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ホームにたった一人で
次第に人が増え
いや、それは感覚で
君の声がした気がして
振り返って悲しくなって
やはりここにはただの僕だけ
昨日はここに君がいた
今日だってそのはずだった
慣れたもんさ独りなんて
そうさ慣れたもんさ
元々そうだったじゃないか
それが良いなんて独り言ちてたじゃないか
人はもと塵で
百年足らずの生を生きて
また塵に戻り行く
塵である方が長いのに
生であることが異質なのに
何故人は死を怖れるのでしょうか

警笛がなった
気がつけば黄色の線の向こう側
滑り込んでくるそのしたに
血塗れて喘ぐ僕を見た
誰も乗らない六号車
やっぱりそれは気のせいだった

帰ろうか

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LOST MEMORIES 402

「私、望さんとの約束をすっぽかして英人さんといる気がして、罪悪感でいっぱいです。」
「抜け駆けしてるつもりはないんだがな。」
「またそういうこと言う。」
瑛瑠の失礼な発言をひらりと受け流し、交わす冗談。
瑛瑠は一瞬瞳を揺らし、躊躇うように呟く。
「これはデート、ですか?」
察しのいい英人が深く聞かないのをいいことに、ずるい聞き方をしてしまう。
「お好きなように。……どうした?」
瑛瑠は少し笑う。
「デートなら、他の男性のことを話題にしてはいけないかと思って。」
「長谷川のことか?」
笑って返されたことに、瑛瑠は少し安心する。彼について聞いてほしい話があった瑛瑠だが、ふと気になったことが先に口をついて出てきた。
「そういえば英人さん、望さんとどうやって良好な関係に持っていったんですか?」
はじめは、望に気を付けろなんて言ってみたり、荒々しい感情をお互いに隠していなかった記憶がある。
薄く微笑った英人は、彼にしては珍しくもったいぶった様子で瑛瑠を見る。
「んー……内緒。」
その顔は、腹が立つくらいイケメンだったとか。

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ゆめゆめ忘れない

息を呑んではっとしたのはきっと一瞬のことだったと思う
負けないでの呪文で何度も生き返るような感覚
それでも私が誰かの力になっているのなら

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月の涙 7

 圭一さんの車に乗り込んだ私たちは、そのまま北の氷枯村方面へ向けて出発した。朝ごはんは途中コンビニで買う予定。妹は窓の外を見ながら早朝の閑散とした街の様子を見ているようだ。そのまなざしには楽しさと期待と、僅かな緊張が混ざっている気がした。
「どうしたの?」
私が妹に視線を送っていることに気付き、妹が尋ねてきた。私はいや別にと返すかどうか迷ったが、やがて
「……ちょっと緊張しているようだけど、大丈夫? 夜に疲れて眠くならないようにね」
「……ありがと」
妹はなぜかそっぽを向きながら応えた。心配されたのが癇に障ったのだろうか。窓の外を見つめる妹の表情は窺い知れない。
 その後私たち一行はコンビニに着くまで無言だった。

 妹はサンドイッチとジュース。圭一さんはパン数種類とコーヒー。私はおにぎりとお茶。それぞれの朝ご飯をコンビニで手に入れた私たちは車中でそれらを食べた。出発直後からの無言の時間とは一転、それぞれの近況を報告したり最近話題になっていることを喋ったりして楽しい食事となった。
「え、圭一さんって彼女いないんですか。意外です」
「そうなんだよ。なんでだか分かる? 中身が希薄そうなんだってさ」
「まあ、確かに」
「酷いな。そういう君は彼氏とかいないの? 高二でしょ?」
「私は……人付き合いとか苦手なので……」
「お姉ちゃんは美人さんだからお父さんが許さないの」
「へえ、そうなのか」
「違います」
……こんな感じで。
 お腹を満たした私たちは再び氷枯村方面に向けて出発した。途中までは高速道路を使って行くらしい。だんだんと熱気を帯びてきた街を抜けインターチェンジをくぐれば、いよいよ遠くへ旅に行く実感が湧きはじめた。本のことを気にしていた私も少しだけわくわくしてきたのは認めざるを得ないだろう。遠出するのは中学生の時の修学旅行以来だ。私の気持ちと同調するように、圭一さんの軽自動車はぐんぐんとスピードを上げて高速道路を駆け抜けていった。

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7月

この月はどうも現実離れしている
どんな願いも叶えてくれるような…
浮世離れした世界になる
きっと僕の祈りは天の川のどれかで
君の願いも天の川のどれかだ
君も、一番星には願わないだろう
そんな宇宙を今日だけは僕も君も見ていると
信じよう
この思いが届きますように
いや、やっぱり思いは自分で………ね
…………………………………………………………愛してる

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6月4週目

「永遠」はどこにあるのだろう
僕は「永遠」は望まない
きっと、消えてしまうから
だから、願いも
一番星じゃないんだ
小さくて光が乏しい星へ…
一瞬だけ輝かせればいい
これが僕の
「星に願いを」
…………………………………………………………今も…

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I Fly

消し去りたい過去を
無くしたい今を
全て翼に変えて
飛んでいく 飛んでいく
逃げるように
飛んでいく 飛んで
消えていく

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風船

どれだけ歩いたかなんて分からないけれど
なにがあろうともなにを言われようとも
どうしても見つけられなかったもの
視界の端にちらつかせた赤い糸
どれだけ目で追っても呪いは解けない

誰に嘲笑われ頭を踏まれようと
誰に褒められ頭を撫でられようと
やはり呪いは解けないのです

嬉しそうに風船の紐を握りしめた女の子
いつまで笑っていられるのかな
風船の紐から指を這い回り手首を絡めた赤い糸
気付いてしまった瞬間呪いになってしまう

どうかおぞましいそれに気付きませんように
永遠に呪いを擡げさせませんように
そんなこと呪いを絡めた手を合わせて祈っても
馬鹿馬鹿しいなんて分かっているのです

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なんで言わなきゃわかんないの?って

テレパシー使えるわけじゃないから

言わないと伝わらないよ

一緒にいた時間なんて関係ない

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告別の詩

今日もまた下らない太陽が上り
真っ青な空は吐きそうな程です
全身の気怠さは昨日の後悔達で
いつまでも僕の踝を掴むのです
こんな何でもない冬の朝だから
縮こまった体を少しだけ震わし
また今日も行くべき場所へ行く
目的などとうの昔に忘れました
こんな僕をこんな所に繋ぐのは
死ぬことさえ面倒に思う怠惰と
この世への未練かのような顔で
僕の心に居座り続ける恐怖です
自分の為に生きられるほどには
僕は強くなんてなれなかったし
誰かの為に生きられるほどには
僕は優しくなんてなれなかった
僕に死ねるだけの勇気があれば
僕はもっと幸せだったでしょう
努力することを覚えられたなら
僕はもっと幸せだったでしょう
それでもその何方でもない僕が
幸せだなと思う瞬間があるから
この世界はやっぱり意地悪です
僕の襟を掴んで離さないのです
貴方はこれをただの詩だと思い
また溜め息をつくのでしょうか
何れにせよ僕の中の浅ましさが
やっぱり僕は嫌いでなりません
誰に伝える気も無いかのような
こんな長ったらしい詞たちさえ
貴方は何故か拾ってくれるから
やっぱりこの世界は意地悪です
そんな詞ももうすぐ終わります
ですが最後に一つだけとすれば
僕は貴方のように生きたかった
それしか言うことは無いのです