たとえば、 ペディキュアの色を選ぶときみたいに ちょっとだけ幸せだったの 触れた肌は同じ熱を持って 頰に触れられて愛おしく思った 無責任に幸せになれよなんて言わないで 恋は落ちたら負けなんだって 隣にいればいるほど思うから 夜空に消えた花火の残像を 瞼の裏に焼き付けて
お元気ですか、 どうお過ごしですか、 そちらはまだ涼しいですか、 幸せですか 指先で触れるだけで全部、 伝わって欲しいけど 指先で触れるだけで全部、 伝わってしまったら 面白くないじゃないか
うっすら明るくなれば 特別な朝だなんて期待もしてないけど ただ雨音を聴いていたくて 毛布に包まる午前四時 沈んだ月と昇る太陽を見比べて チカチカ光った残像は きっと夢の中の君だ
新聞もテレビも見ないまま 山葵(わさび)を山で掘って ことばだけにすがったまま 時々、長電話をかけてくる そんな友達はいらんかね?
街が寝静まれば 1人の部屋に1人だけの夜 時間に押し流される日々で 弱音なんてこぼせなくて 悩みなんてない、なんて そんなの嘘っぱち 不安だらけ、本当は泣き虫 あゝ、猫になりたい。
とうめいな雨、 になりたくて、 泪を拭かない。
薄っぺらい文明の利器を掌に握って 何百キロも離れた君の声を待つの 科学の進歩に感謝して 「久しぶり」って 確かめ合うの 少し上ずった声、 笑い方、 心臓がきゅってなるものばかりで 少しずるいよ、 いのち短し恋せよオトメ、 なんて、花と同じ寿命なら 素直になれたりするのかな あなたとの一瞬が 永遠になればなんて 贅沢は言ったりしないから それでもヘソが曲がった私は 潜り込んだ布団の中で あなたに対する口実を 考えながら眠るのです
自由に泳ぐ さかなが羨ましかった ぷくぷく 不安を漏らしては 溺れそうな心 肝心なことは全部自分次第で 7回転んだって8回起き上がれるような ストイックさは生憎持ち合わせてないのよ スニーカーの紐が千切れたって 歩くしかないじゃない
退屈な夜を 蹴り飛ばして行こうよ 日常の中のイレギュラーに 心ときめく今日この頃 七味唐辛子とか山椒とか胡椒とか 刺激のある人生がいいなんて あってもなくても困らないのに 君のいなくなった街で まだ君の後ろ姿を探すよ 夢の中で散らばった星を集めて まだ微睡んでいたくて きみの記憶の隅の私が まあまあ綺麗な思い出でありますように
くしゃみをひとつ、 そんな季節 おろしたてのノートの隅に 落書きをして サボれもしない日常に ピリオドを打つ勇気はないの 瞬きをひとつ、 夢うつつ 大きな水槽を 泳ぐ夢をみる 逃げも隠れもしないから 今だけ自由に泳がせて