この時間帯なら、もう肌も気持ち悪くならないかしら、そう思って窓を開けてみるが僅かな風はまだ生温い。
「鍵かけるわよ。」
司書さんの声で我に返り、そそくさと図書室を出た。
「全く健気ね、あんなに毎日毎日通い詰めちゃって。」
「迷惑なだけです。」
「またまたぁ〜。邪険にも出来ない癖に。」
ぐっと言い返す言葉が詰まった。何も、本を閉じるだけで去っていく中途半端な気の利き方が気にくわない。
うっとおしいものはうっとおしくだけいれば良いものを。
「知ってる? あの子毎日ね、あなたが来る前に源氏物語の漫画読みあさってるのよ。図書室どころか授業にもほとんど出てなかったそうなのにね。」
健気ね〜、と、彼女は再び笑った。
それでも、漫画は漫画だしあんなバカ丸出しの感想なんて耳が腐る。司書さんは司書さんなりに楽しんでいればいいと思ったので、私はさっさと昇降口に向かった。
面倒だ。とても、物凄く。
けれども、仕方がない。私は本を読みに行っているだけ、と言い聞かせて学校を出る。
爪先の音、とんとんとん。
蝉の声、みーんみーんみーん。
ため息を吐いた。
夏はまだまだ長い。
「てかさー、光源氏はヤバいって。まじプレイボーイ。」
纏わりついてくる声に適当な相槌さえも打たずにページを捲った。新刊の単行本ももう半分を過ぎようとしているが、彼に懲りた様子はなかった。
「千年前にロリコンツンデレヤンデレ要素持ってくるとか強くね?! なんていうの、時代が違っても求めるキャラ像はブレねー的な?」
静寂。
エアコンの音が自己主張控えめに聞こえてくるだけだ。がー、がー、じー…。そろそろ新調した方が良いんじゃないかしら。
「てかあいつ、モテ男ぶってるけどやってること犯罪だかんな?! 許せねー。それだったら俺の方が…」
ひょいと髪に伸ばされた手をすんでのところで避けた。いつもはまとめていたが、冷房に油断して降ろしたままだった。私としたことがなんて愚かなことを。
「気安く触らないで。」
睨むのも惜しく吐くと、ぱたんと単行本を閉じた。閉館の時間が近い。
肌に張り付くシャツのうっとおしさもかなりのものだが、それ以上にこの人は厄介だ。どうせまた明日な、なんて私の言い分も聞かずに勝手に、
「ほんじゃ、また明日な!」
容姿とお揃いの派手な音をたてて出て行った。図書室では静かにと注意するのも彼には面倒くさい。
(続)
「俺、行ってきます!」
これがユウスケの日常だった
ユウスケは村の皆のために獲物を狩ったり、力仕事などを率先してやっていた
そんなユウスケの人柄をみんなが愛していた
そんな日々の内の1日...
いつものようにユウスケは狩りに出ていた
そんな時、見覚えのある顔が...
「お主...ユウスケだな...」
「えーと...確か...そう!ヒミコさん!お久しぶりです!こんなところにまでどうしたんですか?」
卑弥呼、ユウスケの村の近くにある、大きな村の村長である
「うーん...説明はできん、ちょっと来てくれ」
「わかりました...」
ユウスケはヒミコの村へ向かった
「いや~ほんとに、いつ来ても大きいなぁ...」
ユウスケは村の真ん中、村長の家に来ていた
ヒミコは早速なにかを始めた
「なにやってるんですか?」
「お前の運命を見たいと思ってな...」
「運命...」
「始めよう」
卑弥呼は目をつむった
ヒミコのみたユウスケの運命...
それはクウガとしての過酷な戦いだった
一人残された悲しみ、ギルスそしてアギトとの戦い...
ヒミコは全てを「見た」
そして、ユウスケから発せられるアマダムの力を使い、ある技を完成させた...
「終わりじゃ」
「うーん...なんかされたって実感ないなぁ...」
「いいのだ...呼び止めてすまない」
「いや、いいんです!では、また」
ユウスケは村へと帰っていった...
