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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ④

「誰か話しかけてみたら?」
「えー面倒臭い~」
クラスメイト達は皆、教室のあちこちから彼女に視線を送る。
しかし、誰も話しかけようとしない。
だからなのか、坂辺さんは自席で下を向いたまま黙るばかりだった。
「…」
わたしはその様子をまさかの真後ろの席から見ていた。
確かに彼女はちょっと地味だけど…そこまで言うだろうか。
皆がそういう事ばかり言うから、彼女は黙っているんじゃなかろうか。
「次理科の授業だから行こうぜー」
「行こ行こ」
気付くとクラスメイト達は、1時間目の授業の教室へと移動し始めていた。
わたしも移動し始めなきゃ、と教科書類を持って立ち上がり、机と机の間の通路へ出る。
…と、不意に横から話しかけられた。

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ユーラシア大陸縦横断旅43

「駅舎、赤レンガだね。」「そうだな。故郷の丸の内を思い出すよ。」「東京駅もかつての江戸城の堀として開削された水路に囲まれているんだったね」
そんなやり取りを経て、スキポール空港方面行きの電車に乗り込む
空港で搭乗手続きを済ませると、保安検査場を過ぎて目の前のゲートにエールフランス機が停まってる
チケットを見ると、なぜか2人ともビジネスクラスだ
「アイツ、こういう粋な計らいできるのは変わってないな」と言って笑う
離陸直後、彼女が「綺麗な夜景」と呟く
「そうだな。The Hage、つまりハーグだって」そう言っていると、気付いたらもうランス上空だ
フライトはあっという間に過ぎてターミナルに着いた
荷物を受け取って出ると、幼馴染が1組のアジア系のカップルと共に待っていた
お互いに簡単な自己紹介を済ませて車に荷物を放り込む
幼馴染曰く、そのカップルはアイツのロンドンの日本人学校時代のクラスメイトで2人とも九州出身だそうだ
彼女さんは俺の彼女と同じ福岡県出身ということで意気投合しているようだった
薩摩隼人の彼氏さんはハンドルを握りながら、「色々あったけど、アキラ(幼馴染の呼び名) からプラン聞いて、俺たちで埋め合わせたんだ。パリは初めてなんだろ?楽しめよ。」と言ってくれた
幼馴染に「そう言えば、ロンドンのホテルはどうしたの?連泊だったよな?」と訊くと「カレーにいた時に連絡したんだ。そしたら、パリの系列ホテルの予約取ってくれたんだ。だから、3人揃ってパリで一緒だね」と言って男3人で談笑していると、エッフェル塔がセーヌの向こうに見えた
「Привет, Париж 」と呟く
夜景は今日もパリを輝かせる

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ユーラシア大陸縦横断旅42

列車に乗り込んですぐ、「オルリーって何?スキポールって何?」と訊かれた
「オルリーっていうのは空港の名前さ。パリの空港はオルリーとシャルルド・ゴールの2ヶ所なんだよ。スキポールはオランダのアムステルダムにある空港のこと。さっきダメだって言われた手段はメインのシャルルド・ゴールから市街地へ行く時に使わなきゃ行けない手段なんだ」と答える
「え?オランダ?行ってみたかったんだ〜」と彼女はさっきと打って変わってかなりウキウキしている
そんな俺たちを横目に、列車はフランダースの大地を北上している
列車がメヘレンに着いた頃、幼馴染からLINEが届いた
「よっしゃ!来た!」と叫んでしまう
「来たって何が?」「航空券、取れたんだってさ」と言ったら彼女も「これで、パリに行けるんだよね?」と言って喜んでいる
だが、時刻表を見ると悲しい現実を突きつけられる「スキポール止まる電車はこちらが着いて10分後、その次は30分後、そのまた次だとフライトに間に合わない…またお預けか…」と言っていた
次の瞬間、悔し涙が頬を伝っているのが分かった
「お預けって…そうだったね…私のせいでごめん」とだけ言って黙ってしまった
「君のせいではないよ。ストのせいなんだよ」と言って彼女にも自分にも言い聞かせる
「楽しい話しようよ。って、また巨人勝ったよ」「勝ち投手は?菅野?」「勝ち投手大勢!チョーさんがサヨナラ打った」「巨人勝ったか!今2位か〜今年こそだな」いつもの俺たちに戻った
「もうスヘルデ川か…速いな」と言って驚いている間にオランダ入りをした
あと1時間ほどでアムステルダムだ
ロッテルダムに着いた頃、空港の地図が送られて来た
「アムステルダム滞在はお預けになってしまったけど、空から見えるロッテルダムの埠頭やランスの夜景を楽しんで。」というメッセージ付きだ
そして、列車は最後の停車駅、ユトレヒトに着いた
車窓を見ると、終点に近づくに連れて水路と家々が夕陽に照らされて金色に輝いている

