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無銘造物再誕 Act 6

「そう、なの…?」
「うん」
使い魔の名前は作った人が決めるものだよ〜と金髪のコドモは笑う。
暫く寧依はポカンとしたまま固まっていたが、やがてふと手元のスマホを見やった。
そこには8時10分と表示されている。
「あ、もうこんな時間」
そろそろ行かなきゃと寧依はロールパンの最後の一口を口に放る。
「時間?」
金髪のコドモが聞くと寧依は、そろそろ行かないと1限に間に合わないからとコップの水を飲み干し、それを持って台所へ向かう。
「ボクの名前はー?」
「それは帰ってから考える」
コドモの質問に寧依は洗い物をしながら答える。
「そんなー」
金髪のコドモは不満げにローテーブルに伏した。
そんな金髪のコドモを気にせずコップを洗ったり歯を磨いたりして身支度を済ませた寧依は、部屋の隅に置いてあるリュックサックを背負うと部屋の玄関に向かった。
それに気付いた金髪のコドモはとたとたと玄関に駆け寄る。

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時間

この世には時を巻き戻す装置が存在する。

しかし今に生きる私にとって不要なもの

だけど、あの時、あの人の手を握っていたら

あの人は今も私達と共に笑顔で過ごしていてくれたのかもしれない。

時を巻き戻す装置を使おうと、思いますが、

どう思いますか。

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終末を巡る_5

絵画に関する知識が無いに等しい琥珀と林檎にとっては、その画廊もただの廊下と変わらなかった。が、故に。
『…つかれた』
『長いな…』
その長さに飽き、歩き続けることに疲れて林檎は途中で座り込んでしまった。琥珀も林檎に合わせて座ってやり、乱れた毛を整えてやる。
「待って!そっちはだめ!」
人の声だ。追ってきたらしい。
『なっ…あいつ俺より足速いぞ!?』
『こはく、けがしてる?』
『……』
痛みはなかったが、不調なのは確かだった。
『おちたとき、こしうった』
『そうだな…』
だいぶ響いていたらしい。林檎の先導によって、琥珀は画廊の先にたどり着いた。
「その先は、昔の人類が遺した_」

画廊の先は部屋だった。相変わらず電気がついておらず、窓もなく暗い部屋だ。大型犬でも入れるサイズの箱がちょうどよくあり、慌てて潜り込む。足や腹に当たる異物感に身を捩ると、どうやらチューブを踏んでいるらしいことが分かった。

「_アトリエだからっ!!」

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ありがとう

私はあなたに助けられた。

また 借りが出来た

あなたがピンチのときには

必ず私が助けるからね

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cross over #4

蝉が生き延びようと懸命に鳴いている。鳥のさえずりは喜ばれるのに、なぜ蝉のあえぎ声には悪口を言われるんだろう、と首を傾げた。ジリ…目覚まし時計の労働を少しでも減らせるようにできるだけ早く止める。目覚まし時計の設定を切って目を閉じた。遠くで救急車のサイレンが鳴る。
半開きの目を擦りながら3度目の二度寝を終えた。ドアを開けようとして目の端に扇風機が映る。風量調節ができないお古の扇風機でもトタの周りの空気を変えていく。見れるチャンネルが1つあるお古のテレビで今日のニュースを確認した。タレントとアナウンサーが微妙な間を振り払おうとテンポの速いトークを繰り広げていた。CMに入ったところで今日は1回もお手洗いに行っていないことに気づいた。今日もついているであろう寝癖を隠すため帽子を被る。ミシッミシッと微かな音を立てながら階段を降りた。お手洗いに入り、ひと息ついているとついつい眠りそうになる。
蝉がほんの少しの間休息を取っていた。生ぬるい、さっきの番組と同じくらいの温度感の水が流れる。手を洗い、外に出た。銀色に近い日差しが背後から照らす。ぼーっと、強いて言えばさっきのテレビで交わされていた口論を頭に浮かべながら歩く。この街に越して来て約5ヶ月。最近は行きつけの店を作ることに必死になっている。今日は人が少ない平日だということもあり、少し遠いレストランまで出向いた。カランカランとドアがなる。
「いらっしゃいませ。」1つに結んだ髪が茶色に染まっている40近くの人が出てきた。
「え、と。1人で。」「あ、はい。空いている席へどうぞ。」
「や、うーん。」
「では、ごゆっくり。」早口でまくし立てるように言うと逃げるように去っていった。そういう気がしただけかもしれない。ただ、トタにはどうしてもそう見えてしまうような人だった。