言えないよ。
喉のところに言葉はあるのに、口にはできない。
それがくるしくて、たまらなかった。
目の前にいる人の目。
困らせてしまっただろうか。
ごめんね。
ほんとうは言いたいことがたくさんあるのに。
言えないんだ。
誰かを癒す歌も歌えず、
誰かを守る力もなく、
誰かを救える頭脳もない。
僕の生きる理由が
一体何処にあるというのでしょうか
僕がぱっと消えても
気付く人がいるというのでしょうか
それでもまた陽は昇る
屋上の朝は美しかった
黒髪美少女との突如の邂逅に、顔を見合わせたふたり。
とりあえず、今にも泣きそうなその少女に、拾ったものを返す。
「ごめんね、あなたのものだったんだね。」
受け取った少女は、小さくありがとうと言う。そしてすぐ背を向け、公園から出ていってしまった。
「……なんだったんだ。」
「ですね……。」
思い出せそうで思い出せない少女の落とし物にもやもやしながら公園を出る。しばらく無言で歩いていたふたりだったが、英人が不意に、瑛瑠,と呼ぶ。
「どうしました?」
少し考え込む様子の彼は、ひとつ間をおいてから、
「あの子どもを人間かどうか疑ったら、僕のアンテナを君は疑うか?」
なんて尋ねるものだから、とうとう瑛瑠も笑えない。
「疑いませんよ。……聞かせてください。」
「すごいね!」
「カワイイ!」
「めっちゃ分かる!」
ホントはそんなこと思ってないくせに。
周りの話を聞きながらそんなことを思う。
いつの間に私の心はこんなにも汚れてしまったのだろう。
純粋な私はもうどこかへ行ってしまった。
みんな嘘つきなんだ。
ああ、今日もまた
誰かが嘘を言っている。
詩を描くことを、いまは意識せずに生きたいと思った。たとえばふわりと放ったシャツの影のように、擦ったマッチの焦げた先のように、今朝おきたままのシーツの皺のように、
偶然のかけらみたいに部屋の片隅に転がっている美しさをぼくはかたちにもせずにきみに届けたいと思ったんだ。きっと未読のまま、つぎの週末くらいにきみは気がつくんだろうけれどそのとき、ぼくの瞼がちゃんと収まるんだって信じてるからきょうも、おやすみ
夜を広げてゆく黒い河に、ことば浮かべて、落っこちた三日月が滲んだ、みたいな、せーので飲み込んで、今日からわたしも音になるの。参考書に押しつぶされる予知夢をみたから、これは愛の告白、逃避行。知らないきみの手をとって、知らないわたしになる、3キロ手前のお話です。おやすみ、おはよう、あの丘までたどり着いたら、すこし休もうか。
たらい回しにされた挙句に
流れ着いた場所で停滞もできずに
またしても海へと漕ぎ出した
海岸線に吹く風は
耳のなかまで入り込んできて
くすぐったかったから足をとめた
テトラポットに登って対岸を眺める
いつかあそこへ漕ぎ着ける
そう決意して 決意した気になって
なんねん経ったろう
僕はまだペダルから足を離せずにいる
空が青いのは空が青いと教えられたから
星が輝いているのは星は輝くと教えられたから
じゃあ僕達は1テストを受けなければならないと
教えられたからテストをしているのかい?
そんなんじゃ面白くないでしょ、先生?
誰も知らない
誰も知り得ない
そりゃそうだよ
知ってたら驚くさ
知らないから仕方ないんだ
君が僕を
そんな風に言うのは
僕でさえそう思うんだ
だからそうやって
下手に知ろうとしなくて良いんだ
今ここにいる
僕だけを見てくれよ
他の誰でもない
僕という名の生を
たった今
僕だけが、生きている
ほらそこのお嬢さん、危ないから僕の手を繋いで
アイスでも買って帰りましょう