大好きな 曲の歌い出しが 思い出せない
そんな モヤモヤした気持ち ずっと
飴をすぐに 噛んで 次に 進む
楽しい気持ち ばっかりじゃないけど
暗闇よりは 好きやな
目を開けて朝が来て
期待なんか初めからしてない
声を聞いて僕がいて
透明にすらなれないまま
影落としてひとりぼっち
明日だって同じように
目を閉じて夜が来て
夢の夢の夢を見る
底のない穴に落ちるような
浮遊感はいつかの夢で
宇宙にいたときみたい
蹴飛ばした指輪
夢か現か僕の目は
青白い光で霞んでいて
見えないだけ
震える手の体温が
冷えて消えてなくなっても
息をして僕がいた
だれかが話す。
心の中で、それもとびきり深い愛の言葉で。
自分じゃないよな。
愛の言葉をささやくお前は誰なんだ。
あなたを信じるわ。でもあなたは私があなたを信じていることを知らない。だからあなたは自分はひとりだと思っているはず。それとも誰かが自分を信じているとあなたは信じているの?嘘のようなことを現実と思うことが信じるということなら、信じることに意味はあるんだろうか。しんじるってなんだろう
幸福感はある。
充実感もある。
でも、不安がある。
達成感はある。
未来も希望もある。
でも、物足りなさがある。
なんで?
忙しい毎日に押しつぶされそうで
ただ与えられたことをこなす自分
果たしてこれでいいんだろうか、なんて月並みな悩み
どうしてだろう、発作的に星になりたくなる、
自由になりたくなる、鳥になりたくなる、
飛んでみたくなる、なんてオブラートに包んで言えば、現状もすこしだけでも柔らかくなるかもなんて思ってる時点で現実は棘だ針だ牙だ
どこかの誰かが鋭いナイフで
現実と私を切り裂いてくれないかな、なんてさ
甘い考えしてるうちは私は何者にもなれないし
何にもできないままだ
それなのに、それなのに
どうして期待してしまうんだろう
もっと頭を使って行動しなきゃ、
もっと時間を有効に使わなきゃ、
もっと効率よく終わらせなきゃ、
もっと手際よく片付けなきゃ、
もっと、もっと、もっと、なんて思って
君の見つめる視線の先
私じゃないあの子なんだって
そう、だって私は隣にいる
ねえ、もうあの子の話を聞きたくないんだなんて言ってみたくなるの
どうして、ねえ
ああ、私はきっと君のせいにしてしまう
だから、もう少しだけ隣にいてよ
雨なんだし、雨宿りでもして行こうよ
傘、もってないよ
オト
女の子は口の中でその名前を転がしました。
でも、それは本当の名前じゃないじゃない、
と言いかけましたが、思い直しました。
なんだか聞いてはいけないことのような気がしたし、オト、という名前が気に入ったのです。
男の子は何も言いませんでした。
人の名前に興味はありません。自分のにもないのだから。
女の子も、名前を尋ねてもらえなくても構わないようでした。
その楽器は、なんなの?見たことないな。
もちろん。だって、僕が作ったものですよ。
本当に?
はい。世界でこれ一つですよ。
女の子はまじまじと男の子を見つめました。
楽器を作るだなんて思いつきもしなかったし、その楽器だけではなく、この男の子が世界でたった一つのように感じました。
もちろん全ての人は世界でたった一つですが、彼は本当にたった一つのように感じたのです。
はじめまして、
女の子が言葉を発するのに、どれだけ時間がかかったでしょう。
小さな王国の中で、初めて見る人に声をかけるなんて、あんまりないことでした。
男の子は、女の子の言葉を聞きました。
王国の言葉は母国語ではありません。しかし、男の子は色々な国の言葉を喋ることができました。
旅をしているうちに、色々と覚えたのです。
あなた、名前は?
男の子は、困りました。
男の子は名前を聞かれることなんぞ、今まで一度もなかったからです。
僕のことはオトと呼んでください。
男の子は女の子の新品の靴を眺めながら言いました。
オト?
オト。ある国の言葉で、音、という意味なんですよ。
君達が何ともなく見えたあの人も
僕にとってはヒーローにさえ見えたりする
君のおかげで僕は人を思うことを覚えた
胸が苦しいと言うよりは
身体の奥から削れるような
君のおかげで僕は結ばれないことを知った
君は僕といる時よりあいつといる方が
綺麗に笑った
君のおかげで僕は
僕は 妥協を知った
君の近くにいる人を選べば
僕の視界の端に君が映るから
それを知ったら君は酷いと僕を睨むかな
それでもいい
全部君に貰ったものだから
君に貰ったものが僕を人間にした
暗い明日を思い描いてどうしていくんだい
君の本当の心はどこにあるんだ
進む道しっかり歩こう 自分の光を信じて
心が負けない限り
僕たちは 無敵なんだ
だから
君の明るい未来を 思い描いて
それが明日になっていくから
女の子が近寄ると、男の子はふと顔を上げました。
女の子は驚きました。
男の子が黒い瞳を持っていたからです。
小さな王国の民は、みんな緑色か、青い瞳をしていました。
男の子の目は風変わりでしたが、女の子はたいそう気に入りました。
男の子はぼうっと女の子を見ていました。
女の子は鮮やかなピンク色の服を着ていました。
目眩がするので目を閉じると、女の子から何やら甘い匂いがするのに気がつきました。
その匂いはチョコレートの匂いでしたが、男の子はチョコレートの匂いなんて知りませんでした。
女の子もまた、男の子から漂うふんわりとした匂いに気がつきました。
それは男の子が寝床としていたたっぷりの藁の匂いでしたが、女の子も藁の匂いなんて知りませんでした。