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桜木ノア #04 5月20日(月)

相変わらず桜木ノアがクラスメイトから好ましく思われないまま2週間が過ぎた。しかし、それは嫌悪から来るものよりも、彼女の言った通り無関心に近いものだったため、本人は居心地の悪い思いをしていないようだった。
そのことに密かに安心している俺がいた。
彼女がクラスメイト達に嫌われている間、もちろん良い気分ではなかったわけだが、しかし何もすることができないまま時間が過ぎていた。時間が解決してくれることを願っている情けない俺もいた。
俺はいつも、そうだった。
クラスメイトがいじめられているのを見たこともあった。けれど無関係であることを主張するばかりで、そこから助ける努力なんてまるでしてこなかった。そんな自分が嫌だったはずなのに、高校生になってもまるで成長していない。
桜木ノアには、そんなことはなさそうだ。
俺には彼女が後悔しているところを想像することさえできない。彼女ならきっと、そのストレートな物言いで事件を解決に導けるのだろう。
そんなことを考えながら、自覚してしまった。
俺はどうも、桜木ノアのことを気にしている。

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「今日は全体的に強い風が吹いています。南からの湿った空気により、日付が変わる頃には大粒の雨になるでしょう。」テレビから聞こえる予報を聞いて家を出た。強風に向かって走れば空を飛べる気がして。あぁ、そうだ、日の当たらない努力ほど尊いものはない。生きている限り。

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LOST MEMORIES 433

 チャールズは、わずかに肩をすくめるに留まった。
「気を抜いていました、以後気を付けます。」
 というのも、チャールズがどんな子どもか、なんて言うものだから。しかも、普段そんな気の抜いたようなことを言わないから。
「私、女の子に会ったとしか言っていないのに、なぜどんな子どもだったか,なんて聞くの。」
 瑛瑠くらいの年であれば、子どもなんて表現を、少なからずチャールズは使わない。
「しかも、普段のチャールズならそんな緩んだこと言わないのに。」
 嫌がらせだと思った。たぶん、ジュリア経由で聞いたのだろう。それなのに瑛瑠は何も言わないから。
 瑛瑠の嫌がるようなポイントをうまく押さえているのだから、相当性格が悪い。知っていた。
「……チャールズのばか。」
 楽しそうなチャールズの顔が横目に見えるから、なんだかどうでもよくなってしまって、お小言を受けることにした。

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LOST MEMORIES 432

「だから、そういうことを言っているんです。」
 しかめっ面さえきらきらしているなと思う余裕が出てきた今の瑛瑠は敵なしである。
「別に隠していたわけでもないんだよ。純粋に忘れていただけで……。」
 困ったようにため息をつくチャールズ。
「しかも、ヴァンパイアのアンテナ保証付きと来ましたか。」
 妙な言い方をする。
「どんな子どもだったか教えていただけますか?」
 ……改めて、妙である。
 重ねて、妙である。
「わざとなの?」
 ほんの少しだけ、癪に障った。

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世にも不思議な人々⑮ 斬って切る人その3

 通り魔の振り下ろした物体をオータロー、何とか躱すも、通り魔、遠心力を利用して素早く回転斬りを仕掛けてくる。その連撃を全てやり過ごしつつ、オータローは会話を試みた。
「何、その、長いの!刃渡り、が、完、全に、片手剣、なんだが!?」
「ッ、ノコギリ!」
「はぁ⁉そんなん、あんのか!」
「さあ、諦めて、嫌な記憶、飛ばそ⁉」
通り魔、いつの間にか左手に出刃包丁を持ち、二刀流で攻撃してきている。
「記憶、首ごと、飛びそう、なんで、遠慮、しとく!」
「往生際、悪いなぁ!ボクに、任せて、おけば、問題、無いから!」
「大体、嫌な記憶、と言うなら、お前に、遭遇、したのが、最悪の、思い出だよ!」
「何ぃ?こっちは、慈善、事業で、やってる、ってのに、その、言い草は、何だ!」
「クッソ…能力の、範囲に、回避が、あって、良かったよ、ホント!ああ、クソ!しつこい!」
「そっちこそ、観念して、斬られな!」
 そうこうしているうちに3分ほどが経過し、通り魔の方に疲労が見えてきた頃合い。何処からか何か四角い物体が飛んできて通り魔に当たり、
『通り魔はその中に吸い込まれた』。
「ハァ…一体…何だったんだ……?いや、何となく見当は付いてるんだが……」
「その通り。僕の能力だ」
 声の方を見ると、チャチャを先頭として第二コミュニティの面々が立っていた。

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2人の世界

「好き」って言葉が言えなくて
「こんにちは」「こんばんは」「さようなら」の
あいさつ交わしてすれちがうだけ
話しかけられなくて、
好きという気持ちを誰にも言えなくて
だけど、たまに会えるだけでも嬉しく感じている

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ほんと、ここは冷たいのね
少しだけ
笑ってくれてもいいんじゃないの?
それもしなくていいほど
さらけ出してるのかも
しれないけど。

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愛しい明日の延命装置

汗がしみてピリピリ痛む
今にもパーカーの袖が
赤く滲んできそうで怖かった
包帯も巻かずポケットにつっこむ
なかの百円玉を弄ぶ
いじめっ子から守り抜いたぼくの勲章
頬の内側が鈍く痛くて
ベッドのうえで蹲っていたい
痛い痛いと泣いていたい
でもそれじゃあ生きてるとはいえないね
殴られた痛みさえ
愛しい明日の延命装置