じゅうろく
スイッチを入れるみたいに急に見えないものが見えるようになったりはしないけれど、いま見えてるものが急に消えてしまうくらいならそのほうがいい。弱いわたしは強くなりたいんじゃなくて、きっと弱いわたしのままゆるされたい。あきらめや妥協をあったかい毛布でくるんで抱きしめたい。砕けた夢のかけらひとつひとつに名前をつけて、きれいなガラス瓶の中にしまって二度と見ないようにしたい。大人になることとずるくなることをイコールでつないで、みんなおそろいだねって笑うことをきらいながら呼吸をしている。信じたいものが自分の部屋の毛布だけになったら、後悔なくさようならできるみたい。千年たっても無理な気がするから、とりあえずきょうは、もう寝てしまおうね。