ネロと耀平が取ろうとしたクレーンゲームのぬいぐるみは、霞さんの手伝いもあって見事に取る事ができた。
とりあえずネロがぬいぐるみをゲットした事で、わたし達はゲームセンターをあとにすることにした。
そしてわたし達は寿々谷公園へ向かう。
「わー昔と変わってないね~」
懐かし~と霞さんは公園に辿り着いて早々に呟く。
「まぁ確かにそんな変わんねーよな」
ここは地方の街だし、と耀平は赤いウィンドブレーカーのポケットに両手を突っ込みながら言う。
霞さんはだよね~と笑った。
そんなこんなで、わたし達は公園内を周った。
遊具が設置されているエリアや噴水があるエリア、だだっ広い芝生が広がるエリアに小さい子ども向けの浅いプールがあるエリア…とあちこちを巡りながら、わたし達はずっと話し込んでいた。
しかしそんな中でも、黎はどこか霞さんから見えない所に隠れようとしている。
それに気付く度に霞さんは黎に話しかけていたが、黎自身はその都度そっぽを向いていた。
わたしはその事が気になっていたが、ネロ、耀平、師郎にとっては気になる事でもないらしく、あまり意識していないようだった。
水晶都市にはピラミッドの壁画みたいな絵文字が床に描かれていた。しかし、私にはなにかは分からないままだ。
悲鳴があがる。どこからともなくその叫び声が聞こえてきた瞬間、人型は一気に崩れ、ただの水と化し、シオンとエリザベスを濡らした。
「あら…今撃ったのは"コア"だったかもしれませんわ…」
「コア?」
「ええ。ああいう魔法は大体、術者と、魔法でできた実体のうち一体が繋がっているのが定石ですわ。その術者と実体が繋がっている部分をコアと呼びますの。コアを破壊すると実体は消え、術者は多かれ少なかれ負傷を負います。逃げるなら今のうちですわ」
「へぇ…よくわかんないけど、今なら時間があるってことだね…」
シオンは校庭や学校を見回して、一つの教室に目をやる。
「ねぇリサちゃん。もうちょっとだけ、付き合ってくれたりしない?」
「?ええ…私は言われなくともシオンさんについていきますけれど…なにをなさいますの?」
「今ね、きっと学校中騒ぎになってると思うんだ。あの水にもう襲われてたり、逃げるにも逃げれなかったりで私たちは会わなかっただけだと思う。今日は先生も少ないからさ…私たちで術者の人、元気取り戻す前に縛っちゃおう」
貴方は何の為に存在するのでしょうか。
答えは自分以外の誰かの為に存在するのです。
そして自分の命を大切にすることは他人の命を大切にすることと同じなのです。
ごわっと風が吹いて
分厚い曇が天井を覆う
高く高く飛んでいるはずだったのに
ざわめく木々 旅する葉っぱ
くるくる くるくる 巻き取られて
他人事のように雨が降り始めたとき
遠く遠く ここじゃないどこかへ行かなきゃいけない