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鉄路の魔女 〜Megalopolitan Witches. Act 5

「別にいいんじゃない」
ウグイスがバーミリオンの方を見ると、バーミリオンはふふと笑う。
「彼女だって、“大変な思い”をしているんだから」
バーミリオンがそう言うと、彼女の傍に立つ黄色い髪の少女もうんうんと頷く。
「バーミリオン、“カナリア”…」
ウグイスは少しため息をつくと、水色の髪の少女に目を向けた。
「仕方ない、行こう」
“ソラ”とウグイスは水色の髪の少女に言うと、彼女たちは既に歩き出している地下の魔女たちに続いた。

幻影探しが始まって暫く。魔女たちは2手に分かれて路地裏で先程の幻影を捜索していた。しかし魔女たちは気配で幻影を察知できるが、中々あの幻影は見つからなかった。
「見つからないね」
姉さま、とグリーンはスカイの服の裾を引く。
「そうだね」
そんなに遠くには行ってないはずなのにとスカイは辺りを見回す。
「ああ見えて意外とすばしっこいんじゃねーの?」
幻影なんてそんなもんだろとシルバーは上着のポケットに手を突っ込み、なぁ?とスカーレットの方を見る。スカーレットは電信柱の上で熱心に辺りを見回していた。
「アイツ、話聞いてないのか」
シルバーがそう呟くと、スカイが彼女はそんなもんだよと歩み寄る。
「スカーレットはあれでも…」
そうスカイが言いかけた所で、みんな〜!と彼女たちに近付く声が聞こえた。3人が振り向くと、水色の髪の少女…ソラが駆け寄ってきていた。
「さっき幻影見つけた!」
でもウグイスたちが戦ってるけどちょっと押されてる、とソラは続ける。
「だから加勢お願い!」
ソラが両手を合わせて懇願すると、スカイとグリーンは顔を見合わせ、シルバーは電信柱の方を見た。電信柱の上に立つスカーレットはシルバーの視線に気付いてトン、と地上に舞い降りるとこう言う。
「分かったわ」
今すぐ行くと言ってスカーレットは路地の奥の方へ走り出す。シルバーたちもそれに続いた。

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自覚的眩暈

ちょっとずつぞんざいになっていくあなたの態度を、''親しくなった''と勘違いして生きさせてください

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鉄路の魔女 「眠り」

てくてくとおばあさんの方へ歩いて行く。
すると、

「貴女、そこで何してるの⁉︎早く線路から出さなさい!」

おばあさんはそう叫び、小走りで駆け寄ってきた。
驚きのあまり一瞬フリーズした後、
くるり、と踵を返しもと来た方向へ駆け出す。

「ちょっと、貴女!」

振り返る事なく走る。
迂闊だった。
猛省しつつ、1番端の線路まで行き、更に線路沿いに西へ走った。

(もういいかな。)

踏切のあたりで、ようやく足を止めた。
遮断機に座り、懐中時計を出す。
そろそろ人が多くなる時刻だ。
どのみち、駅に居る訳には行かなかったのだ。
むしろ幸運だったかもしれないぞ、と言い聞かせ、列車を待つ事数十分。

(列車が来ない...?)

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暴精造物茶会 Act 5

「…なんか、物々しい」
「そうね」
タイサンボクと中紅はそう言って頷く。
「大丈夫」
クロミスたちはそんなに弱くないもんとクロミスは言うと、階段を下り始める。
あとの3人もそれに続いた。
バリケード代わりの机を乗り越え階段をさらに下っていくと、4人は真っ暗な広いスペースに出た。
暗くて何も見えないが、クロミスが持参した懐中電灯を灯すと長い廊下が見えた。
「…なんだかこの校舎の1階や2階とあまり変わらない気がする」
「うん」
キヲンの言葉に対しタイサンボクが頷く。
「でも、扉が上の階のより重たそうな気がするなぁ…」
クロミスは懐中電灯で辺りを照らしながら歩いていく。
キヲンたち3人もその後を追う。
地下階はしんと静まり返っており、キヲンたち4人の人工精霊以外には人の気配も、精霊の気配も感じられなかった。
「…なんか、お化けが出てきそう」
不意にタイサンボクが呟いたので、お化け?とキヲンが首を傾げる。

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鉄路の魔女:Nameless Phantom キャラクター

・“埼玉馬車鉄道の幻影”
外見は鹿毛の馬の下半身から、長い銀髪が特徴的な人間の少女の上半身が生え、両腕と馬脚の脛より下が機械仕掛けに置換されている外見。固有武器は巨大な金棒。
かつて、現代より遥かに昔、構想だけで消え去った哀れな未成線の記憶から生まれた鉄路の魔女。
彼女を『覚えている』人間は皆無に等しく、当然のように幻影化したが、生い立ちが「廃線」ではないためか、不完全ながら自我を残している。調子が良い時は自分の元になった鉄道が走るはずだった場所をふらふらと歩き回っている。
幻影化しているせいで鉄路の魔女にしょっちゅう攻撃されるが年季の違いでこれまで無事に対応し続けられている。当然のことながら『車体の色』なんてものはあるわけ無いので名前も無い。
・ミドリ
宇都宮線の魔女。固有武器はメイス。
・アオイ
秩父鉄道の魔女。固有武器は馬上槍。

