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2

LOST MEMORIES CⅩⅤ

「も、もうっ……!お昼までにはお戻りくださいね!」
「わかっているわ。」
慌てているメイドと楽しそうな母親を、少女は交互に見る。
「リヴィ、お出かけかい?」
低いその声の持ち主は少女の父。
「だ、旦那様!」
「ええ、お昼には戻ってくるわ。」
「あんまりメイドを困らせるんじゃないよ。」
苦笑しながら近づいてくる父に、メイドが旦那様もです!と言っているのを少女は目の端に見ていたけれど。
「パプリのこと、よろしく頼むよ。」
「はい、あなた。」
軽くキスを交わし、父は少女の頭をくしゃっと撫で、戻っていった。どうやら、偶然通りかかっただけのようだった。
「行ってくるわね。」
「はい、行ってらっしゃいませ。」
最終的に笑顔でメイドは送り出してくれた。

1

ポエ厶ティック

真っ直ぐに歩けないコクショの昼間

日陰を探してはおぼつかない足元

コンクリートの上で倒れた蝶々

階段の上で干からびたミミズに

なんとなくかけたのはペットボトルの水

太陽が僕の視界に入ったあと

怯んだのは僕か

怯んだのは世界か

生きるか死ぬかの戦いを

今、続けていることを思い出した

0

3行ポエム

この世界がもしも胡蝶の夢だったとして、それを君は証明出来るかい?この世界が全部幻想だとしたら、俺はその中で踊らされてるだけなんだね…

7

LOST MEMORIES CⅩⅣ

少女は透き通った瞳で見つめ返し、頷いた。
ふと、母の手首につけられたブレスレットに触れる。
「これ、綺麗……。」
母は微笑む。
「これはね、ママを守ってくれるもの。本当は、パプリのパパのものなのよ。」
「ママのはないの?」
「ママのはパパが付けているわ。」
「どうして?」
ふふ,と悪戯めいた瞳は少女をいとおしそうに見つめている。
「それが、愛しているという証だからよ。」
わかったような、わからないような表情を浮かばせる少女の額に、母は軽くキスを落とす。
「もちろん、パプリのことも愛しているわ。」
「パプリも、ママのことが好きだよ!」
もう一度抱き締め合い、母は少女を離す。
「さあ、出掛ける準備をしましょう。お昼までには戻りましょうね、今日はサミットの集まりがあるから。」
サミット? そう、不思議そうな顔をする少女。
「パパの大事な話し合いよ。ほら、大人の人たちいっぱい来ていたでしょう?今回は、パプリの国が会場なのよ。お昼から始まるのよ。」
「もう来ているの?」
「ええ。目には見えないルールみたいなものがあるのよ。」
柔らかく微笑み、改めて準備を始めた。

0

太陽

私から太陽を奪うコンクリートのビルは

今日、過去最大級に大きくなった。

今までにないくらい私を責め

また私の太陽を奪おうとしてくる。

小汚い雑草の私は

太陽がないと光合成ができなくて

死んでしまうの。

そんなことも知らないで

太陽の光をあびる手段を

私から奪おうとしている大きなビル。

決して壊せはしない。決して逃れられない。

大きなビルの影に隠されて

大好きな太陽を見られなくなった私は

生きる意味を失って

誰にも言わずに死んでしまうだろう。

私を失ってから大きなビルは、

自分のしたことを悔やむだろう。

それでも大きなコンクリートのビルは

自分を中心に世界が回っていると思ってるから

自分は悪くないんだと

開き直るだろう。

そして小汚い雑草の私は

キラキラ輝く姉と数少ない友達に悼まれて

死んでゆくのだろう。

0

三行ポエム

缶コーヒーがもうすっかりぬるくなったなあ、なんて思ってると、君が来た。声は、かけない。電車にのって行ってしまった。なぜかけなかった。

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LOST MEMORIES CⅩⅢ

*
煌々と燃え上がる暖炉の火が暖かい。パチパチとたまに弾ける赤が、耳に届く。
少女は、母の膝の上から離れ、窓際へ行く。曇った窓ガラスを小さな手のひらで拭いた。
水滴同士が繋がり、雫となって線を描く。窓が泣いているように見えて、悲しくなった。
「お兄ちゃんはいつ帰ってくるの?」
外の、ぼたぼたと落ちるような重い雪を見ながら少女は尋ねた。見渡す限りの白は、王宮の建物や像、アーチなどをどんどんその色で染めていく。白が何にでも染まる色なんて、嘘だ。
「この雪が溶けて、花が咲き始める頃よ。」
少女にはそれが、とても長いものであるように感じた。
「お兄ちゃんは、何をしているの?」
後ろに立った母親は、小さい我が子を撫でながら微笑む。
「国を守っているのよ。」
それがどういう意味なのか分からなかった。ただ、兄に早く会いたいと、それだけだった。
「パプリ、おいで。」
振り返ると、母が手を広げている。だから、少女は吸い込まれるように抱きついた。
母は女性を抱き締めていた腕を緩め、目線の高さを同じにする。そして、少女の赤みがかった頬を両手で包んだ。
「今日は、神殿に参りましょうか。」

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最強に強いヒーローじゃなくて、
最高に不様な負け犬のなり方を
模索している。

そっちの方がよっぽどクールだ。

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蝉時雨

道端の蝉の死骸に、いつの間にか止んでる時雨に、俺の恋も、人生も、こんなもんなのかな、って。
だから、短い生涯を精一杯生きよう、なんて思う俺は、感傷的になりすぎたのかもしれないな。