「……助けてもらってどうも」
野良犬が頭を下げながらもごもごと言った。
「ほんとに感謝してる?」
「はい」
「いや、そんな感じしないなあ」
「してますよ」
「そうかあ?」
「してますって」
「またまた」
「してますしてます」
「嘘だあ」
「嘘じゃないって」
「そーお?」
「はい」
「じゃあ、証明してみせてよ」
なるほど、そういうことか。野良犬は腹をくくった。
「わかりました。おともしましょう。鬼退治に」
「そうこなくっちゃ。わたしの名前は太郎だ。よろしく」
俺の名は、と野良犬は言いかけたが、どんな名前だったのか思い出せなかった。名前があったのかどうかもわからなかった。なのでかわりに、「きび団子は?」とたずねた。
「そこの茶店で、茶を飲みながら一緒に食おう」
中年男、太郎はそうこたえて、あごをしゃくった。
*
図書館で本を数冊借りてはろくに読まずに返し、また数冊借りてはろくに読まずに返しを繰り返している。
映画もそうだ。たまに無料動画配信サイトのおすすめなどを面白そうだと見始めるも、すぐに飽きてしまう。
本にしても、映画にしても、有料であれば最後までつき合うのだろうが、そもそも金を払う気がない。
なぜこのようなクールダウンを起こしてしまうのかというと、言うまでもない。ネットの弊害、情報に希少性がなくなった、に加え、年をとったからである。
ネットの弊害というのはよくわからないけど、やっぱり年とるとそうなるんですね。嫌だなぁ。つまらない。なんて若者は言うかもしれない。そしてどこかに行ってしまおうとするかもしれない。が、待ちたまえ。そこが若者が若者たる所以。生きることはつまらないことなのだ。つまらないことを面白くしようとあがくみっともなさを自覚し、つまらなさを受け入れる強さを持たなければ未来は暗黒である。
と、かようなことを考えながら近所のバーのカウンターで太郎は酒を飲んでいた。
三十日ぶりのアルコール。ビールの中瓶を一本空けたが、気分の高揚はない。二本目を注文。三十日前の太郎だったら常連客の会話に割り込み、杯を重ね、ふらつきながら二軒目に行っていただろう。だがしかし、太郎は決心したのだ。日々を淡々と生きることを。
ある日の午後、野良犬が、犬も歩けば棒に当たるなんて言うが当たんねえな、なんて思いながら歩いていると、中年男が声をかけてきた。
「やあ、君。これから鬼退治に行くんだが、よかったら手伝ってくれないか? いやもちろんただとは言わない。報酬としてきび団子を一つあげる。どうだ?」
なんだこいつ。野良犬は、しばし男の顔をじっと見つめた。男の目には、狂気が宿っているように思えた。鬼退治とか言ってぱっと見武器らしきものは所持していない。野良犬は男に尾を向けた。
繁華街に出た。それにしても腹が減ったな、きび団子、もらっておけばよかったかな。いやいや、あんなのに関わったらろくなことはない。これでよかったのだ、と、おのれを納得させたあたりで、角からお仕着せを着た男たちが現れた。
自警団か、ご苦労なこった、と野良犬はつぶやき、男たちの間をすり抜けようとした。
瞬間、首筋に衝撃が走った。
何が起こったのかすぐにはわからなかった。パニックを起こし、首を絞められながら逃げようとする野良犬の前に、棍棒を持った男が立ちはだかった。
男が棍棒を振り上げた。
「おい待て!」
太い声が響き、動きが止まった。
「それはわたしの犬だ。その輪っかをゆるめてくれたまえ」
そう言いながら近づいてきたのはさっきの中年男だった。
かなり強く絞められていたようだ。捕獲棒のワイヤーから解放されたころには、息も絶え絶えになっていた。
リーダーらしき男が中年男の前に進み出た。やりとりから、男たちが保健所の職員だとわかった。
