊敬はいくらあってもあり過ぎることにはならねェ)
「はいはい。とりあえずコレの処理は後で決めるとして、この辺りに他に厄介な人外はいるでしょうか」
(雑魚の幽霊ならいくらか気配があるが……お前には分からねェのかァ?)
「残念ながら……。私、気配を感じるとかそういうのはあんまり得意じゃなくて」
(マ、追々鍛えていきゃァ良いだろうよ。そら、地上戦に行こうぜ)
「了解です」
神様が泥の足場を解き、私の身体は重力に従って落下していった。

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少年少女色彩都市・某Edit. Passive Notes Walker その⑤

理宇は持っていた2本の棒を地面に放り、ガラスペンを取り出した。輝くインキを無造作に垂らし、形成された大きなインキ溜まりの中に両手を突っ込む。一瞬待って引き抜いた両手には、インキと同様に輝く1双のガントレットが履かれていた。
「これだからバチは駄目なんだ。ちょっとラグができちゃうから。素手なら最速だ…………仕返ししてやる!」
口に溜まった血を吐き捨て、理宇は再びエベルソルに向かった。
敵から繰り出された3本の腕のうち2本を沈み込むように躱し、1本を手の甲で受け流し、空いた片手で顔面を殴りつけた。
続けて側頭を狙うエベルソルの攻撃を後退りながら躱し、再び始まった連撃もガントレットで防ぎ、受け流し躱していく。
エベルソルは連撃を続けていたが、突如その手を止め、再び背中を丸め身体を震わせた。
(! また腕を増やす気か!)
変化が起きる前に、理宇は素早くエベルソルの頭頂を殴り付け、地面に沈める。更にタマモの放った大型光弾2発が、腕型器官1対を吹き飛ばした。
「オーケイこのサイズが有効打な。160までなら上げてやる」
「タマモ先輩! 了解です!」
タマモは大型光弾を生成し、空中に十数発待機させてから射撃を開始した。正確に等間隔で発射しつつ、新たな弾丸を生成する。それを繰り返しながら、エベルソルの腕を重点的に狙い、理宇に向かう攻撃の数を減らしていく。

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Daemonium Bellum RE:ふぉーるんらぼらとり その①

目を覚ますと、私は知らない部屋の中にいた。どうやら硬い椅子に座らされ、縄と鎖で身動きが取れないよう拘束されているらしい。
「あ、起きました? おはようございます。そんな状態じゃ難しいとは思いますが、どうぞ寛いでもらって」
声の方に目をやると、長い銀髪の青年が長剣の刃の手入れをしていた。
何故こんなことになっているのだろう。起きる前のことを思い返してみても、普段通りの生活を送り、普段と変わらない時間に床に就いた、その記憶しか無い。
状況を整理するために部屋の中を見渡してみると、自分以外にも2人、同じように椅子に拘束されているのが見えた。項垂れているところを見るに、まだ目覚めてはいないのだろう。
「わ……私達をこんな風にして、あなたはいったい何をする気なんですか」
あの青年に、震える声で、それでもできるだけ毅然と、尋ねてみる。
「……そーだそーだー。そっちの羽根持ちならいざ知らず、俺がこんな目に遭わされるような恨み買った覚え無ェよォー」
自分の右側に拘束されている男性が、便乗するように口にした。どうやら意識はあったらしい。
「なァ、“片羽根”?」
その男性が、長髪の青年に言う。よく見ると、青年の腰の辺りから、真っ白な鳥の翼が右側だけ生えていた。
「そーいう『如何にも差別してます』みたいな言い方、良くないと思うなー」
「バァーカ、挑発でンな丁寧に呼ぶわけ無ェだろーが」
「それもそっか。……けど、今回の俺の目当ては、どっちかというとおたくなんですよ」
「マジで? 何それ気色悪りィ」
2人の言い合う声のせいか、最後の1人もようやく目を覚ました。