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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 12

「……それが、ボクの信条だから」
そして彼女は再度刀を構えた。
ラパエは暫く黙っていたが、やがて「……先輩」と呟く。その言葉にサルペが振り向くと、ラパエはお願いがありますとサルペの目を見た。
「あたしも、先輩と一緒に戦いたいです」
ラパエがそう言うと、サルペは「えっ」と驚く。
「でもキミはここに来たばかりでまだメディウムを持ってないじゃないか」
「どうするっていうんだい?」とサルペは尋ねる。するとラパエは「先輩って、刀を作る魔法を使えるんですよね?」と続ける。それに「まぁ、メディウムの効果で使えるんだけど」とサルペが答えると、ラパエは「じゃあそれをいっぱい作ってください!」と言った。
「あとはあたしがなんとかするんで!」
ラパエがそう明るく言うと、少しの沈黙ののちサルペは分かったと頷いた。
「あと、シーア先輩とぐっちゃんも、一緒に戦って欲しいです!」
さらにラパエがシーアとグッタータに目を向けて言うと、グッタータこそ驚いたもののシーアは「お、おうよ!」とサムズアップをしてみせた。
「とにかく皆さん、行きましょう!」
あたしたちの平穏を守るために!とラパエがいうと、サルペはうんと大きく頷いた。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.キリン ⑭

「琳(りん)、俺はともかくとして耀平はそんなに怖くないんだからビビらなくていいだろ」
なぁ?と師郎は琳と呼んだ少年に笑いかける。
少年は相変わらず顔を背けたままだったが、ここでネロが立ち上がりながら琳?と首を傾げる。
「それがコイツの名前?」
「ま、そうだな」
師郎は自分の陰に隠れる琳という少年に目を向けつつ答える。
「鹿苑(しかぞの) 琳、小学5年生…さっき本人から聞き出した所によるとだな」
師郎がそう言うと、琳くんはパーカーのフードを被って顔を隠した。
「…」
わたし達はその様子を見て思わず何も言えなくなってしまうが、師郎は気にせずまぁまぁお前さん達と言った。
「ちょっと駄菓子でも食べつつ話をしようや」
師郎はそう言って明らかに駄菓子が色々入っているであろうビニール袋を掲げてみせる。
わたし達は思わず顔を見合わせた。

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 11

「キミたちはボクが守るんだ」
「でもあたしに原因があるみたいですから!」
「だから先輩はもういいんです!」とラパエはサルペの手を握る。
「あたしが、あの人たちの元へ行けばいいんです」
「それはダメだ!」
ラパエの言葉に、サルペは語気を強める。ラパエ、シーア、グッタータは驚いて目を見開く。
「サイアたち……リーリアメティヘンシューラっていう学園は、このレピドプテラで他の有力な学園と覇権争いをしているような学園だ」
サルペは自らの左手を握るラパエの手に右手を重ねる。
「あの学園は、自分たちの邪魔をしかねない存在は徹底して叩き潰そうとするから、きっとなんらかの理由でキミが自分たちの邪魔になると思って襲撃してきたんだと思う」
でも、とサルペは続ける。
「ボクはそんなリーリアが許せない」
自分たちの邪魔になると思ったら、平気で相手を叩き潰しにかかるような学園だからねとサルペは呟く。
「そういう所があるから、ボクはあの学園で諜報員だったけどそれを抜けて、レピドプテラの闇と関わりの薄いような櫻女学院にやって来たんだ」
でも、とサルペは続ける。
「ボクやその周りの人の平穏を壊そうとする人がいるのなら、例え相手が魔法少女であってもボクは立ち向かう!」
そう言ってサルペはよろよろと立ち上がる。

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魔法少女学園都市レピドプテラ -small cabbage white- 10

「有力な学園同士だと小競り合いがあるってことは聞いたことあるけど、うちみたいに大した力もない無名の学園が急に襲われるなんて聞いたことないよ……」
グッタータは不安げに身を震わせた。
一方ラパエは困惑しているような顔をしている。それに気付いたシーアは、大丈夫かラパエと声をかけた。
「あ、ごめんなさい」
多分あたしのせいでこんなことになっちゃったんですよね……とラパエは俯く。シーアは「アンタは悪くないよ」と肩に手を置くが、ラパエは違うんですと首を横に振る。
「あたし、実はここに来る前は外の世界のテロ組織みたいな所で、大人たちのいいように使われてたんです」
あたしの魔法は人を傷つけるのに向いているから、それで目をつけられてずっと……とラパエは続ける。シーアとグッタータは何も言えないまま話を聞いていた。
「だけど、魔法が使える女の子はみんな“魔法少女学園都市”っていう魔法少女の街に行けるって聞いてたから、いつかそこに行けると信じて生きてきたんです」
それでひと月前、組織が国際警察に壊滅させられた時にあたしは保護されて、それでここへやって来たんですよ、とラパエは言う。
「あたし、レピドプテラに憧れてたから、とっても素敵な楽園みたいな所だと思ってたけど、ここでもあたしのせいで人が傷ついて……」
どうしてこんなことに……とラパエは声を震わせる。その様子を見てシーアとグッタータはかける言葉を見つけられなかった。
「ぐっ!」
ラパエたちが黙り込んでいると、不意に玄関口にサルペが転がり込んでくる。それを見てラパエは、サルペ先輩!と思わず駆け寄る。シーアとグッタータも駆け寄ってきた。
サルペはみんな……と呟きながら立ち上がろうとするが、魔力弾でつけられた脚の傷が痛んで思うように立ち上がれない。ラパエは「先輩無理しないで!」と声をかけるが、サルペはいいやと拒否する。