表示件数
2

薔女造物茶会 Act 2

「…ただ、通りすがっただけ」
黒い人物はそっぽを向いて答えた。
ふーんと少女は頷く。
「それにしても貴方、異様な魔力の気配がするけれど…何者なの?」
黒い人物はハッとしたように振り向く。
「お前何でそれを…」
黒い人物がそう呟くのを見て、少女は笑う。
「分かるのよ、わたしには」
魔力の気配が、と少女は続ける。
「ただそれがあまりに異質だっただけで」
「それ以上言うな」
黒い人物は少女の言葉を遮る。
少女は驚いたように目をぱちくりさせる。
「…それ以上は言うな」
黒い人物はまたそっぽを向いた。

1

mission

彼は言った「頑張れ」


ではなく
「大丈夫 なんとかなる」って
静かに君は呟いた

その深い目に吸い込まれそうで
「本当に…?」
思わず尋ねた

君は答えなかった
その代わり雑に頷いた
深い目を細くして笑っていた




こんなにも
言葉に出来ない想いが


詰まる



カーディガンを握りしめた
ととんととんと胸が鳴っていた








今年の冬はこの想いを




どうにかして。

0

冷静「沈」着

金ぴかに吹き込んだ「愛してる」
もう言うことさえ許せないなら
言葉を塞いでみたい
寂れた痛みを包んで欲しい
それでも矢継ぎ早に吐き出されるのが怖い
広いとこで受け止めたい
不自由亡き愛はここだと
この心臓で受け止めたい
こんなもの抱えられないよ
もう無理だよ
延命措置は足りないの
貴方を削っちゃいけないから
でもそれでも私は
私の削り粕が零れてる瞳
あんまりじゃないかなって
瞬きもしんどいの
夜の心が溶ける時間を
待っていられないの
目も頭も時計も身体も
なにもまわらないから遠回り

2

三日月

夕焼けの残り火は街をぼんやりと赤く包む
その中の君は今にも消えそうに浮かぶ三日月のよう
「…よなら」
夜支度をする街の喧騒は君の言葉を見事に掻き消した
“逆光じゃ唇の動きも見えないじゃん”
僕はぎこちなく笑ってから返事をした
「また今度聞かせてよ」
“それまで…あと3日くらいは消えないでよね?”