混沌とした夢のなかを
ただひとり歩いている
言葉を失って
ただひとり彷徨っている
あって無いようなものを
必死に手探り空回り
嗚呼疲れてしまったな
ふとひとつマッチを擦る
もうずっとずっと昔から
歩き続けて来たさ
死んだ言葉ばっかりだ
墓場に葬られることもなく
屍ばかりが轉がっている
泡沫の言葉を
刹那の歌を
玉響の歪ひずみを
誰そ彼に染まった夢のなか
たったひとり
汽車に揺られている
「世の中に悪態をついたって何も変わらないよ。」
「そんなことは分かってるよ。」
「何も変わらないから悪態をついてるんだよ。」
「どういう事だ?」
「何も変わらないってのがなんか自分らしくていいじゃん。」
「お前のポジティブってねじ曲がってるよな。」
「君が好きなんだ」
そう口にして初めて、僕は“好き”という感情が何かを知った気がする
他の誰にも代えられないたったひとつ、
素直に君に伝えたいと思った言葉
我が儘だと思った
片想いだと思った
また嫌われるんだと思った
違った。
僕が思ってるよりずっと、君に愛されていたんだ
もう誰かに愛されることなんて、
許してもらえないと思っていたんだ。
砂漠。宇宙。大海。森林。都市。氷上。蒼天。
僕がこんな風に単語を羅列すれば、君たちの頭は自由にそこへ舞うのだろう。
けれど僕はここに張り付いたままで動けない。
媒体の上でただ待っているしか出来ないんだよ。
雷が光って隣におちる。
風は生あたたかく雨は降らない。
千草色の瞳の彼はそこに灰色の空を映して旅を続ける。
怖くないよ。大丈夫だよ。
なんて気休めにもならない言葉しか
吐き出せない僕は
一体いつになったら
君を抱きしめれるんだろう
言葉だけ
一人歩いて行く
僕の知らない場所で
けたたましく鳴っては
言葉だけ
一人歩いて行く
さんざ火あぶりにされたあげく
プラットフォームの隅に打ち捨てられ
言葉だけ
一人歩いて行く
独善的な励ましと提言
僕の心とは裏腹な
言葉だけ
一人歩いて行く
せめてこれだけは、と
何時間でも謳い続けるんだ
森ノ宮駅二番ホームのベンチで
そいつは息も忘れたように項垂れていた
飲みかけのコーラをやると
少し舐めて、また気の抜けたような顔で
"ここにしかない言葉"なんて
結局どこにもなかったんだ
私なんて消えてしまえばいい
こんな中身が個性なら
なくなっても困らない
ここまでくると泣くのが間違いみたいで
でも涙はまだ枯れないんだ
いつの間にか歪んで狂った愛が
私を締め付け殺しにかかる