弱かったぼくのうた、なさけなかったぼくのうた、
きみが唄った、藍色の想い出のうた、
水のなか、ぽかり浮かんでゆく泡のように
いつか手の届かないきみのこと、
泪の意味を、瞳に映る光の色を、
ぼくは知らないまま、
きみは行ってしまった、
雨の向こうへ、
ぼくは忘れない、
きみの泪と
ぼくの泪の
溶けたあの雨の日のこと。
ポケットに仕舞い込んだビスケットは
幾ら叩いてみたところで砕けるだけさ
ママの焼いてくれたビスケットには
ママの幸せが詰まっているけど
それを食べたところで僕に幸せは訪れない
僕は僕のビスケットを
昔ながらのオーブンで
冷たい雨の夜、
一人ぼっちの信号機。
見飽きた広告看板の向こう側、
きっと大きな月が昇るから。
いつだって此処にいる。
思い詰めるような朔の気を晴らそうと話した話題に、思いがけない反応を朔は示した。
「え?って…聞いてなかったのか!?」
おじさんは驚く。それはそうだ。19年間も父について知らないだなんて。
「気にならなかったのか?薺に聞けなくとも…俺に何故聞かない?」
朔は哀しそうに微笑み、言った。
「後ろには、薊がいた。」
その返事に意味を取りかねていると、やっと箸を手にとる。
「母上が言わないって云うことは、何か理由があったんだ。それをわざわざ詮索なんてしない。
__いただきます。」
その大人びた横顔が、いつだかの"その人"に似ていた。
「お前さんは凪(なぎ)によく似ているよ。」
それは、朔と薊の父の名で。
その時、うつむいて見えにくかったが、朔は淡く紅に染まる。
会ったことがない、しかしそれでいて自分の父。恥ずかしいような照れくさいような、不思議な感覚が朔を包み込んだ。
「あの、おじさん__」
学校は嫌いだ。
そこには人と比べてしまう愚かな自分しかいないから。
家も嫌いだ。
家族といると自分がどれだけ劣っているか思い知らされるから。
「私の居場所はどこにあるのだろうか」
そんなふうに呟いてみたけれど、本当はそんなもの 探しても見つからないことは分かってる。全て自分のせいだということも、わかってはいる。だけど弱い自分はまた「居場所探し」なんて、くだらないことを始めてしまうの。
『アガルタの風』
「ガラシャ、やっと着いたよ。
ここが『旧都市カフカ』だよ。」
「何だか名前の通り不気味な程に黒の都市ねぇ。」
そこはA.L.Nの東端、古代都市の名残が今も残っている場所である。
身近にある場所だが未だ謎の多い場所である。
名前の通り都市全体が黒色で統一されており、そこはかとない雰囲気を醸し出している。
「ユリ、ユリ位の大魔法使いなら謎くらい解けるんじゃないの?」
「ちょっと難しいかな......私の専門は創造魔法だから分析魔法は専門外なのよ。」
「そう、なら仕方ないわねぇ。」
風は無機質へと質感を変え有機物の森へと流れていく。永久とも思われた繁栄も分裂の前には微塵にも砕け散ってしまったのだ。
「何だか儚いわ、儚くて仕方が無いわ。」
「多分それはね、ガラシャ。君が少しだけ大人になってしまったからだよ。」
「そう、なら仕方ないわね。あれから何年経ったっけ?5年くらい?」
「何だかんだ7年経っているようだよ、君も大きくなったよ。」
気持ちが変わってしまったのは、少しお空に近づいたから。
全てがおわってしまったのも、少しお空に近づいたから。
P.S.今回は少し長めになってしまいましたね。
少しまとめる努力が必要なのかも知れません。
いつか立派な大人になる
そう決めて
あらたまって
言葉が重くなり、こうべを垂れる
思い描くのは土のこびりついた手のひら
涙の染みた、満面の笑顔
そういったものを想像しながら
胸が詰まるような話を蓄えようと
あえいで、あえいだ
キリキリと傷んで
ぐっと耐えろ
いつか立派な大人になる
「あぁもう嫌になるよね」
って言ってるのに君は満足そうだ
僕は君のことを嫌いになりそうだよ
同じ列に君がいる
変わったことはただそれだけ
空は相変わらず忙しい
変わらないことはそれだけ
あ、眠いのかな?
あ、笑ってる。
楽しそうだね。
おはよう。
今日は、言えるかな
お疲れ様
今日こそ言えるかな
変わらないことは一つでしょ?
変わったことはただ一つ
変えられたこともただ一つ
タマシイの抜けたからだを
背負いながら歩く砂漠
くぅおー、ぐぅおーと叫ぶ音は
蒼い月が落つる音か
気まぐれに遠くから呼ぶ
生ぬるい南風
耳のうぶげに
そっと口づけ
すすの髪に七つのひかり
白磁のほほに野のいちご
ずっと命の扉を
さがしている