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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 14.ヌリカベ ㉔

「それは…」
ヌリカベは気まずそうに目を逸らす。
「不見崎さんにあまり遠くへ行って欲しくなくて…」
ヌリカベは消え入りそうな声で言った。
「…束縛、か」
ネロはポツリと呟く。
「そ、束縛って」
ちょっと言い過ぎじゃない?とわたしはネロに言う。
ネロはえーと返す。
「だってそうとしか聞こえないじゃーん」
「だよな」
「うんうん」
耀平も黎もそう言ってうなずく。
わたしはえー…と言いながらヌリカベの方を見る。
彼女はわたしの陰でうつむいている。
「人を縛ろうとしたって離れていくだけなのにね」
ネロはヌリカベに目を向ける。

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ハナ

私の周りの花はいつも居なくなるの
貴方のように きれいに咲きたいと
陽の光を浴びたいと

でも、私が花になれる時 貴方はもう居ない

寂しいと思うのは自分勝手だけど、居なくならないで欲しかった

私はずっと言い続けるのだろう
誰かの花になれたとしても

でも、安心して 私は強く強く一輪の華になる

私は撓まない

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ぺぇ教頭へ

誰かが悲しんでいたら手を差し伸べて下さった

誰かが苦しんでいたら声をかけて下さった

無条件で私達を救って下さった

そんな貴女は母性溢れる女神様のようです

今まで本当に有り難う御座いました

お疲れ様です(*^^*)

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ユーラシア大陸縦横断旅67〜最終回〜

ロンドン最後の夜が明け、いよいよ思い出の街にも別れを告げて故郷に帰る日が来た
世界でも指折りのハブ空港の一つ、ヒースロー空港の国際線ターミナルは広大なため早め早めの移動が必要だ保安検査所へ向かう5分前、涙を堪えて「先行ってるよ。江戸小路で会おう」と告げると彼女は無言で抱きついてくる
彼女がもう一つのターミナルへ向かう頃、俺は出国を済ませて飛行機に乗り込む
時差ボケ防止でしばらく寝て機内マップを見るともうウラル山脈を超えてシベリア西部にある元カノの1人の出身地上空を飛んでいる
機内食を食べる間にも飛行機は進み、北京、大連、ソウル、チェジュと幼い頃から成田空港で見てきた国際線の行き先の街の名前が地図に表示される
対馬海峡を越えて福岡の上空に至り、そこから福岡、広島、高松、大阪、名古屋、浜松の地名が見えてきた
「海外行く時、帰る時に必ずマップに出る地名だ。もう帰って来たんだな。エスカレーター降りて泣かないと良いんだがな」そう言う間にも飛行機は硬度を下げる
左手に故郷で幼い頃からずっと観て来た高層ビル群が見えて感慨深くなると、成田空港に着陸した
お馴染みの入国審査場までの下りのエスカレーターから見える看板を見て毎度のように泣く
この看板には様々な言語で「日本へようこそ」という意味の文が書かれているが、日本に帰国した全ての人の目に入るように一際目立つ大きさの柔らかいフォントで書かれたひらがな7文字の言葉を見て泣かない人は少ないだろう
この言葉が見えた瞬間、俺が生まれてから今までお世話になった全ての人と一緒に彼女もその言葉を言ってくれるような気がした
「「おかえりなさい」」

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対怪異逃避行:鏡像の怪異 その⑤

「さて、我々の、というか君の脱出に当たって、一つ大きな課題がある」
昇降口手前で突然立ち止まり、あいつが言ってきた。
「何」
「君、どうやって校舎を出るつもりだね」
「そりゃ普通に…………なるほど?」
そういやうちの学校の出入り口、どこもかしこもガラス張りじゃねえか。つまり、出ようとするだけで奴に引っかかるってわけだ。
「で、どうするつもり?」
「……勿論、正面突破だ」
2度も命を狙われて、こっちもちょっと腹が立ってきているんだ。それに、攻略法なら既に出来上がっている。
「一応確認なんだが、奴の攻撃のトリガーは、『目を合わせること』で良いんだよな?」
「そうだね。その証拠に、この廊下で君は1回しか襲われていないじゃない」
「オーケー、確認取れた」
欲しい情報は全部手に入った。あとは勝ちに行くだけだ。

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ユーラシア大陸縦横断旅66

宿に戻り、すぐに荷物を纏める
一通り纏め終わると、スマホの着信音が鳴り響く
台湾の仲間達からだが、彼等は長電話好きなので、軽く1時間ほど時間を取られると覚悟して対応する
「土産物、何が良い?」「お茶っ葉と鳳で頼めるか?あと、フォルモサの写真も頼む」「鳳と梨のアレね。お前、好きだもんな。写真は…新高、次高、それから101と85で良いか?」「各地の写真じゃなくてその名前を漢字に意訳したら出てくる地下鉄の駅があるだろ?その駅の写真をお願いしたい」「あのステンドグラスか。任せな」「ありがとう。頼んだよ。東京で俺の彼女とも会えるだろうから紹介してやるよ。その次の時は案内頼んだよ。特に、安平とか嘉義とか淡水が良いな」「任せとけ。でも、お足は高くしとけよ?」「高くするのは良いけど、流石に大神宮跡地のホテルには泊まらないからな?」台湾に造詣が深く同じような物が好きな男同士の会話が弾み、こちらの到着予定の話になる
「こちらの到着は日本時間の夕方4時頃の予定だ」「航空会社ズーペンだろ?」「いや、イングオ」「また金がかかる所を…」「それは俺じゃなくて幼馴染が取ってくれたんだよ。国泰が使えなくなったから」「そう言えば言ってたな。で、どうして福岡経由じゃなくていきなり成田なんだ?」「彼女が羽田経由だから東京で俺といたいんだとよ。俺はてっきり彼女が先に福岡に帰ると思って向こうに寄ってから帰ろうと思ったんだが、俺のことを1番に考えて東京にいる決断をしてくれたんだろうな。健気で一途、それでいて俺が故郷の東京をはじめとした関東、そしてその対極と言える関西がどうしても好きになれないことも理解してくれる。だから、俺は彼女に首っ丈なんだ」「その辺にしとけ。彼女さん、淡水信義線カラーになるだろうから」「もうなっちゃるよ。冬瓜茶より甘くして気まずいから切るぜ」「橋頭のアレみたいだな。遠慮せずに切りな」
最後は俺達ではお馴染みの台湾ネタで締めてどちらともなく電話を切る
そして、彼女が背伸びして耳打ちする
同じ頃、例の鐘が鳴り響き、即興で短歌を一首詠む
「協定の 日の街で聞く 鐘の音 君の隣で 聞くぞ嬉しき」
この日にロンドンで起きた歴史上の出来事を踏まえて詠んだ歌に歴史好きの彼女が反応し、より甘えて来たのは言うまでもない

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会いたい。

春が来て、あなたと会えなくなるわたし。
どうやって生きていけばいいんだろう。

たった2週間の冬休みでさえ、
会いたくて、話したくてたまらないのにな。