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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 15.オーベロン ㉕

寿々谷市中心部から歩いて20分。
閑静な住宅街の片隅を、わたし達は歩いていた。
「ここだぞ」
とあるタイル張りの家の前で耀平が立ち止まる。
見ると表札には、”滋賀”と書かれていた。
「ここが、ネロの家?」
わたしが尋ねると、師郎はそうだぞ?と答える。
「ふーん」
そううなずきながら、わたしは住宅を見上げる。
…と、ピンポーンとインターホンの鳴る音が聞こえた。
耀平がネロの家のインターホンを押したのだ。
暫くの間、ネロの家の扉が開く気配はなかった。
そのため耀平はもう1度インターホンを押そうとした。
その時、ガチャンと扉の鍵が開く音がした。
「…」
家の扉が少しだけ開いて、中から小さな少女がちらとこちらを覗き見た。
「…」
耀平が驚いたように扉の隙間を見たが、ネロは耀平と目が合うと即座に扉を閉めようとした。

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うちの七不思議:完全に機能する音楽室の防音壁

とある学校に勤める用務員氏の話。
その学校の音楽室は学校裏手の駐車場に面しており、そこを掃除している時に生徒たちの音楽の授業と時間が重なると、子ども達の元気な歌声や楽器の演奏の音が聞こえてきて、用務員氏はその場所の清掃作業が特に気に入っていたという。
ある日の事、その日も駐車場の清掃作業に従事していた用務員氏。今日は静かだ、ということは今日この時間は音楽の授業は無かったか、などと考えながら作業を進め、ふと顔を上げた時、自然と目に入った音楽室の窓を見て彼は驚いた。
音楽室の中には何人もの子どもの姿が見え、その動きから彼らが合唱の練習をしているということが見て取れたのだ。
よくよく思い出してみれば、確かに普段その曜日のその時間帯はどこかのクラスの音楽の授業があったはずだ。それなのに何も聞こえないということは、いつの間に防音壁の補強でもしたのだろうか。
そんなことを考え、これからは子ども達の歌声を聞きながらの作業もできなくなるのだろうかと寂しくなりながら、用務員氏は作業を終えた。
しかし翌日、彼が同じ場所で作業をしていると、音楽室からは別の子供たちの元気な歌声が。ならば昨日の無音は何だったのだろうか。
その後、用務員氏は同じ現象に数度遭遇したものの、ついにその原因は掴めなかったという。

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あめの日、マッチを擦って

たのしい雨ふりの日
とっておきのゴム長靴にレインコート
玄関あけたら水たまり蹴っ飛ばして歩きだす

まっしろ雨ふりの日
見上げたそらは近くて遠い
手が届いたらきっとふわふわの雲
払ってもはらってもやまない雨だ
拭ってもぬぐってもきりがない雨だ

ひとりぼっち、雨ふりの日
ひろげた傘の小さな宇宙
雨つぶは垂直にぼくを囲んで
洋服の裾をゆっくり濡らして
やまないやまない雨ふりの日
いつまでもいつまでもやまない雨雨雨雨

つめたい雨ふりの日
まだ明るい午後、お家に帰って
ボタンひとつでお風呂わかして
しめった髪の毛シャワーでとかして
ふかふかのバスタオルとドライヤー
何日かぶりの石油ストーブに火を入れて
お湯を沸かしてティータイム
窓のそとはずっと雨

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はるかぜと共に現れた旅人と過ごすのんびり生活 報告

どうも、空を走る者です。
諸事情により遅くなりました。スミマセン…
今回は3月に話した企画の報告です。
集まったレススタンプは、33個でした。
達成していないので打ち切り…と言いたいのですが、twitterでの反応がなくなってしまったため、twitter上での執筆をやめ、このポエム掲示板に専念することにしました。
ということで、このシリーズは続行します!
そして、執筆続行記念として、特別にtwitterには上げていない書き下ろしエピソードを来週投稿します!(本編との関係はある)
これからも応援よろしくお願いします!

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×××××中学校の七不思議 甲斐田正秀

 甲斐田正秀という生徒がいた。高等小学校の時代の話だ。
彼は二年生の時に死んだ。悲惨な死だったというが、舌を噛んでだとか、皮を剥がれてだとか、八つ裂きにされてだとか、水中に縛られてだとか、今はいろいろな説が出回っている。
「そんで、甲斐田正秀が死んだ6時3分、第二校舎の3階、一番北の空き教室に行くと会えるんだ」
 部活の妙に後輩懐っこい先輩がそういう噂を話した。
「会うだけですか」
 俺は素っ気なく尋ねた。でも、本当は少し興味があった。それを表に出すと先輩は調子に乗って収集付かなくなるのでこれくらいが丁度いい。
「なわけないだろ。酷い死に方したんだぜ。ヤツに会うと質問をされるんだ『赤と青、どっちが好き?』って。そんで、赤って答えると……」
「はいはい、どうせ血で真っ赤になって死んで、青だと血ィ抜かれて死ぬんでしょう」
「よく分かったな。聞いたことあったか」
「『赤い紙青い紙』に毛が生えたような話じゃないですか」
「まあな。で、それ以外の答えとか、答えなかったらとか、知りたいか?」
「別に良いです」
「知りたいよな」
「はいはい」
「どうなるかっつーと……分っかりませーん!自分で確かめてくださーい」
「はぁ?ならわざわざ」
 引き延ばさなくても。と言おうと思ったところで顧問に「おーい、そこ集中しろー」と注意され、俺はむっと先輩を睨んだ。先輩は怖めず臆せず笑っていた。