「よぉ、論手 乙女」
飛びかかってきた少女は、手に持つ鎌を論手 乙女の首に近付けた。
「これは…どういう事なの?」
論手 乙女は少女に向かって怪訝そうな顔をした。
するとネロはハハハハハ!と高笑いした。
「実は俺は滋賀 禰蕗じゃない」
そう言うと、彼女の姿は陽炎のように揺れて背の高い少年の姿に変わった。
「俺は、ネロの友達だ」
背の高い少年…師郎は笑う。
「…なるほど」
つまり他者に化けられる異能力者が滋賀さんに化けて私の気を引いて、本物の方は隙を突いて私に襲い掛かったワケね、と論手 乙女は言う。
「まぁ、そういうトコだね」
ネロは大鎌を論手 乙女の首から話しながら呟いた。
「アンタにもう2度といじめられないための脅しってワケだ」
ネロはそう言って笑う。
論手 乙女はふーんと答える。
「ま、私があなたにあれ以上の気害を加えるつもりはないのだけど」
は?とネロは論手 乙女を睨む。
「$\$\>;;!;+[$€__€‼︎」
最後の1体も叫び声を上げて消えていった。
「…」
ナツィはコツっと靴音を立てて廊下に降り立つ。
「流石だな」
”黒い蝶“、と露夏は笑う。
「あんまりその名で呼ぶな」
俺はそういうの嫌いなんだ、とナツィはムスッとした顔をする。
「とりあえず、これで全部かしら」
廊下の角から出てきながらピスケスが呟く。
「いや、ナハツェーラーが倒したのが3体、ピスケスが倒したのが1体だから…」
あと1体!と露夏は指で示す。
「…あと、1体?」
ナツィは驚いたようにこぼす。
「あれ?」
そうじゃないの⁇と露夏は首を傾げる。
「何イィーーーーッ⁉」
咄嗟に真上に跳んで鉄棒に掴まり、その勢いのまま逆上がりのように鉄棒の上に避難して顎を回避する。畜生め、うっかりスマホを落としちまったじゃねえか。
「何なんだよあいつはァ!」
思わず叫ぶと、先に鉄棒の上にいたあいつが冷静に答えた。
「さあ……僕は『サメ』って呼んでる。ちょっと似てるし。幸いにも上まで身体を伸ばしてくることは無いけど、困ったことになったね。きみは食われずに済んだけど、どちらにしろ詰みだ。もう逃げられないよ」
「……『は』? 今、『きみは』って言ったな?」
「うん」
「その言い方は……『食われた奴を見たことがある奴』の言い方だ」
「うん」
「お前、さっき幽霊じゃないって言ってたが、絶対にあのサメと関係あるだろうが! 嘘ついたのか!」
「そうだったとして、幽霊相手にすごい喧嘩腰じゃない」
「冷静に突っ込むなよ」
突っ込み返したおかげで少し落ち着いた。とりあえず、幽霊野郎と同じ腰掛けた姿勢で、奴の隣に座る。
「まあ、そう怒らないでくれよ。僕も立ち位置としては被害者なんだから」
幽霊野郎がそう言って俺をなだめてきた。
「被害者だと?」
「そう被害者。だって、僕もそいつのせいでずっとここに縛り付けられてるようなものなんだから」
「知った事か」
「冷たい……」
慣れないことを頑張ることは
時に人を強くする そして人を弱くする
潰れないように 乾かないように
その両手で心を覆って、弱る自分に蓋をする。
でも無理はするな、
両手では庇えない嵐が来たらどうだ、
たぶん一人では耐えられないだろう
まだ頑張れると思ったところで踏めるブレーキは
なるべく触っておいた方がいい、踏まずとも
休むことも確実に過程。