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コーヒーブレイク⑤

僕がこの喫茶店に通い始めて2年と3ヶ月がたった頃に僕は初めて珈琲とサンドイッチを求めに閉店間際の喫茶店を訪れた。
扉の鐘の音もどこかいつもと違う気がした。

入店して即座に僕は目を疑った。

TVのプロ野球で巨人が阪神にボロ負けしてるから?違う。
店内の客が5人をこえていたから?
違う。
店内のBGMが聞いたことの無い楽曲だったから?
違う。
じゃあ何故かって?
いたんだよ。この店に従業員が。
でもそれだけだったら僕はそんなに驚かない。

ひと目見ただけでわかったさ。大きくなってもその雰囲気、顔だちは何にも変わりはしない。
彼女だった。僕の初恋相手だった。
僕の目の前から突然居なくなった彼女は、
僕の目の前に突然に現れた。

昔から美人だった彼女は化粧を覚えて犯罪的に美人になっていた。

扉の所で突っ立ってる僕に気づき
いらっしゃいと聞きとりやすい美しい声が僕の鼓膜を突き破る。

慌てて注文をする。店主は阪神が勝ってるからかTVに釘付け。

僕は何を意識したのかいつもとは正反対のこの喫茶店で一番高いセットを彼女に頼んだ。

その時の店主の逆転満塁本塁打を打たれたかのような表情で僕を見つめた事と彼女の気持ちが良い返事はいつまでたっても忘れられないだろう。

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コーヒーブレイク②

こっちに越して3日目の時。
だいぶ部屋が片付いたから近所を散策してると
雰囲気のある喫茶店にたどり着いた。

ドアを開けると鳴り響く鐘の音。

それに気づいた店主がメガネ越しに僕を見つめる
70代くらいの痩せた老人。頭は綺麗な白髪。
それが僕の第一印象。

店内を見渡す僕にいらっしゃいと細い声で言ってすぐ珈琲をひくためうつむいた。

何か注文しなければ。そう思いメニューを見つめる。とりあえず店内で1番安い珈琲を注文する。
珈琲を知らない僕でも解る。ここの珈琲は昔ながらの方法でつくってる。

暫くするとカチャカチャと音をたて僕の前に珈琲カップを差し出す。ひと口飲む。思いのほかに苦い。何の意地なのかブラックが飲めないのかと思われたくないから平気そうな顔を意識した。

そして暫く僕が珈琲と格闘してると今にもパンから飛び出そうな程の量のタマゴを挟んだサンドイッチが出てきた。
驚いて店主の顔を見ると店主は笑っていた。

「おめー最近こっちに来たろ?見ねー顔だ。
ここ近くの大学生とみた。若けーうちはたんと食いな」

とうつむいて珈琲をひきながら僕に言う。
僕は嬉しくてすぐにかぶりつく。タマゴは皿にポトポトと落ちていく。
美味しすぎたサンドイッチ。また明日も来るよとそう言って勘定を済ます。

サンドイッチの衝撃的美味さと
それの代金をしっかりとられたことは
いつまで経っても忘れないだろう。