「おーいってらー」
「あ じゃあおれも行くー」
じゃあわたしも…と言いながら、膝の上に乗せたリュックに、手をかけた時だった。
「…あれ?」
リュックにいつもつけているはずの、ストラップがない。
「どしたー?」
わたしの声を聞いたのか、耀平が振り返った。
「あ いや、リュックにつけてるストラップがないなーって。ボールチェーンだから取れやすいし…」
まぁ気にしないで、とわたしは笑いかけた。自分で探せるし、と。
だが耀平からは、思わぬ反応が返ってきた。
「…探すの手伝おっか?」
思わず「へ?」と応えてしまった。
「ここ広いしさー…1人で探すのは無理があると思うんだけどなぁ」
そう言いながら、彼はわたしに歩み寄った。
その目はわたしをガッチリ捉えていた。
「え、いや…別に平気だよ。第一どんなのか分かんないだろうし…」
そんなわたしの遠慮を気にせず、彼はにやりと笑った。
「まぁ見てろって」
その目が黄金色に発光した。
三日月 月夜の独り舞台
黒猫だけの特等席
僕は1人でふらふらふわり
真夜中のお遊戯会
猫さん、月灯りの魔法で
人間になっておくれよ。
進め。戻れ。止まれ。
そんな風に自在に操れるものじゃないのは分かってる。でも、僕は今、時を止めたい。
だって、君と離れたくないから。
"I want to be Friend with you."
"You are not my giri Friend."
You said to me.
I don't leave you, so that I'm very sad,
But Your think no change isn't it?
手に入れた数だけ失って
望んだ数だけ諦めて
願った数だけ捨てられて
喜んだ数だけ悲しんで
罵られた数だけ睨みつけて
怒鳴られた数だけ逆らって
抗った数だけ押さえつけられて
それでも
死にたくなった数だけ 生き返って
今、息を
横並びに座るあなたと私。
「もしも」から始まった告白文。
それに私は「はい」と答えた。
恥ずかしさのあまり私は横から抱きついて
あなたの大きな背中の後ろに顔を隠した。
それにあなたは私の腕をポンポンして
私を落ち着かせてくれた。
思い出すだけで胸が高鳴る。
どうやらあなたのことがどうしようもないくらい大好きみたいです。
誰かの言葉を借りてばかりいたら
本音という延滞料金が付いていた
払えないので信用を失う
我が物顔は今や蒼白
貴方に会っているのに
寂しいと思ってしまうのは何故でしょう
それはきっと
貴方とお別れすることまでも
考えてしまっているから
自分だけで自分の顔を見られないし
自分だけで自分の背を見られないし
人間なんてそんなもんで
自分だけで自分のこと全部なんて分かるわけない
「好きです。愛してます。」
できればあなたも、私を好きになって、そして愛してください。
あなたへの想いが完全になくなってしまったの
私は他に好きな人ができて
あなたは私に気づく前に他の子と付き合って
好きとか
もう
わからなくて
あなたに二度と会えなくても
もういいや
じゃあね
また会えるかな
いや、うん。
たしかに私にも非はあると思うよ?
君の気持ちに気づいていながら……いや、君の気持ちに期待をしながら、私だって、何もしてこなかったんだから。
それなりに一緒に出かけてさ、機会なんていくらでもあったと思うし、あの時君の手に触れてさえいれば全く違った未来があったと思う。
思うけどさ。
先に想ってくれたのは、どう考えたって君でしょう?
もともと私、君のことなんて眼中になかったんだもん。アウトオブ眼中だったんだもん。
それなのに、君は私に話しかけてくれて、それなりに仲良くなってからも、電話やらお出かけやらしてさ。きっと二人の気持ちが重なったときだってあったと思うんだよ。
……気づいてたんだよ。
うん。確かに、君からの告白を待ってた。待ってしまっている私がいた。
でも、その頃にはとっくのとうに君の気持ちが変わってた。君さ、優しいから気づかなかったじゃん。
いつのまに心変わりしたのよ。
分かるんだよ?
だって、それまで私にむけてくれてた視線があの子のほうに向いてるんだもん。君って好きになり方がワンパターンなんだね。もうちょっと工夫した方がいいよ。
ねぇ、私、今、傷ついちゃってるんだよ?
どうしてくれんのよ。この感じ。
あんたまさか告白してないからセーフとか思ってないよね?
思いっきりアウトだから。バカ。
もう私のMP真っ赤っかだよ?
メンタルポイントが真っ赤っかなんだよ?
ゲームじゃないから特効薬なんてないんだよ?
おまけに私には一途っていう呪いが発動してるんだよ?
ゲームだったら1-1で即死だよ?
ゲームじゃないから生き返れないんだよ?
本当に、君は。
私史上最高の仲間だったよ。
私史上最強の敵だよ。
早くあの子と付き合っちゃってよ。
……じゃないとログアウトもできないじゃん。
「それも悪くない」に生かされて
「それも悪くない」に殺される
それも わるくない
「男女間に友情って成り立つと思うか?ちなみに僕は成り立つ派だ」
「それを女子に聞くあたり君らしいよ」
「ちょっとそこのおにーさん」
「何だお前。娼婦か何かか?」
「な訳無いでしょう。ただの世界に絶望したちっぽけな少女ですよ」
「ほう。で、そのちっぽけな少女が何の用だ?」
「世界に絶望した私ですが、そんな私でも『愛』ってものを知れば、まだ生きる気力がわいてくるんじゃないかな、なんて思ったりしたわけで」
「それで、僕に何をしろと?」
「はい、私に貴方の愛をほんの少し分けてください」
「無理だ。僕は物質至上主義の人間なんでね。そんな不確実な概念をどうこう、みたいなのは他所でやってくれ」
「まあまあそう言わず。もしも愛が与えたり貰ったりできるものなら、物質的な愛もあるかもしれないでしょう?一緒に探してください」
「『物質的な愛』か。なかなか面白いことを言うな。…ふむ。ではその発言に免じて少しくらいは付き合ってやろう」
「うわーいありがとうございます!」
・
・
・
「で、あれからもうひと月ほど経つが、愛は見つかったか?」
「さあ…。よくそんなに私に付き合ってくれましたね」
「それもそうだな。もう2週間早く諦めてた方が良かったんじゃないかと思わないことも無いが、せっかくだから最後まで付き合ってやろう」
「貴方、良い人ですね」
「止めてくれ。そいつぁあ買い被り過ぎってもんだ」
「もしかしたら愛ってものが見つかったかもしれません」
「ほう、唐突だな」
「ええ、大分唐突だと自分でも思います」
「何も無かったよな?」
「そうですねぇ。ところで神学的には、愛というものは4つに分類されるとか」
「へえ」
「神の絶対愛、隣人愛、友愛、恋愛の4つだそうです」
「それで?」
「まあ、そういうことです」
何回も失敗して、
「もう嫌だ」
って思っても、
「いや、もう一回!」
って同じ人の事を考えてしまう。
こんな女々しい自分が嫌になる。
そうだ、悟りを開こう
そうできれば楽なのに、
いつまでたっても開けない。
未来への扉と悟り