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-季節 ⅩⅦ-

「白帆さん、夏川くん。二人はそういう'特殊な能力'とかあったりする?」
桜尾さんが唐突に聞いてきた。
'特殊な能力'…
彼は“人の心が読める”という特殊な能力を持っている。

「いや…僕はないと思います……よ?」
夏川くんが少し悩みながら言った。
私も
「……ないと思います、たぶん」
と答えた。
でも、そんなこと聞かれても…
「……今はないだけかもしれない…よね」
桜尾さんが苦笑いしながら言った。
やっぱりわかってて聞いたんだ。
(……?どうして聞いたんだろう?)
「じゃあ、あったらいいなって思うことは?」
なんだか楽しそう、桜尾さん。
元々人と話すのは好きなのかな?
「あったらいいなとは思います。'予知能力'とか。未来が予知できたらもっとこう………」
夏川くんがやけに真面目に答えた。

彼と知り合ってからもう二ヶ月ほどか。
初めて会ったときからちょっと変わった人だなとは思っていたのだが、時々変わったところで真面目になる。
(それも一種の魅力なのかも)
最近はそう思うようになった。

「'予知能力'ねぇ……」
桜尾さんがなんだか考え込んでいる。

短い沈黙。

「欲しいな。'予知能力'」
そう桜尾さんが言った瞬間、いつもは叫び声のような音をたててゆっくりと開く店の扉が、勢いよく開いた。

そこに立っていたのは髪を明るい色に染めた一人の青年だった。
(桜尾さんと同い年ぐらい?)
私がそう思って彼と桜尾さんを交互に見ていたら
二人の表情がいきなり変わった。
そして、扉の前に仁王立ちしていた彼が嬉しそうにこう叫んだ。

「巳汐!!」

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ぼくは見てしまった⑤

しかしよく考えてみる

これはただ

後ろの席の前島くんが

隣でようをたしているだけで

とても普通なことである

これはおかしい

いつもの前島くんなら

きっと僕がトイレしている

ところを覗いているはず

と、上を見る

後ろの席の前島くんが

覗いていた

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blue. Fi.

あのひとの火も海の中
ゆらゆらと

冷たい、ってどこを指すの
濡れた瞼に灯る青白い電光

傾いた一人と一人

落ちるグラス
割れない魔法をかけて

あなたの手は青白い炎に呑まれて
触れたところから
焼けていく

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無題。

自らの心の叫びが
罫線の上に散らばってるのを
そっと集めて読み返す

振り返ることで学ぶこと、気づくこと
たくさんあるから後ろを向くのも嫌いじゃない

自ら書きなぐった叫び声が
今も心に反響して
読むたびに涙が溢れるのは
それらの言葉が今の自分にもつながるものだから

振り返ることは嫌いじゃないが
そこに囚われるのは好きじゃない

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-季節 番外編②-

「はい、またまた始まりました。番外編!」
「あっ…また……」
「……えっ?」

Q.1 夏川くんに質問です。
  私のイメージの花はありますか?
A. 唯さんの……マーガレットとかかな?

「ほう。花言葉は?」
「……えっと…覚えてない(汗」
「あっ、そうなの(笑」
「ごめんなさい」
「次!」

Q.2 桜尾さんに質問します。
「えっ?また僕?」
  人の心が読めるって言ってましたよね?
「う……うん」
  いつから読めるんですか?
A. いつから……うーん…物心ついたときから…か  な。

「へぇー」
「生まれたときからなんだろうけど、言葉がわかるようになるまでわかんないかなー、と思って」
「なるほどー」
「今度は僕から」
「…えっ?」 

Q.3 白帆さんに僕、夏川から質問です。
「は…はい」
  茜さんとは仲が悪いんですか?
A. いや、仲は悪くありませんよ。ちょっと気が  合わないんです。

「自分より優れた兄弟姉妹って比べられたりするから嫌だよね」
「本当にそうなんです」
「桜尾さんも兄弟姉妹が?」
「いるよ。下に3人」
「夏川くんは?」
「僕は一人っ子です」
「ほう。私は茜だけかな」
「へぇ。で、またこれも暇潰し?」
「また?」
「はい。また暇潰しです」
「やっぱり(苦笑」

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-季節 ⅩⅥ-

「ありがとう」
いつも以上に素直に笑えた気がする。
その瞬間、

ババババンッッッ!

とてつもなく大きな破裂音がした。
「えっ…?」
ピカピカッとくすんだ窓の外が光った。
なんだろう……?
「花火…だね、今日」
桜尾さんが窓の外を見ながら言った。
そうだった。
今日はこの夏最後の花火大会。
「見に行くかい?」
私と夏川くんは顔を見合わせて、そして頷きあった。
桜尾さんがずっと座っていたカウンターから立ち上がって
「よし。もう店も閉めるしね。行こうか」

重い扉を開けると外では花火が大量に打ち上がっていた。
この辺りは田舎なので建物の背が低いため、どこからでもよく見える。
「人と一緒に花火見るって、初めてです」
夏川くんがそう言って私に笑い掛けてきた。
桜尾さんも
「僕も初めてだな。一人ではよく見てたけど」
と苦笑いした。
綺麗だ。
そういえば私もこんな風に誰かと一緒に話しながら見たことはなかった。
いつも見ているより一段と綺麗に見える。

「もう夏が終わるね」
桜尾さんが呟くように言った。
「そうですね」
私と夏川くんが同時に答えた。
今年も夏が終わる。いつもと違う夏だった。
濃い夏だった。
「たーまやーーー!!」
桜尾さんが叫んだ。
とても楽しそうに。
「たーまやーーーー!」

ー暑さが和らぎ出した夏の終わりの物語ー