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ユーラシア大陸縦横断旅41

アウデナルデを発ち、これからパリへ向かうべくブリュッセルへ戻る列車に乗り込む
ブリュッセル・ミディ駅からフランスの高速鉄道TGVでパリ北駅を目指すことになっていた
だが、列車は遅延しているのか発車時刻になっても列車は来ず、スマホが鳴り響く
電話に出るとあの幼馴染からだ
「聞こえてるかい?大変なことになってる!」そう言われたので咄嗟にスピーカーにする「どうした?手短に言ってくれないか?俺たち、まだブリュッセルにいて、これからtgv乗る予定なんだよ。」「僕は今、君たちを迎えに行くためにユーロスター乗ってたんだけど、トンネル抜けた先のカレーで足止め。仕方ないから他の手段でパリを目指そうとして調べたらストライキでどこも鉄道は動かないし、バスも動いてないことが分かったんだ。バリにいる友人曰く、メトロもダメだそうだ。彼がこれからカレーまで迎えに来てくれるそうなんで、こっちは待ってるんだよ」と衝撃の事実を伝えられる
「パリメトロもダメなのか?参ったな…」と言って考え込む
彼女が「飛行機はダメなの?」と訊いてきた「パリの空港から市街地へ行くにはタクシー、バス、メトロ、幹線鉄道の4通りの手段があるんだけど、今の話だと全滅なんだよなぁ」と答えて暫く考え込む
すると、幼馴染が「オルリーはどうかなぁ」と提案する
「オルリーか…ブリュッセルからはダメだから、スキポール発しかないよな?」と尋ねると、「そうだね。僕が取っておくよ。ただ、手配した会場の人達もストライキしちゃってるから予定通り開催できない。だから、確実にパリに来れるように手配しとく。チケット番号とかLINEで送るよ。」と言われてすぐに電話が切れた
「予定変更だ。アムステルダムに行こう」と彼女に声をかけ、目の前に来た北行のICに乗り込む

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支え手

やっぱりね、私がしっかりどっしり芯になってやらなきゃいけないと思うのよ。

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もうすこし

もう少し
この寒さが早く訪れていたなら
君に甘えるのも簡単だったのかな
なんて冷えきった指先を撫でながらぼんやりと

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大切だから

『お知らせ』と聞いて
悲観的なことを想像する人と楽観的なことを想像する人がいる。
でも『大切なお知らせ』と聞くと
悲観的なことを想像する人が増えるという。
それは『大切』という言葉に対して悲観的な意味を紐付けているからか、
いや違う
『大切』だから
聞けるだけの気持ちを用意しようとしているから、
悲しくても耐えられるように、幸せならより喜べるように
悲観的に構えるようになった。

でもそれになんの意味がある?
感情押し殺してなんになる?
聞く側がすべきなのは
冷静な諦めじゃない
思ったままに伝える側に寄り添うことだろ

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ユーラシア大陸縦横断旅40

グランプラスの建物群の紺色屋根は朝日を受け水色になっている
今日は彼女の誕生日だ
サプライズパーティーの最終打ち合わせをしていると、彼女が起きて来た「おはよう。誕生日、おめでとう。今日もまた慌ただしくなっちゃうけど、できるだけ君のリクエスト聞いて君が行きたい場所は行けるようにするよ。でも、ゴールがパリだってことは忘れないでね」そう言うと、「行きたい場所?なら、イースタンフランダースにあるオーデナルドかなぁ」と返ってきた
「つまり、アウデナルデの古戦場かな?」そう確認すると「そうだよ。」と一言だけ返ってきた
「古戦場巡りってかなり個性的だなぁ。男の趣味だと思ってたよ」と言うと「だから、女子達には理解してもらえなくて秘密にしているの。でも、貴方が古戦場巡りに理解がある彼氏でよかった」と言われた
「もしかして、君がペテルブルグとモスクワ行ったのって…」と返すと、「お察しの通りよ。まあでも、私が好きなのはオイゲンとマールバラの2人なんだけど」と苦笑いだ
「マールバラとオイゲン、それってかつて俺たちの相性の良さを例えた時に出した2人じゃん」と言って俺も笑い出す
「それだけ貴方のことが好きで、昔のやり取りも覚えてるの。」と返された
「なら、アウデナルデやマルプラケはピッタリだね。昨日言ってたイープルの猫祭り開催までは1ヶ月あるけど」そんな話をしながら朝食を食べ終えると、チェックアウトの時間が迫ってきた
そしてすぐに駅へ向かい、中央駅のコインロッカーに荷物を預けて地下ホーム4番線から12:32発ICコルトレイク行きに乗り込む
暫くしてOudenaardeの駅名標が見えた
そう、この町にはオイゲンとマールバラ公という中世ヨーロッパの戦争を語る上で欠かせない2人の司令官が合流して戦い、宿敵を撃破する活躍を見せた古戦場がある
当時敵だったフランスの天才指揮官が不可能だと思っていた、この2人の麾下の兵による600キロも離れた地点からの合流に成功した情報を聞いて放った「悪魔が奴らを連れて来たに違いない」という名言を文字って、「オイゲン公が俺たちを連れて来たに違いない」と言うと彼女が即座に首を振って、こう訂正する「歴史が私達を繋いだに違いない」と
「確かにそうだな。」と返し、どちらともなく手を繋ぎ、古戦場のある丘に向け歩き出す