あれはもう忘れたな
もう思い出す事もない
昔の話
だから会っても分からない
いつかのおはようも、もう思い出せない
いつかのサヨナラも、もう思い出せない
考えても分からないから困るんだよ
どれだけ時間が経っても分からない
いつかは分かるのかな
でも勇気がないからな
できるかな
歌名は、僅かに頬を赤らめる。
「そこまで言ったことなかったよね。
はじめはって……今はどきどきしないの?」
歌名の問いに、少し考える望。
「しないわけじゃないけれど、独占したいと思っていたんだ。ぼくの横で笑っていてほしかった。
……今は、ただ笑ってくれればいいかな。真剣に想いを伝えれば伝えるほど、彼女は困る。困ったように笑ってはほしくない。」
止まっていた手を動かす。言葉にして初めて、自分の想いや考えを再認識する。
「それは、愛なの?」
「……どうだろう、たぶん愛になるにはまだ何かが足りないと思うよ。やっぱり、ぼくの横で笑っていてほしいと思うし、霧と仲良く話すのを見て妬くくらいにはまだまだ恋だろうし。
……ただ、それ以上に四人の時間や関係が好きなんだ。これを、壊したくない。」
望は歌名を見つめる。
「ぼくが壊してはいけないし、みんな壊さないと信頼してくれている。もちろん、ぼくもみんながそういうことをしないと信頼している。だとすれば、みんなとの時間や関係に対する想いは愛かもしれないね。」
歌名は一通り聞いて、長テーブルに突っ伏す。
「なんで私の周りはそういうことを恥ずかしげもなく……!」
私もみんなのこと大好きだよと、消え入りそうに紡がれた言葉は、穏やかな空間に吸い込まれた。
「望は瑛瑠のことが好き。」
目の前で書類整理をする同士の言葉に、思わず手が止まる。
「……うん、好きだよ。」
「それは、恋なの?」
そう言う歌名の目は、興味や好奇心というよりもずっと、純粋な質問の色をしていた。
ここで冗談を言おうものなら、しばらく口をきいてくれないだろうことは目に見えていた。
「たぶん、はじめは。」
だから、真面目に答える。これが、今出せる1番近い答え。
思った通り、歌名は怪訝そうにこちらを見る。
「今も好きなんだよね?」
「もちろん。」
わからないと顔で訴えている彼女に、微笑いかける。
「控えめに笑うところが可愛いし、何かしているときに手伝いを申し出てくれる優しさとか、周りをよく見ているところとか、意外と隙があって心配になるのも愛しいと思うよ。
――はじめは、それにどきどきしていたし、独占したいと思った。」
ちょうどいいところに収まりたい
密集したなかで 周りからの圧力のなかに自分の姿かたちを感じていたい
独りでは曖昧な 不確定なその輪郭を
ちょっと出ては叩かれて
もといた場所に戻される
居場所があるって安心感
出過ぎた真似をしている 杭は
抜け落ちてしまうのだと
18年も生きてればわかる
ちょっと出てしまったが
この程度なら問題はない
きれいさっぱり整った
味も素っ気もない人生
無味無臭の透明人間
だいすきなひとたちは
そばにいなくても
あえなくても
「このせかいにちゃんといる」
そうおもってしまっているけど
そんなほしょうは どこにもない
いなく ならないで
ここに いて
おねがい
【ふとした時に、あの人がいなくなっちゃったらどうしよう。と果てしない不安に襲われます。
この世界にいて欲しい、生きていてくれるだけでいい、そういうのを 愛 って言うのかななんて】
たった一回のクラクション
無我夢中で手を振った
多分あの1秒のために
私は懸命に生きてきたんだ
僕らはまた、夢を見れるのかな?
真夜中の街中を走り抜ける
夜空のキャンパスはとうに街の灯りに塗り潰された
どうしようもない現実に
僕は生きることを諦めかけた
けれど君は笑いながら言ったよね
「僕らの色で塗り潰し返せばいい」と
傷を厭わず、前に進む君が羨ましかった
だから、僕も前を向こう
何度だって立ち上がろう
君と夢を見るために
君とあの夜空で夢を掴むために
もしも、
この想いが消えないで
君のことを、
ずっとずっと好きでいることができたなら。
これが、
運命の恋ということなのだろう。
だから。
どうか消えないで。
吐き出した弱さが星屑になればいいのになあ
そうすればこの痛みも悪くないって思えるのに
冷たいきみにあげたいの
お飾りの言葉をだらだらと
定石もないよ
いつだってきみが一番だ
詰め込んだ理屈で笑顔を勝ち取れるなら
ぼくは溢れるほどの書物で埋もれて眠りたい