「機械人間」は見た目は人間そのものだけど、中身は基盤とか配線だらけ...いわゆるアンドロイドみたいな感じです。
飲み食いはできるし、自分の意思もしっかり持ってます。
声も肌や髪の質感も人間そっくりにできてます。
「…ところでなんだけどさ」
話が一段落した所で、師郎が話に割って入る。
「この後どうする?」
皆大体アイス食べ終わったみたいだし、と師郎は続ける。
「うーんそうだな」
「うーん」
耀平とネロはそう言われて少し考える。
「…また、墓地でかくれんぼでもする?」
ネロの提案に耀平はそうだな、と賛同する。
「まだ夕方まで時間があるしね」
「うん」
他の皆もそれぞれうなずく。
「わたしも、それで良いと思う」
わたしもそう言ってうなずいた。
「んじゃ、決まりだな」
耀平はベンチから立ち上がる。
「墓地に行くか!」
それに対し、皆はうんとかおうと返した。
「じゃ、行きますかね」
そう言って、耀平達は歩き出した。
〈12.ユニコーン おわり〉
鍵をかけたら入ってこないで
干渉しないで
自惚れないで
皮肉らないで
息しかできない子の話
きっと数日で打ち切りだけど
この前年下になったあの子
君のちゅーを待ってるって噂
この前1番に祝いつけたあの子
君のなでなでを待ってるって瞳
今君の前にいるあの子
君をぎゅってしたいって話
ねえ周りを見てよ
ザット・ガール・イズ・ミー
伝わったかなぁ
おかしいね。
きっと貴方嫌がってる
瞳潤して死ぬ気でここまできたの
私って阿呆ね。
需要と供給もわからない
乗り換えて乗り換えて駅のほーむを歩くとき
きみがきょう歩かなかったみちのことをおもうよ
空が割れた
あの子は消えた
街はどこへ行った?
返せよ 私たちの大切なものを
育ちが違う。
そんなことは一目見てわかっていた…
あの子は可愛くて自由で、何より心の底から発されているかのような明るさを持っていた。
自分にはない…得られなかった…いや違う、失ったものだ。
いつ…?
もう思い出せないや
親からは褒められずに育てられ、中途半端な器用さは友達から避難の対象だった。
完璧主義も自己否定もそうやって形作られた。
気づけば褒められる度に疑い、悪口とその傷だけを信じるようになっていた。
そのはずなのに…
あの子がくれたその明るい褒め言葉は何故か信じることができた。
惹かれるにはそれで十分だった。
どうして? なんで?
私は泣いてるんだろう
判りたくても解れない
判りたくても別れられない
信じてた『本当』が壊れそうで怖いから
「ずっとそばにいるから」
ありきたりな言葉ね
今なら笑える
でもあの時はそれが正義だった
彼が真実で本物で全てで
「ありがとう」
なんてまっすぐに返したんだろう
笑えなかった
笑いたくなかった
だってそれが本当だったから
嘘じゃなかったから
判ってた 解ってた
だからってなんで? どうして?
彼は笑ってるんだろう
聞きたくても訊けない
訊きたくても聞けない
信じられない『本当』に触れそうで怖いから
「今までありがとう」
終わりの言葉だね
今なら言える?
でもまだ隠し続けた
私が今の『本当』を壊しそうで
「ありがとう」
って今の『本当』を守ろうとしたんだろう
言えなかった
言いたくなかった
だって嘘であっても本当だったから
本当にしたかったから
解ってた? 判ってた?
吐瀉物まみれの終電を
思わず降りた田端駅
そこは優しい雰囲気で
ラベンダーがほのかに香る
悲しい春は過ぎ去って
腑抜けた夏が肩を組む
俯く気持ちが嫌だから
思わず見上げた低い空
僕は月を見ているが
きっとそれは返らない
ラベンダーは、まだ香る
「そもそも学校の友達でもない奴を家に泊めるのは、ちょっと…」
耀平は微妙な顔で言う。
ネロはえーと駄々をこねる。
「別に良いじゃん」
「良くない」
あと女子を家に泊めるのって抵抗あるし…と耀平はそっぽを向きながら呟く。
「何だよそれ~」
ネロは頬を膨らます。
「じゃーボクはどうしたら良いんだよ~」
家に帰りたくないし、とネロはこぼす。
耀平はえーと不満そうにしていたが、暫くしてこう言った。
「じゃあネロ…おれと一緒に家に帰るか?」
ネロはえ?と聞き返す。
「おれがネロを家まで送って行く、それで良いだろう?」
耀平はムッとした顔で言う。
ネロは暫しポカンとしていたが、やがてこう答えた。
「…じゃあ、そうする」
それを聞いて、耀平は安心したような顔をした。
「じゃあ家へ帰れるな」
そう言って、耀平はネロの頭を撫でた。