「…アイツ、顔赤くするんだな」
「だね」
いつの間にか異能力を使うのをやめた耀平は、同じく異能力を使うのをやめたネロにそういって顔を見合わせる。
「…それにしても」
ここで師郎が耀平とネロの肩に手を置く。
「お前さん達、大丈夫だったかい⁇」
そう言って師郎はわたし達に目を向ける。
わたしはハッとしてティアマトの顔を見る。
その頃にはもう彼女の目は光っていなかった。
「?」
あま音さんはちらとわたしの顔を見て微笑む。
「大丈夫よ、サヤカちゃん」
私は平気だから、と彼女は続けた。
「ま、それならいいか」
師郎はわたし達2人の様子を確認するとくるりと背を向ける。
「じゃ、そろそろ帰りますかね」
もう日が暮れかけているし、と師郎は呟く。
だなとかそうだねと言いながら、ネロや耀平、黎、穂積、雪葉は彼に続いた。
わたしも彼らに続こうとしたが、不意にあま音さんがサヤカちゃん、と呼び留めたので立ち止まって振り向く。
「えっ……と…………?」
ヤツが困惑している。流石に古い伝統は今ドキの若者には合わなかったらしい。
まァしゃーない。何、オイラも日々学び成長してンだ。色々試してみようゼ。
『ミラクル・クエスチョォン!』
「はぇっ!?」
オイラがハイテンションに呼びかけると、ヤツの肩がとんでもなく跳ねた。面白れ。
『今晩、アナタに“奇跡”が起きまァす! 明朝目覚めたその瞬間、アナタの身には何が起きているでしょォーかっ!』
「え、ええ……?」
ナントカって国じゃァ最近ブームのやり方らしい。
ヤツはしばらく目を泳がせまくった末、何やら思いついたようで急に身体の動きが止まった。そのまま答えを待つが、…………おいコイツ何も言わねェぞ。
『……オイどうした?』
「え、えっと……その…………あの………………」
ヤツは言い出せずにいるようだが、悪いがオイラにゃお見通しなんだワ。
『キッヒヒヒヒ……そうだよなァ? テメエが今晒されてる“イジメ”、無くなってほしいよなァ?』
ヤツの表情が変わった。ビンゴ。
『その手助けをしてやろうッつってんだヨ』
「んー?あれ、シオンちゃんリサちゃん」
シオンたちが飛び降りた先にはレオンがいた。
「あれっレオン先生」
シオンが呟いた瞬間_それは地面に激突する寸前だったが_二人の体がふわりと静止する。
「危なっかしいことするね?」
レオンがくすっと笑いながらそう言うと、シオンの体がべちゃっと落ちた。
「いて」
「シオンさーん!?先生!もっとお上品に降ろせませんの!?」
「まあまあ、面倒なんだよね魔法的に。結構疲れんの」
「レオン先生はなんの魔法使えるの〜?」
「重力と引力を任意で操れる」
レオンが指を鳴らすと、遠くの方で悲鳴が聞こえた。
「うわ」
「今の声犯人ね!最近盗みとかやってる奴。ちょっと重力を強めただけだからあんま血みどろにはなってないと思う。二人とも、無事で良かった」
シオンとエリザベスは目を見合わせる。
「…珍しく優しい感じのこと言ってますわ」
「そうだねぇ」
「俺をなんだと思ってんの?」