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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 24.ヴァンパイア ⑪

それから3日後。
あっという間にヴァンピレスがわたしにあの”提案”の返事を聞きに来る日が来てしまった。
この3日間、わたしは期末テストの勉強をしつつヴァンピレスへ対する返事を考え続けていたが、考えれば考える程に頭がこんがらがってきていた。
そもそもの話、なぜヴァンピレスがわたしなんかに”提案”なんてものをしてきたのだろう。
こんな異能力を持たない平凡なわたしと手を組んで、彼女が本当に得をするのだろうか。
彼女は『あなたもわらわも損することはない』だなんて言っていたが、正直言ってかなり怪しい。
あの他人の異能力を奪って回っているヴァンピレスの事だから、きっと裏があるような、そんな気がした。
…そう考えながら、わたしがいつものショッピングモールをぶらぶら歩いていると、不意に前方からあ、と聞き覚えのある声が耳に入る。
わたしが顔を上げると、数メートル先からネロ、耀平、黎、師郎が近付いてきていた。
「あ、みんな」
わたしがそう言うとネロが、そういやアンタ今日はいつもの場所にいなかったなと思い出したように声をかける。

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ちがう

違う、違う、違う、 違う
違う、そうじゃない、それじゃだめ。
違う、そういうことじゃない。
なに、なに、なに?
そんな態度じゃない、そんな言葉求めてない、
おまえは一体誰?何?何も知らないじゃん、知ったふりして、そういう言葉、違う、

やっぱりあなたじゃないと
全然たりない
あなたからの愛がたりない
満たされない

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そらの未来

あの日の僕が
君に言う
空は限りなく青いと

また嘘をついた
僕は未だに
黒い「本当」に覆われてる

遥か遠い場所には
輝くものがある
想い出すんだ
あの頃の光を

懐かしいものが今も
此処に届いている
星を見て涙した日を
忘れぬように
そっと手を伸ばす
また陽が昇るのを
待ち続けると
僕は残すから

あの日の記憶が
目を覚ます
まだぼんやりしてるけど

まだ嘘をついてる
僕は今日も
布団のなかにくるまってる

誰も知らない場所には
大切なものがある
想い出すんだ
あの頃の君を

懐かしいことが今も
此処に残ってる
空を見て笑った日を
忘れぬように
そっと手を伸ばす
またあの風が吹くのを
待っているからと
僕は守るから

未来の声が今も
此処に聞こえてる
夢を見て泣いた日を
忘れぬように
ずっと大切にしていたい
いつか君が来るのを
待っているからと
僕は歩むから
僕は逢いにゆくから




前回は、リアクションをたくさんいただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

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転生するのも案外良くないものだ p.5

 ただし不満がない訳ではない。

 例えば宗教学的に見れば、宗教は古代的なアニミズムがあるようだが、立派な神殿や聖典、確固たる教義は存在しない。

 御天道様にお祈りを捧げる、埋葬する、といった文化はある。しかしキリスト教をはじめとする前世に存在した宗教、また街の方の宗教のような、支配と結びついた宗教ではない。一神教と支配について好んで学んだ身としては非常に残念である。

 人文科学の点から見ても、我々の使用言語にはそもそも文字がない訳だから歴史研究や文学の発展もないに等しい。勿論口伝の神話や寓話は存在するが、それ以上の『文学』は私が見たところ存在しないようである。私は前世、本、殊に文学や古代史書、天文学書をよく好んで読んだのでその点落胆した。

 また、コマ=リャケットには文字がないと述べたが、文字を覚えられる者が殆どいないのである。
 
 集落の中で公用語を話せる者は一割程度、その上記述が可能な者は一人といった具合である。それにはやはり鱗と鋭い爪で武装した使い勝手の悪い指という身体的な特徴の原因もあるが、主な理由としては知能の低さにあるであろう。

 元は人間である私も今では立派にコマ=リャケットである。知能の低下に抗う術は持っていなかった。

 まず思考力が低下していることが分かった。計算は随分遅くなった。小学生の頃と比べてもあまりにも遅い。
 それに、高校や大学で当然に説明のできた理論が理解できなくなった。知能の低下に気が付いたときに一つ一つ確認したところ、虚数が理解できなくなっていたのだから驚きだ。

 補足しておくと、コマ=リャケットの脳機能は十年程度で成熟する。私が他の者よりも極端に知能が低い訳でもないようだ。

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転生するのも案外良くないものだ p.4

 一体街はどれほど文明が進んでいるのかと思い行商の者に話を聞くと、あちらでは動力のない巨大な馬車が轟音を上げながら走っていると言う。恐らくは蒸気機関車であろう。電気が通っているかどうかは測りかねる。今の私にとっては灯油ランプと電気の違いを彼らに説明することは困難なことだ。

 彼らの話を総合すると、どうやら街は、あるいは人類は産業革命時程度の文明を持っているようだ。

 街の亜人らは魔力を持ち魔術を操るので産業革命時程度だが、それらを持たぬ人間はより発展した科学技術を有している可能性が高い。コマ=リャケットの文明は未だ中世の農村共同体程度で止まっている訳だから、人類、殊に人間と比べれば雲泥万里というものである。

 しかし、文明未発達といえども、周囲の生活に合わせていれば大した苦労はない。

 コンクリート・ジャングルで時間に追われた生活をするのも、充実感に満たされていて嫌いではなかった。ただ、今の自然の中の共同体的な生活も悪くない。時間が悠然と流れて行き、それに身を任せる。
 人の形をしているとはいえども分類上は爬虫類。子供は過酷な生存競争の中で生き延びねばならぬものと覚悟していたがそれも杞憂に終わり、成人するまで親の扶養を受け、誠実に秩序を遵守していれば成人したのちも集落の中で暮らすことができる。類稀な平和を享受しているように思う。

 現在の私は幸福感で満ち満ちている。