大型連休に入った。千本ノックのようなきつい労働からしばしの解放。頭がおかしくなりそうだった。ずっとネガティブな考えしか浮かんでこなかった。上を向くと、ポジティブになれると何かで読んだので、上を向いてみた。ちっともポジティブになれなかった。ポジティブになれる奴は、上を向くとすぐ脳への血流量が減るタイプなのだろうと思った。血流量の低下による痴呆状態をポジティブと錯覚しているだけなのだろうと。いまになって、額面通り受け取っていただけだったとわかる。上を向くというのは自己が上昇するイメージングをすることだったのだ。思考能力が完全に低下していた。ぼくは頭がおかしくなりそうだったのではなく、おかしくなっていたのだ。
イメージングは、上手くいかなかった。嫌なことがずっと忘れられなかったからだ。ぼくは嫌なことが忘れられるというので有名な、神社に行くことにした。
「ちょっとあんた」
露天の占い師の老女に声をかけられた。無視しようと思ったが立ち止まるしかなかった。なぜならバス停のすぐそばだったから。
「はい」
「嫌なことを忘れようとしてるだろ」
ぼくは老女から目をそらした。べつに驚かなかった。例の神社行きのバスが停まる停留所なのだ。
「あんなとこお詣りしたって無駄だよ。だいたいね。嫌なことってのは忘れようとすればするほど忘れられなくなるものなんだ」
「……そんなことはわかってますよ。ご利益がなかったとしても、山の緑を見て、新鮮な空気を味わうだけでだいぶ気持ちが変わるでしょう」
ぼくは目をそらしたまま、時刻表を指でなぞりながら言った。
「わたしが言いたいのはね。忘れようとするのは、明るく生きていこうとする気持ちがあるからだろ? だがそれはちがう。明るく生きてくためには嫌なことを忘れようとしちゃ駄目なんだ。明るく生きてくためには嫌なことと向き合わなきゃいけないんだよ」
なんだか腑に落ちるようなところがあり、ぼくは顔を上げた。
老女は、いなかった。露天も消えていた。けろけろと、蛙の鳴き声がどこかからきこえた。
ぼくは来た道を戻り、駅前のビジネスホテルにチェックインした。部屋に入るとすぐベッドに横になり、目を閉じた。
夕方、目覚めると、ぼくは蛙になっていた。
くだらない
物理基礎
外を見る
今日も雨
今なぜかやんでる
山は緑
光が射してきらきら
綺麗だな
なんだっけ
等速直線運動
まっすぐ伸びる比例のグラフ
君に届け
だめだ
赤点確定
まず一番に向かったのは屯所だ。資料を見ていくと、幾つもの、鬼による人間への理不尽極まりない行為がだいぶ目についた。
「酷いな…。」
思わず漏らす蒼。その資料は、反抗した村民を取り押さえた――もとい、証拠のない疑いをかけられた村民を虐殺したという内容。
それを覗き込む藤は、表情がなかった。
「何故こんなことを?」
愚問だ。そんなこと、朔は厭と云うほど知っている。返ってくるであろう言葉も、容易に推測できた。
しかし、聞かずにはいられなかった。
できるなら君と一緒に踊っていたいと思った。
強要はできないから、背中を押すことしかできないけど。
林檎の赤は
私の唇
林檎の赤は
私のほっぺ
林檎の赤は
私の心臓
林檎の赤は
私の血
美しく甘い赤に
染まりたい
いつも通り 朝起きて 改札くぐって
いつも通り 学校に着いて
正直 この世の中 どうでもいいんだ
色々あるけどさ めんどくさいのには
変わりがないじゃん?
そう思って何気ない1日が始まる。
と思ってたんだ
もうこの世の中には 君はいなかった
昨日 また明日ねって言ったのに
神様は不公平だな
君がいたから 何気ない1日を
僕は生きてこれたのに
今日という日は 今日しかない
数学嫌だな
その言葉でさえも 今日があるから
言えることで
僕は君にもらったたくさんの"今日"を
これからの今日と 共に生きていくつもりだ