午前6時53分
誰もいない廊下を歩く
見知った姿の裏側にまわって
あえて知ろうという企み
足踏み5回
水が跳ねる
温もりのない透明の空気に鎮座しながら
今この時だけを、体温で染める
自分色に
太陽が南から西に傾き始める中、列車はエカテリンブルクのホームに滑り込む
ふと、「もうエカテリンブルクか…シベリア鉄道の旅ももう終わりだなぁ」と呟く
彼女はまるで雷の音が響いた時の子供のように丸くなって何かに怯えているように見える
「おい、大丈夫か?」「ここ、エカテリンブルクでしょ?怖い話を思い出しちゃって…」「ロシア革命で皇帝のニコライ2世が家族もろとも処刑された事件のこと?」「そうだよ。100年以上前の話だと言われても,怖いよ」そう彼女が震え声で言うのでリアクションに困って苦笑いを浮かべて「幕末の剣豪が好きな人とは思えないリアクションなんだけどなぁ」と思わず心の声を漏らしてしまった
「まだ発車しないの?」「30分停車だからね。あっでも,その館はもう取り壊されてるよ」「もう…ないの?出てきても大丈夫なの?」と尋ねられる
「大丈夫。俺が守ってやるからな」「本当?」「勿論。というか、俺が君に初めて惚れた時に何て言ったか覚えてる?」それを聞いて頬を染めながら「『惚れた女を大切にし、彼女が傷つかないよう気を配る。そして,時には体を張って彼女を守ること。それは男としての俺の一生モノの課題だ』ってこと?」と訊く
「大正解!さぁ、安心して出ておいで。」そう言うと彼女がハムスターのように出てきた
「どんなシチュエーションでも,やっぱり俺の彼女は魅力的だな」と呟き、彼女が照れる
そして,列車は発車する
明日のこの時間にはモスクワだろう
私好きな人だれにも行ったことないんですけど、今度その人海外行っちゃって、
最長6年会えないらしいんですよ。もしかしたら受験しに帰ってくるかもしれませんが。幼稚園から中学までの中で男子の中でもまぁまぁ仲いいほうなんですよね。で、行っちゃうの認めたくないけど、寂しいなぁって。だから複雑な気持ちポエムにしてみました。
行かないで
現地時間で日付が変わってからおよそ30分、オムスクに着いた
時差ボケと彼女の魅力のせいで眠れない
「どうしたの?眠れないの?」「まあ、時差ボケでな」
「時差ボケってwハワイはもっと酷いよ。ましてや貴方、ハワイよりも時差が少ないロンドン行ったことあるんでしょ?このくらい我慢してよ」
「ロンドンから帰国した当時は真夏、しかも地球の裏側じゃちょうどリオ五輪やってて、上野の屋外パブリックビューイング場で猛暑の中熱中症で倒れてどうやって時差ボケ治したのか記憶にないんだけどw」「リオ五輪っていつだっけ?」
「76年だけど?」「皇紀じゃなくて西暦か元号で言ってよ。皇紀で計算するの慣れてないの(笑)」「西暦だと2016だな」
そんな話をして気づいたら、イシムを過ぎ、朝日に輝くチュメニの駅に着いた
彼女は話し疲れたのか爆睡、俺は油田の街に着いたことに興奮を覚えたが、流石に起こすのも可哀想だと思い、手書きのメッセージを枕元に置いて俺も寝た
「Спасибо, что стала моей девушкой 」と敢えてロシア語で書いて置いた
意味は,「俺の彼女でいてくれてありがとう」だ
その意味を知った彼女に甘えられたのは言うまでもない
そして,甘い響きとは程遠く拙いフランス語で
こう囁く「Unis pour la vie 」
意味は,「ずっと一緒だよ。」だ
そんな俺たちを乗せ,いよいよエカテリンブルクまであと数分という所まで来た…
ウラル山脈超えも近い
いっつもいっつも周りが馬鹿に見えてしょうがなかった
下らないことでヘラヘラ笑ってIQの低い会話ばっかりしてるし 何もかもがモノクロに見えた
馬鹿みたいって他の子を見下してるアタシも馬鹿だ
それが分かってても見下すことをやめられないアタシは けっきょく周りよりも馬鹿なままなんだよ
笑えてくるね
旅行といってもただの旅行ではない。一応任務である。旅順に実験中の戦闘機を見に行く。どんな戦闘機か本当に楽しみだ。そんなことを考えていると、国分駅に着いた。ここで乗り換えて、国分から門司までの旅だ。僕は先に座った。列車の中は混んでいる。
「お隣大丈夫ですか?」
僕はびっくりした。なぜなら、17,8の女の子である。
「大丈夫ですよ」
僕は答える。心臓の音が聞こえる。
「では」
話しかけてみる。
「どこまでですか?」
「旅順まで」
「一緒ですね」
「一緒に行きませんか?」
急に言われて驚く。
「大丈夫ですけど…」
「初めてなんですよ、旅順」
「僕も初めてです」
「名前聞いてもいいですか?」
相手から聞かれる。
「高部秋人です。一応、軍人です」
「軍に勤めていらっしゃる!お国のためにありがとうございます」
なぜかお礼を言われる。
「いえいえ」
「あっ、私、名前言ってませんでしたね。東谷幸子です。よろしくお願いします。
「どうも」
よくわからない返事だ。二人での旅が始まる。
地球外である月面より人間が到達できていない世界だ。
何が居ても居なくても、何も不思議じゃないだろう?
