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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 6

「えーどうして〜?」
シーアが口を尖らせると、ピレタはどうしてってと腕を組む。
「ポリゴニアさんはよくやらかすからよ」
「そ〜う〜?」
シーアは笑いながら首を傾げる。ピレタは呆れたようにため息をついた。
「…とにかく、私はここで留守番してるわ」
やることあるし、とピレタは組んでいる腕を解いた。
それを見てシーアはつまんないの、と呟くが、すぐにサルペとラパエに向き直り「…じゃ、行こうか!」とイスから勢いよく立ち上がる。ラパエも行きましょ〜とイスから立ち、サルペも黄土色の髪の少女も立ち上がって荷物をまとめると、教室から去っていった。

そんなこんなで、ラパエとサルペはピレタ以外の都市伝説同好会の面々と広い校舎内から外へ向かった。
この学園に前々から所属しているシーアと黄土色の髪の少女は複雑な校舎の構造がしっかり頭に入っているらしく、あっという間にラパエとサルペは校舎を抜けて校門の手前まで辿り着いた。
「へー、“グッタータ”だからぐっちゃんなんだ〜」
「はい、その方が呼びやすいとシーア先輩が言ってくれたので」
ラパエの言葉に黄土色の髪の少女は答える。
「先輩はこんな気弱でできないことの方が多いわたしに最初からすっごく優しくしてくれたんです」
だから先輩と同じ同好会に入ったんです、とグッタータは恥ずかしげに言う。それを聞いてシーアは「照れるよぐっちゃ〜ん」と頭を掻いた。
「あたいは困ってる奴を放っとけないだけなんだよー」
ピレタみたいに冷たくないんだし、とシーアは笑う。
…とここでサルペが不意に足を止めた。
「あれ、どうしたんですサルペ先輩」
ラパエが気になって尋ねると、サルペは「……ねぇ」と周囲の少女たちに話しかける。
「あそこ、何かいる」
サルペは学園の敷地を囲む柵の上を指さす。
しかしそこに目を向けるラパエたちには何も見えない。
「なにも……見えないですよ」
「そうですね」
ラパエとグッタータはそれぞれそう答える。シーアも「なにが見えるんだ?」とサルペの方を向いた。
サルペは「いや、それは……」と口ごもるが、その瞬間缶のようなものが投げ込まれる音がした。4人がハッと音のした方を見た瞬間、辺りに煙が立ち込め始めた。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.キリン ⑫

師郎に店の外に出てくれと言われてから数分。
わたし達は駄菓子屋の店先で話し合っていた。
「…なるほど」
つまりあの少年は彼がなぜか連れ回しているだけなんだね、と駄菓子屋近くの電柱にもたれながら雪葉は呟く。
「まぁそんな所だな」
ボクらにもよく分かんないんだけど、とネロはココアシガレットを咥えつつ座り込む。
雪葉はふーんと頷いた。
「それにしても穂積、あの子が異能力者だなんてよく分かったね」
わたしがふと穂積にそう話しかけると、彼女は当たり前じゃないと呆れる。
「異能力者同士は気配で互いを察知できるのよ」
気配がしたら分かって当然じゃない、と穂積は続けた。
わたしはそうだったね…と苦笑いした。
「…でも、大分変な感じの気配だったわ」
あの子の、と穂積が言い出したので、わたしはえ?と聞き返す。
「それって…」
この間のあま音さんみたいな?とわたしが聞くと、穂積はいやと否定する。

