鬼ノ業~本章(参拾陸)
そして、その回答は推測通りで。
「始めに仕掛けてきたのは人間だ。
仲間の敵をうった、それまでよ。」
「消えちまうよ。…全て。」
怒っているような、悲しんでいるような。寂しげともとれる声で、藤はその鬼を制した。
下ろす場所もなく、ただ背にのせていた朔の後ろの人間が、震える声でこう言った。
「もっと早く…姐さんに逢いたかった…。
そしたら、こんなおれを止めてくれたのかな…。
――何故、大人の前には姿を現さなかったんだよ…‼」
最後のは、行き場のない悔しさだった。
あのときの、゛正体を隠し続けている゛という言葉は、物理的にだったのかという気付きと、大人に姿を見せないという疑問。
「子供は教えれば分かるからさね。
…いや、教えなければわからないから、なのかもな。」
大きなその瞳は、その人間なんか見てはいなかった。