たとえば、そうだな……。
笑えるほどデカくて、狂えるほど悍ましい、頌歌の鳴るような化け物とか。
現地時間午後7時半、薄暮の空の下、俺たちが乗るK3/0033号列車はノヴォシビルスク駅に着いた
ホームを見て彼女が一言「駅の時計とこっちの時計、合わないよ。」「どれ、見せてみな」実際に見たら笑うしかなかった
「なんだよ、そう言うことかよ」と思わず吹き出す
そして、彼女が頬を膨らませながら「どうせ私は彼氏ほど旅慣れていない田舎者ですよ〜だ」と拗ねてる
「まあまあ、落ち着けよ。原因、話してやるから」
「本当?教えて教えて!」と子供っぽくはしゃぎながら答える
「ロシアってのは、国が大きいのは知ってるよね?ロシアよりも小さなアメリカだって国土が大きいから国内にも時差がある。それはハワイとアメリカ本土に訪れたことがある君なら分かるでしょ?」
「流石に知ってるよ。でも、その話とこれって何の関係があるの?」「まあいいから、最後まで聞きなよ。シベリア鉄道はいくつものタイムゾーンを跨ぐようにして線路が張り巡らされている。だから、走らせるなら基準となるタイムゾーンが必要なんだ。そうなると、首都であり列車の起点であるモスクワの時間を基準にして列車を動かすと都合がいい。だから、シベリア鉄道の長距離便が停まる駅ではモスクワの時間を採用しているんだ。モスクワとここ、ノヴォシビルスクは時差が四時間だから、駅の時計も君の時計と4時間ズレているよ」そう言うと彼女は「さっすが私の彼氏!頼りになる〜」と笑い出した
一方、俺はと言うとその無邪気な笑顔に心を撃ち抜かれて無意識のうちに「ヤバい。俺の彼女、いや、俺の嫁さん可愛すぎんだろ…こんなんじゃ理性なんか吹っ飛ぶな」と呟いていた
その後すぐ、食堂車で晩飯を食べていると列車は市街地に挟まれたオビ川の鉄橋を渡る
「シベリア鉄道は風景が同じでつまらないって言われているけど、愛しの人と一緒なら彼女の顔だけ見てればいいんだからいい癒しになるな」と言ったら彼女が「私の彼氏って、こんなロマンチックな人だっけ?」と自問してる
そこですかさず、「フランスと江戸っ子と華族文化が入り混じる街の出身だからな」と笑う
そして、2人揃って「これからもずっと一緒だよ』と言う
シベリア有数の大都市の夜景が俺たちの将来を照らし、祝福してくれている中を列車はモスクワに向け突き進み、俺は彼女の誕生日プレゼントを買うべく、グム百貨店のカタログを読み漁る
「企む?どうして?それに私は、青路じゃないよ?」
「お互い、隠し事はなしにしないか?」
“隠し事”
「隠すも何も、私は私だよ?誤送信じゃない?」
「間違ってないよ、喪黒闇子の姿をした桐谷青路に送ってるんだから」
“姿”
「どういうこと?」
そう送りかけたその指は送信ボタンの下、削除ボタンを連打した。
なんて返すのが正解?
まずどこからバレた?
闇子自身か?
いや、この事実を晒すメリットはないはず…
思考はどんどん自分を孤独に追い込んだ。逃げ込むようにスマホを握ったまま布団に潜り込む。
おそらく闇子の方の癖だろう。
サテンの布団が全身を包み込んだ。
違和感が、皮肉にも孤独を埋めていく。
“いっそこのまま…”
思考の到達を妨げるように現実のバイブが布団全体に響く。
「もし、青路が望むなら俺はお前の力になる」
これは罠なのか、それとも確信を持った上での言葉なのか、はっきりとは分からない。それでも今、ここで彼を頼るべきか…
出した答えは否だった。
「嬉しいよ、ほんとに私が桐谷君だったらどんなに良かったか…」
既読はすぐについた。
しかし先程までより返信に時間がかかっている。
仮説が間違っていることに当惑しているのだろう。突拍子もなければ証拠は何もない。ここまで本人にとぼけられたら当然だ。
「わかった。困ったらいつでも言ってくれ、俺はお前を信じてる。」
寒いくらいわざとらしい言葉だ。
橘らしいと言えばらしいのだが、今はそれだけじゃなく感じる。
このまま…橘に…守ってもら…
そのことばが浮かんだ瞬間、かぶりを振った。
まただ…闇子の体の部分が…俺の感情や理性を越えてくる瞬間。やはりこの体に心を許してはならない。
俺はやっぱり桐谷青路として、喪黒闇子を演じきるんだ。そしてやつの復讐を止める。
「ありがとう。なら頼めるかな?俺の復讐代行を」
to be continued…