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五行怪異世巡『天狗』 その⑥

「そっちかァ!」
音のした方に駆け出そうとした種枚を、今度は青葉が制止する。
「待ってください、種枚さん!」
「ア?」
「今の音……多分、何もありませんよ」
「何ィ?」
「そういう怪現象の話を聞いたことがあるんです。天狗の名を冠する怪異の一つです」
「へェ……」
しかし、種枚を止めようとしてそちらに注意を向けたのがいけなかった。
2人の背後から、先ほどより大きな破壊音が聞こえてくる。そちらに2人が目をやると、高さ10mは優に超える大木が、2人に向けて倒れてくるところだった。
「あっははははは! ボクの目の前でのんびりお喋りなんかしてるから! キミらみたいな注意散漫で生意気な子たちには、こうして『実害』をくれてやっているのさ!」
大木が倒れ土煙が巻き起こる中、天狗の楽しそうな笑い声が周囲に響く。
「さてさて、流石に死んだかな? 1人くらいは生きているかな?」
言いながら天狗が姿を現し、少しずつ薄れていく土煙に、スキップでもするかのように軽やかに近付いていく。
大木の倒れ込んだ位置から2mほど離れた位置で立ち止まり、その場で覗き込む。にやけたようなその表情は、すぐに険しいものに変わった。
「……これが『実害』、ねェ? だいぶ舐められたモンだ」
「いや、普通人間は木が倒れてきたら潰されちゃうものですよ」
種枚と青葉の気軽なやり取りが聞こえてくる。土煙が完全に晴れたその場には、倒れてきた木を種枚が片手で軽々受け止めている姿があった。
「くそ、何だよこの人間! 化け物か⁉」
そう吐き捨て、天狗は姿を消した。
「オイオイ何逃げてンだァ⁉ 私とやろうぜ!」
そう吼え、種枚は天狗が逃げていったと思しき方向に駆けて行った。

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暴精造物茶会 Act 24

飛び上がった怪物は翼を羽ばたかせながら芝生の上を飛んでいたが、そこへ上から黒い影が飛び込んでくる。
怪物は避けきれず、黒い影が携える大鎌が背に突き刺さった。
そのまま怪物は地上に黒い影もろとも落ちていく。
「%{“{>%{*]$_$+!」
怪物は悲鳴を上げながら芝生の上で暴れるが、黒い影ことナツィは大鎌を怪物の背に深々と突き立てる。
だが怪物が暴れるあまり大鎌からナツィの手が離れてしまった。
「⁈」
ナツィは勢い余って芝生に転がる。
怪物はよろめきながら立ち上がり、いつの間にか近くのレンガ作りの建物の陰に隠れていた5人組の方を見た。
建物の陰から戦いの様子を見ていたキヲンたちは驚いたように陰に引っ込む。
怪物は建物の方に向かって駆け出そうとしたがその背に数本の矢が突き刺さって動きを止めた。
怪物が振り向くと、近くのレンガ作りの建物の屋根上に青髪のコドモが弓矢を構えていた。
怪物は翼を広げ青髪のコドモことピスケスに向かって飛び立った。
ピスケスは咄嗟に背中の白い羽を広げて飛び立つ。
怪物は建物の屋根上に着地するが、そこへ地上から紫色の火球が直撃した。

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ゼリー

ゼリーから
眺めた世界
君と見たいから
そのときまで
取っておいて
取っておいておこう

ざまあみろ
なだめていたい
君を守りたいから
そのときまで
取っておいて
取っておいていよう

ズルいズルい嘘で
ジュルジュル砕けていく
僕の心の奥の奥

何色でも染めて
君色に染まっていく
奥の心の僕の僕

ズルズル引きずる

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日々鍛錬守護者倶楽部 その②

両手持ちのスタッフを構えて近付いてくるサホに対し、タツタは魔法で生成した2本の半透明な青白い腕を飛ばして応戦する。向かってくる2本の腕をスタッフを横薙ぎに一撃で消し飛ばし、勢いを落とすことなく更に突き進む。
タツタはその足下に腕を伸ばし、足を取ろうと試みたが、それは跳躍によって回避され、サホはそのままスタッフを振り上げ、勢い良く振り下ろした。
宝石で装飾されたスタッフの先端がタツタの脳天に直撃する寸前、背後から伸びてきた1対の腕が彼女の首と腰を捉え、後方に引き寄せることで回避させる。
「やっぱり強いなぁ、タツタちゃん」
「私としてはあんたの方が恐ろしいけどね」
「それじゃぁ」
「まだ時間はあることだし」
「「ギアを上げるか」」
タツタは、6対12本の『腕』を生成し、同時多角的にサホに差し向ける。
対するサホはその場でスタッフを横薙ぎに振るう。先端に飾られた宝石の軌跡は炎のエフェクトとしてその場に残り、彼女はそれを掴み新たな武器として『腕』たちを迎撃し始めた。
元々持っていたスタッフと炎の鞭による二刀流で、『腕』は次々と打ち据えられ、消し飛んでいく。タツタも絶え間なく腕を生成し続け、サホの動きを防御に専念させ続ける。
(まだだ…………もっと集中させろ……処理が追い付かなくなるまで、腕を増やしてやる!)
生成される『腕』の本数が、更に倍になる。サホはスタッフの軌道に炎のエフェクトを生成し、それらを壁として防御を続ける。
(…………今!)
「〈Pass Through〉」
足下から地面の下を通して伸ばした2本の『腕』が、地下から透過してサホの両脚を掴む。
「うげぇっ」
『腕』はそのまま彼女の足を引き、仰向けに引き倒した。その身体の上に、タツタが腰を下ろし、無表情でサホの顔を見つめる。
「…………」
「…………私の勝ち」
ニタリと笑い、タツタは魔法の『腕』で音楽の再生を止めた。
「ぬぁー負けたぁー」

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恋の姿

きらきら ぱちぱち
くるくる どきどき
どんな音かな

ふわふわ ころころ
ぴかぴか とくとく
どんな色かな

すごく綺麗な気がする
すごく眩しい気がする
そんな気がするの