ここは九州最大の鉄道駅にして陸海空の交通機関のターミナルに直結する博多駅。
職場の企画旅行でオーストラリアを目指していたのだが国際情勢の変化により日本への帰国を余儀なくされ、帯同してくれていた新妻を労うために彼女の故郷・福岡県春日市に行こうとしたが公共交通の最終便に間に合わない関係で小倉に泊まっていた。
そして実際に泊まってホテルの朝食を食べて九州も同じ日本と言えど出汁や醤油、味噌といった調味料をはじめ故郷の東京とは異なる文化が根付いており、そんな九州の食文化が合わなくて地元が恋しくなった俺に気を遣ってくれたのか、妻からとある提案を受けた。
妻曰く、彼女の親友に彼氏はできたけれど相談したいことがあるとのことで福岡市内に行くことになりチェックアウトをしてすぐに乗り込んだ新幹線みずほ号でつい3分ほど前に博多に着いたところだ。
妻の後を追って待合せ場所につき、実際にもう一組のカップルと合流したは良いもののお相手の彼氏さんが近くの公園の敷地内にある陸上競技場の側から2時間が経っても動こうとしないのを見てご立腹な女性二人の表情を見て俺が思わず声をかけた。
「もしかして、プロ野球好きなの?」と言う俺の一言に彼が「はい。もう亡くなったけれど優しかった祖父はかつてライオンズの球団職員で当時の話を何度も聴いて育ったので」と返すのを聞き、「そっか。俺はそちらとは真逆の球団のファンなんだ。」と返すと「巨人ファンですか…昔はよく日シリで対戦していましたね。僕はその最後の対戦の年に生まれたので実際に経験していないですが。」と言うのを聴いて女性陣が首を傾げるので「ここにかつてプロ野球の本拠地があったんですよ。今はそのチームの親会社が変わって西武ライオンズと呼ばれていますが、元々は福岡の西鉄という名前だったんです。まあ、僕が応援しているチームのOBがかつて監督として西鉄と対戦して何度か乱闘になり、何度も殴られた場所でもありますが」と説明すると、その監督だった人が誰か察した彼氏さんが「あの34番の人ですか。あの性格だし高齢で亡くなったので、天国で似たもの同士のあの闘将と喧嘩してそうですね」と笑い飛ばしているがその表情はどこか哀しそうだ。
そして、俺たち夫婦で二人の相談に乗ることになるのだが、拍子抜けする程あっさり解決したのはまた別のお話。