太陽が乱反射したむこうの月が
私の父だと知らされたとき
ひっくりかえったサメのとなりで泣いていた母を
今も覚えている
犬と猫が恋におちるように
ヤクザみたいなサメと愛しあった母は
私を縛りはしなかった
人生で愛するひとが
父とサメのふたりいる母と
ひとりもいない私は
マーメイドの群れのなかで
ひかる真珠をながめている
いつか私が陸にあがったとき
月にむかって歩いて父を迎えにいこう
そうして
誰かを愛する術を太陽に問うのだ
そろそろバイバイしたほうが
自分のためにもいいのかもね。
あと少しだけ君の隣に居ようかな。
もしかしたら君の前から
黙って消えるかもしれないけど。
あるじをなくしたカイト
月をめざして真空
ネオン街道の片隅
泥食って、寝て、起きて
電気うなぎの夢をみる
教室の匂いも
あの子の柔軟剤の香りも
大嫌いだった。
ただただ青春とかいう物を
送りたかっただけなのにさ。
まるで他人とは違う。
楽しいなんて嘘でも言えない私と
本気で楽しんでいるあいつ
どちらが正しいかなんて
わからないけどさ
きっとあいつにはわかりやしない。
この気持ち。
楽しんできたやつに
私のことなんて見えてないでしょうから。
神様。
聞こえていますか?
あなたがたった一つの
あんなものをつくってしまったから
こうなったのよ?
別にあなたのせいにするつもりはないわ。
こうでも言わないと
あなたはきっと気づいてくれないでしょう?
もう先生を喜ばせるために勉強するのやめたんだ
そういう一瞬の淀んだ喜びは
苦しみを越えた本当の気持ちに勝てないって分かったから
私の方が努力したのに
努力してないあいつの方が
おもいっきり楽しんでるなんてもう嫌なんだ
自分の本当の気持ちで動きたい
それがくだらないことだとしても
あり得ないくらいに気持ちが高ぶるんだ
ぺらり、紙をめくる音
僕が貸した本をずいぶん大事そうに読むんだね
難しいから読まなくてもいいって言ったのに
もう残り数ページ
僕はごくごくラムネを飲んだ
そろそろ読み終えるかな
すると彼女がぽつりこぼした
「おもしろかった」
ぽくっと、ぽくりと、ほおを膨らませて
「きみの本、好きだなあ」
彼女だけが僕の作品を認めてくれる
残りひと口のラムネを飲み干した
新しい日々に
笑顔が消えていた。
元に戻ることのない日々を探して
手を伸ばす。
あぁ。このまま手も届きそうにないな。
きっとこのまま新しい世界へ。
巡り巡って出逢った世界は
少し壊れた世界だった。
挨拶の方法でさえも
変わってしまうのだろう。
さぁ、今新しい世界へ飛び出そう。
一歩前へ。
私が踏み込んでしまった世界は
壊れているけれど
もう後戻りはできない。
一度変えてしまったものは
もうなおらない。
しょうがないから前を向こうか。