「この子の名前、何にしようかしら。」
母の言葉に、強く反応する。
「“宙”がいい。宇宙の宙で“そら”」
母は笑う。
「それじゃあ、空ちゃんの名前を呼ぶときと、聞き分けがつかなくなるわ」
そんなの、ニックネームでも何でもつけてしまえばいい。
私の気迫に圧されたのか、ちょっと間をおいた母は、そうね、と呟き、
「この子の名前は“宙”にしましょう。空ちゃんが名付け親ね」
と微笑んだ。
私は嬉しかった。
この子を、あの海に連れて行かなくては。「馬鹿」ばっかり言わないよう伝えなくては。あと、UFOを勝手に操縦しないように言うことも。言いたいこと、伝えたいことが山のようにあって。
それでも、一言目は決まっていた。
「また会えたね、宙」
さっきよりもずっと小さい宙が、笑っているように見えた。
「ほら、言ったとおりだろ、姉ちゃん」
そう、言っている気がした。
おしまい。
あなたが
私の髪から零れる雫を
拭ってくれるだけでよかった
あなたが
ぼろぼろの私をそっと
抱きしめてくれるだけでよかったのに
近くにはいられないと悟ってしまった私は
あなたを押し返し
笑顔でさよならを呟いた
本当好きめっちゃ好き全部欲しい。めっちゃ
可愛い。自分が好きなあの子になら何されても
いい。全部好き。傷つけられても病んでても
ワガママ言っても全部好き。
ヤバいこれは…完璧に惚れてるな(笑)
HP 1/100 MP 0/50 職業・社畜
状態・毒/不眠/麻痺/鬱
▶行動 アイテム 防御 逃走
一歩踏み出せば全てが終わる▼
普段は温厚なあなたが怒ることもあると知って。ますますあなたのことが好きになってくる。
感情は出さなかったらどんどん忘れていく。
自分は忘れてたよ…あの感覚の事。
走った。祖母の家まで、走って走って走って走った。まだUFOがあるかもしれないと。
だが、庭には既に何も残っていない。破片や跡など、何一つ。
そんな中、まだ状況を呑み込めていない私に、一本の電話が入った。
『はやく病院へ、ばあばと来るんだ!』
父からだ。病院へは歩いて5分程度。胸が、どくりと波打つ。この偶然の奇跡に、胸の鼓動が高まる。
はやく。はやく行かなきゃ。
台所にいるであろう祖母へ、その場で病院!と叫ぶ。伝わっただろうか。そう思うも、今の私は、考えるよりも先に体が動いていた。一刻も早く着きたかった。
3階の304号室。頭の中でそう反芻させ、走る。
そして、病室の扉を開いた。
「お母さん!」
疲れているような、それでも嬉しそうに微笑む母の腕の中には、小さな小さな男の子。私の、弟がいた。覗き込むと、先ほどまでの男の子と顔がダブった。茶色い髪と、深く澄んだ黒い眼。
私は、息を呑んだ。
続く
「晴れてるね」
「雨が降ってる」
「雨が止んだよ」
「虹がかかったよ」
「また、明日ね」
ほら
取り留めの無い
ただのおしゃべりじゃない?
余命一年と言われる僕と
余命すらも分からない君とが
恋に落ちたなら
制限時間を理由にして
きっとお互いを愛し合えるんじゃないかな
でも君は僕より先に死んでほしい
残された悲しみ苦しみを味わうのは
僕だけでいいから
きみが落ちこんでいるときだけ開店する花屋のアルバイト店員になりたい
嗚呼、
「今日も」なんて
言葉だれが
言い始めたんだろうな
「明日も」みたいな
言葉消えてしまえば
明日はないんだな
消しゴムを手の平で
もて遊ぶ ただ転がって
どこかに逃げた
僕も、なんて、考えて
やめた
廃屋で雨やり過ごそう
きっと止まないさ それでいい
道ばたで小さな花を散らそう
そんな僕を誰が叱るの
君が現れる幻想を
君が消えてゆく残像を
きっと
今日も
追いかけてしまうんだな
足がもつれて
転びそうだ
私の言葉が間違いだったかどうかなんてわかんないけどね、だけどあのときあの瞬間何かが壊れたことだけはぼんやりと覚えているよ。
私の好きな或るアーティストが、「音楽と文学は似たようなものだと思う」と言っていた。「どちらも、書き手の自己表現なんだ」と。私はそれを聴いて、『だから私は音楽に惹かれたのかもしれないな』と思った。
或る暑い夏の日、私はいつも通り一人で学校から帰っていた。その日、私は朝からとても気分が悪くて立っているのもやっとだった。
私がいつものように人気のない河原を歩いていると、ふと上から飛行機の音がした。その音がまるで自分のすぐ真上にあるような気がして、私は何気なく上を見上げた。その瞬間、空を見上げたはずの私の目の前が真っ暗になった。そして、私はそのまま気を失ってしまった。
気が付いた時、私は真っ暗闇の中にいた。頭もちゃんと働いて意識もはっきりしているのにも関わらず、何故か周りが暗かった。初め私は、何らかの理由で目隠しをされているのだと思った。理由は分からないけれど、その解釈が一番納得がいくような気がした。しかし、『それならば……』と、少し疑問を持つ自分もいた。
『目隠しならば、少しくらい光が漏れ入っても良いのではないか? もし、光が漏れ入ってこないようにきつく結んでいるとしたら、何故頭がきつくないのだろう?』
そこで私は、目隠しを取ろうと頭の後ろに手をやった。しかしそこには、本来あるべきはずの目隠しの結び目がなかった。いや、結び目だけではなく、目隠しとして使用されているはずの布等すらなかった。そして気が付いた。目には何も巻かれていなかったのだ。
その事実を知った時、私はそのまま動けなかった。しばらくの間、全くと言って良いほどその状況における理解が出来なかった。そしてその意味が分かった瞬間、私はありったけの声で発狂した。今思えば、普通に考えてそこは病院だったのだから、とても周りの迷惑になっていたと思う。しかしその時の私は、今いる場所がどこなのかすらどうでも良くなっていた。私の声を聞きつけて、何人かの人がやってきたのが足音でわかった。その中に母の声がして、ようやく私は落ち着いた。私が母に対して、初めて安心感を覚えた瞬間だった。母が言うには、道端に倒れて動かなかった私を、偶然通りがかった人が見つけ、救急車を呼んでくれたらしい。
~続~