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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 4.フェアリー ⑩

廊下には様々な人々がいつもと変わらず行き来している。
…きっとこの中にも、わたしが出会ってしまった”彼ら”のような人間がいるのだろうな、と廊下を行く人々を見ながら思った。
だって笛吹さんも…いや、まだ彼女も”彼ら”と同じような人間だと決まったわけじゃないし、そもそもあれは…
そう自分の中で考えを巡らせているうちに、笛吹さんが廊下に出てきていることに気付いた。
「あ、ごめんね、待たせちゃって…じゃ、あっち行こっか」
「え、あっちって…」
ちょっと戸惑うわたしに、彼女はにこりと笑った。
「東階段。あまり人がいない場所だから、ね?」
確かに、わたし達2人が考えていることが一致しているのであれば、これからわたしが話す内容的にも、人があまりいないところの方が良いかもしれない。
「…わかった」
わたしがそう答えると、笛吹さんはちょっとうなずいて、人の少ない東階段の方へ歩き出した。
それから暫くして、わたし達は東階段に到着した。
そして、そこからさらに階段を下りて行ったところにある階段の踊り場に辿り着いたところで、笛吹さんはわたしに向き直った。

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リュウグウノツカイ

どうやら生まれる時間も場所もなにもかも間違えてしまったようだ。
決して光の届かない海底で密かに息衝く深海魚たちのように生きてゆこうか。

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世にも不思議な人々⑳ キタさん難受けるその2

で、どこまで話したっけか…。そうそう、能力の影響が空間全体に及んでいたってところまでだ。出られないのは困るのでまず僕は状況の把握をしようと試みた。さっきとは違って、実際に空間を歩き回って壁がどこにどのようにあるかを触って確かめて、そのイメージを可視化したのだ。これなら問題無く壁が見える。
で、分かったのは、空間は4m立方に区切られていて、隙間なんてものはないってこと。
………どうやって出ろと?無理だよ。詰みだよ。……まあ、出られたからここで話してるわけなんだが。
まず僕はこの能力が誰のものなのかを考えた。やはり怪しいのはあのマイマーだ。何せ消えちまったんだ。ただの大道芸人なわけがない。そもそもあんな意味ありげな登場したのにモブなんておかしいだろ?やはり奴が本体と見て間違いないだろう。
ではどのような能力なのか?その時の状態をそのまま言うなら、『中に入った者を閉じ込める空間を作り出す能力』だろうか?だとしたらそれこそ詰みだ。
いったい何故こんなことをするのか?純粋に誰かを閉じ込めて楽しんでるとか?それはまず無いだろう。閉じ込めることそのものが目的なんてサイコパス、そういない。だとしたら捕獲?回収に来ないのならそれも違う。
………まあ、面倒くさいので、真相を『可視化』してやりましたよ。ホント僕の能力便利。
それで無事脱出できたわけなのだ。どうやったかって?簡単なことだ。この能力の正体は、『パントマイムのアクションを現実にする』というものだったんだ。だから壁に近寄って、ドアを開けるような仕草をしたら、手応えがあって、空間に穴ができて、そこから出られた。能力の影響下なら他者のパントマイムも現実にするなんて、すごい能力だよ。
で、空間を出たら、どこからか紙を折り畳んだものが落ちてきた。文章が書いてあるようだ。それを読んだ僕は、今度こそびっくり仰天、驚いた。内容についてはまた次回な。

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❁✿✾ ✾✿❁︎

あなたのその涙で
綺麗な花が咲くでしょう

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Lonely 1

 夕暮れが僕らを照らす。並ぶ二つの影が、時折ゆらりと揺れた。過ぎる時間が、風が、心地よく柔らかい。
「今日のしょうちゃんすごかったね!」
 無垢な瞳に笑いかけられ、どくりと胸が波打つ。こんな風に、彼女に振り回されるようになってから、どれくらいたつだろう。
 そんなことないよ,なんて当たり障りなく返す僕は、今日も気の利いた言葉が出てこない。油断すると、違う言葉を吐き出してしまいそうになるから。
__伝えてしまいたい。
 そう思うけれど、
「しょうちゃん?」
 覗き込む彼女の瞳に捕らえられ、どっと汗が出る。
 この瞳を汚したくない。
 困らせるのがわかるから、今日も閉じ込めた。

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失恋

どちらが悪い訳ではないのに
お互いに謝ってしまうなんて
皮肉で苦しくて
縮まった距離がまた広がった気がして
泣きたくなるのです

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恋に落ちて#3

男は首をひねってみた。
「自分の身体を確認したいのだが……おかしいな」
「ロバは目が横についているのでいまの姿勢では見られません」
「つまり俺はいま、まさにロバだってことだな……しかしなぜロバに?」
「ロバとあなたの身体が、入れ替わってしまったからです」
「ではあそこで死んでいるロバは……」
「あれは数日前に狼に追われ、足をすべらせて落下したロバです。あのロバがクッションになってわたしたちは助かったんです」
「俺のロバではなかったのか」
「いいえ、あなたのロバです」
「どゆこと?」
「この場所は時空がゆがんでいるのです。ここは時空の裂け目でもあるのです」
「では俺たちと落ちたロバは」
「どこかで途方に暮れているでしょう。あなたの姿で」
「想像したくないな。そもそもなぜロバと入れ替わってしまうのだ」
「すべてわたしが悪いのです。だから殺してくださればよかったのです」
 男は黙って起き上がった。ゆっくりと。
 そのころ、男と入れ替わったロバは、若い雌ロバとよろしくやっていた。