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深夜の迷子 早朝

蝉の声がする。どうやらゆずは、畦道で倒れていたらしい。ゆっくり起き上がると目眩がした。
「…あれ」
日が暮れて…いや、それどころかもう早朝で太陽が覗きかけているようだが、ここ数時間の記憶がない。
「のど、かわいた…」
脱水症状で倒れたのかもしれない。それにしたって両親どちらもいないのは酷いと思う。ポケットを漁り、携帯を取り出す。
「んもー、娘を置いていくなんて…」
携帯を出したとき、同時に何かが飛び出る。
「ん…なにこれ」
それはお守りだった。手作りのようで、糸が解れている。中身を出すと、『導』とだけ書かれた紙が出てきた。
「んー…なんか、気味悪いけど…捨てるのもなんかな…」
ぼんやりと紙を眺めていると、携帯が震えた。
「…はぁい、もしもし…あ、お母さん!今?山の足元のとこ…え?それじゃ分かんない?田んぼの近くだよぉ」

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Side:Law in Black Market 保護者

MNE-015
性別:男  年齢:25歳  身長:177㎝
好きなもの:子供、銃器
嫌いなもの:悪人
“ブラックマーケット”の一角にある施設、通称『学校』に所属する男性。役職は〈番人〉。主な仕事はたまに現れる脱走しようとする子供を張り倒してでも止めて元の部屋に投げ返すこと。
子供という生き物をナチュラルに下に見ており、ただでさえ危険なブラックマーケットに自分すら超えられない者を放り出すわけにはいかないという思いから、脱走者を叩きのめす際にはできるだけ汚くて理不尽な戦法を意図して用いている。これすら超えられないようなら脱走なんて許せるわけが無ェ。
脱走者が出た日は子供を殴ったストレスで一日中機嫌が悪くなる。一度寝ると元に戻るが、そもそも素で目つきと言葉遣いがあまりよろしくない。不機嫌モードではそれらが4割増し程度に悪くなり、声を掛けられた時の反応が「あ?」から「あ゛ァ⁉」くらいになったりする。また、子供の呼び方が素で「クソガキ」だが、「クソガキ=子供=保護すべき対象」という等式が脳内で成立しているため、「クソガキ」扱いしている子のことは命に代えても守ってくれる。
脱走者以外に手を上げることは無い上にスタンスが一応「子供は守るもの」側なので、脱走経験0の子供からはそこまで怖がられてはいない。
ちなみに本名は色々あって捨てた。現在の名前は上層部が呼び方に困って取り敢えずでナンバリングしたもの。あとでちゃんとした名前つけようねって言ってたらタイミングを逃した。渾名は「ミネさん」。

※『学校』:ブラックマーケット区域内で大人の保護者が周囲にいない子供をその事情を問わず攫い、最低15歳、最高18歳までの期間を拠点敷地内に監禁し、様々な教育と養育を行ってから多少の現金と希望された武器類だけを握らせて解放するという謎の活動を行っている組織。少なくとも監禁されている子供達は外と違って絶対に生命の危機に晒されずに済むが、『学校』側の解放より早く抜け出そうとするとボコボコのボコにされて止められる。「ブラックマーケットの浮浪児を使って何か大規模な悪事を働こうとしているのではないか」みたいな噂も流れているが、真相は創設者にしか分からない。

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視える世界を超えて エピソード9:五行 その⑨

「お前のトコなんかそういうのは『ナシ』だろ? 潜龍の」
振られた平坂さんは無言で頷く。
「野生の才能ってのは意外といるモンだ。現に私もシラカミも、完全フリーだったろ? これを『こっち側』に引き入れて、戦力にできる。しかも、NGは無しだ。来るもの拒まずって感じで」
「えー? 私の時はあんなに殺意バリバリだったのに?」
白神さんが拗ねたように言う。
「お前のせいっつーかお陰でこっちも考えが変わったんだよシラカミメイ」
「むぅ、それならヨシ」
「偉ッそうに……で、私どこまで話したっけ」
「野生の霊感持ちを囲えるってとこまでッス、師匠」
種枚さんの後ろに立ちっぱなしになっていた鎌鼬くんが答えた。
「そうだった。良いか、これには利点が3つある。まずウチの戦力増強。次に、青葉ちゃんや潜龍のみてーな元からある組織に戦力が流せる。そしてもひとつが……潜龍の」
「何だ」
「お前みたいなのは、この寄合に助けられると思うぜ? なんせ、問題児が全員手の届く場所に集まるんだからよ」
「……なるほどな。悪い話でも無いか」
「だろォー? 誰ぞ反対する奴はいるかい?」
種枚さんのその言葉に乗る人はいなかった。全会一致で賛成ってことだろう。