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 5

「……なるほど」
アンタたちは転入生で、それで校舎の中で迷子になってたんだねとサイドテールの少女は教室のイスに座りつつ腕を組む。「うん、そうなの」とサイドテールの少女が座るイスの、目の前の席に座るラパエは頷く。
それを聞いてサイドテールの少女は「まーそうだよね〜」と笑う。
「この学園は生徒数の割に敷地が広くて校舎デカいから初見は迷子になりやすいんだよ〜」
あたいも初めてここに来た頃はよく迷子になったし、とサイドテールの少女は頷く。
「ぐっちゃんなんか迷子になり過ぎて泣いてたもんな」
「ちょ、ちょっとシーア先輩〜」
わたし1回しか泣いてないですよーと、サイドテールの少女の隣に座るぐっちゃんと呼ばれた黄土色の髪の少女は恥ずかしそうにする。それに対しシーアと呼ばれたサイドテールの少女は「泣いたこと認めてるじゃん」と笑う。
「……まぁとにかく、グラフィウムさんとピエリスさんは仲良く迷子してる内にこの都市伝説同好会の溜まり場に辿り着いてしまった、と」
話を切り替えるように、少女たちの近くに立つ三つ編みお下げの少女は腕を組んだ。その言葉にシーアは「おいおいピレタ、言葉に棘があるぞぅ」と三つ編みお下げの少女をからかう。ピレタと呼ばれた三つ編みお下げの少女は「そのつもりはありませんよポリゴニアさん」とシーアから目を逸らした。
「……まぁともかく、ボクたちはこの校舎内で迷子になっちゃったんだ」
という訳でここから出るためにキミたちの力を借りたいんだけど、いいかな?とサルペは笑いかける。
それに対しシーアは「いいよ〜」と威勢よく答えた。
「あたいたち暇してたし」
ね、ぐっちゃん?とシーアが黄土色の髪の少女に目をやると、彼女はあ、うんと頷く。しかし不意に私は行かないわとピレタは冷たく答えた。

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みんな

最後の登校日。
自分と友達を見て、
「すてきだね」って、言った。

最後の音楽の授業。
歌の声出しで泣くんだ、みんな。 
私だって泣いた。みんなで顔を見合わせて、
「早いね」って、言った。

最高の卒業式。一生懸命に取り組んだ。
退場して、涙が溢れた。みんな同じだった。
おめかししたみんなの顔は、きらきらと涙で濡れていた。みんなで、
「よかったね」って、言った。

最後の先生のお話。
メッセージを、読み上げてくれた。先生の目は、涙であふれていた。
「いつまでも応援している」と、先生が言った。
それからみんなで抱き合って、
「先生もうちらも、泣いちゃったね」と、言った。
しばらくの間、声を出して、泣いた。
泣いた。泣いた。泣いた。

初めての送り出し。
目を真っ赤にした、先生、みんな、私。
拍手は、はじめの一歩。みんなとのお別れの合図。
「ありがとう」と、言った。

最後の写真。
並んだ私は、心の中で言った。
「またね、みんな。」

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 4

「いや、そこの教室に誰かいるみたいでさ」
気になるんだよね、とサルペは教室の窓を睨む。ラパエは「えっ」と驚く。
「そこの教室に誰かいるんですか?」
全然分かんないけど……とラパエは教室の方を見ながら目をこする。
サルペは足音を殺してそっと教室の扉に近付くと、勢いよく扉を開けた。
「わぁっ‼︎」
サルペが開いた扉の向こうからは、3人の少女が転がり出てきた。サルペは軽い身のこなしでそれを避ける。
「ぐえー、ぐっちゃん重い〜」
「そ、そんなこと言わないでくださいよシーア先輩〜」
「あぁもう、アンタたちねぇ……」
廊下の床に倒れる3人を見ながらサルペは微笑み、ラパエはポカンとする。3人の少女たちは暫くうだうだ話していたが、その内の黄土色の髪の少女はが顔を上げてラパエとサルペに気付くと「ひぇっ」と声を上げた。黄土色の髪の少女の下敷きになっていたサイドテールの少女は不思議そうに顔を上げ、そのそばで手と膝をついていた三つ編みお下げの少女は顔を上げてラパエとサルペに気付くと顔をしかめた。
「あなた……」
三つ編みお下げの少女がそう呟くと、サルペは「よっ」と手を小さく上げるとこう尋ねた。
「ちょっとキミたちに訊きたいことがあるんだけどさ」
「いいかな?」とサルペは笑いかける。3人の少女は顔を見合わせた。