「野犬を媒介した伝染病が流行ってましてね。飼ってるなら首輪とリードをつけてください」
リーダーらしきはそう言ってから、部下らしき男たちに目配せをし、背を向け、歩き出した。部下らしき男たちが、あとに続いた。
にっこり笑顔
手を振るすがた
いつも見ているよ
ありがとうさよなら
届かぬ声の代わりに手
無意識に振ってしまった
身勝手で不愉快でごめんね
わたしはにっこり笑えたかな
世の中には、百や千の長文にも勝るたった一つの名言があるんじゃないかな、などと思うナニガシさんです。しかし、そんな名言を百や千集めても敵わないほどの名作だって、あっておかしくないかな、などとも思うのです。
単刀直入に言うと、他人様の書いた長編が読みたい!某人外がわちゃわちゃする長編シリーズも、某異能力者がわちゃわちゃする長編シリーズも、いつの間にか自然消滅。何となく物足りなさを感じていた頃に、テトモンよ永遠に!さんが主催した魔法譚。つい先日(つってももう去年の話な気がする)、遂に最後の魔法譚が無事完結し、僕は思ったわけですよ。「また長編書けるような企画を誰かやらないかなー」と。そんなら自分でやってしまおうかと、そういう結論に至ったわけで。
前置きはこのくらいにして、本題に入ります。
今回リクエストするお題は、「長編小説」。最低でも完結に2話以上かかる作品をください。この時、条件として、非現実の要素を作中に入れてほしいです。
ファンタジーでも都市伝説でも、「こんなん現実であり得ないでしょ」な恋愛でも、無駄にトリッキーな手口の殺人事件でも、非現実的なら何でも良いです。
参加してくださる親切で意欲的な方には、この書き込みに対するレスに一言書いてもらった上で作るか、タグに「長編小説」と書いて投稿してください。両方でも構いません。
何か質問があったらどうぞ。
ご協力いただけると、とても嬉しいです。どうぞ皆様、奮ってご参加ください。
雲ばかりが僕を見おろしている
靴のうら、隠した棘の一本だって呑みたい
そう言った僕をどうか忘れて。
赤いポストの映える、廃れた商店街が夕陽に照らされ揺れている
空がいじわるな顔して襲ってくる
と、嘘ついた僕をどうか許して。
去なば沈む海の青さよ
争ふ世の中を憎め、憎め
期待なんて元からなかったのに。
いつから望むようになったんだ。
やりたいことが次から次へ
ころころ変わって目が回る
やらなきゃいけないものたちも
どんどん押し寄せ目眩する
今、何がしたいのか
未来、何になりたいのか
分からないまんま
一生懸命いきている
嫌なことも 辛いことも 苦しいことも
全部 全部
歯 くいしばって、笑い飛ばしてやる
怖いものなんて何にもないって
虚勢でもいい、見栄張っててもいい
立ち向かってやる、笑ってやる
なんだって かかってこい
おーい!ねぇ、ちょっと?
君だよ、きみ。
そうそう、そこの君。
僕は未来の君だよ。
信じられない? まぁ、それでもいいからさ、
ちょっと話、聞いてくれない?
今、しんどいでしょ。
いきるのつらいって思ってるでしょ。
明日なんか来なきゃいいのにって。
いつも独りぼっちで、つまんないなって。
でもね、今はそれで大丈夫。
だって、もうすぐ、会えるから。
本当の友達って心から思える人に。
大切なことをたくさん教えてくれる人に。
君の未来はすごく明るい!!
だからね、余計な心配なんてしないで、
前だけ向いて、進め!!
しとしと雨の中1人歩く帰り道
ふと顔を上げれば
遠くの方には虹がかかっていた
「寂しいな」
吐き出した言葉は誰にも届かず
白い吐息にかき消された
手の中に光る画面の向こうには
自分じゃない自分がいて
『自分』にならなきゃいけなかった
「つかれたな」
声に出せない僕のホンネは
また心の奥底に積み上げられた