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明日の片鱗

この飛行機雲を追いかけたら 明日の片鱗が見えるだろうか

気づいたら季節は廻っていて 気づいたらみんな通り過ぎていて
みんな楽しそうなのに その関係は紙みたいに薄くって
そのくせみんな その紙ぐらいに心は脆いんだ
そんなことにいちいち気づく 自分も嫌になってきた
自分のカードすらも知らないのに 人のを知ってた気になってた
気づいたら そこにあった青空を 胸いっぱいに吸い込んだ

この飛行機雲を追いかけたら 明日の片鱗が見えるだろうか
きっとその明日すらも 憂鬱なんだろうけど
それでもなんか 知っていたいじゃん

焦ってもなんか疲れるだけで わざわざ苦労したくもないし
僕の青春は青じゃない たぶんきっとどすグロイ
そのくせみんな 綺麗な色で飾りたがるんだ
そんなことにいちいち気づく 自分も嫌になってきた
自分の色すら知らないくせに 人に色を塗りたくってたんだ
いつの間にかそばにいた曇り空を 胸いっぱいに吸い込んだ

この風に乗って宇宙(ソラ)に叫べば 明日への片鱗が見えるだろうか
きっとその明日すらも 憂鬱なんだろうけど
それでもなんか 知っていたいじゃん

この飛行機雲を追いかけたら 明日の片鱗が見えるだろうか
もうすぐくる明日も ロクなもんじゃないけど
それでもなんか 知っていたいじゃん

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琥珀糖

ねえねえ


そう言って君が差し出してきたのは

ステンドグラスをバラバラに割って、

混ぜて、もう一度固めたようなお菓子

ガラスの破片のように

ところどころ尖っているそれは

外側はガラスほどではないけれど硬くて

でも、それに相対して中側は

なんとも言えないふよふよした食感で。

不思議そうな顔をして食べる僕の横で

君はそれを夕陽に翳して、

何かをみるように目を細めて、

それから美味しそうに食べていたよね。

残念ながらそれは

ステンドグラスのように

光を通すものではなかったけれど。

君はあのとき、何をみていたの?


このお菓子ってさ、琥珀糖って言うんだ

なんだか、お前に似てるお菓子だよな。


そう言って君は僕に微笑みかけた。

何が言いたいのかわからなくて

首を傾げる僕に君は、

琥珀糖を差し出して言葉を続けた。


外側はなんだか強そうにみえるんだけど

内側は実は誰よりも繊細で。

琥珀糖ってさ、自分で作ろうと思うと

何日も乾燥させて、この食感にするんだ

きっとずっとずっと我慢してきた時間が

お前を強そうに見せてるだけなんだよ。

だからさ…


何よ急にー(笑)


って話を遮ってしまったこと

まだ謝ってなかったよね。

ごめん。

僕はその先をきくのがなんだか怖くなってしまったんだ。

あの日の放課後、

君と並んで座って琥珀糖を食べた日から

僕は密かに琥珀糖作りに挑戦してるんだ

未だに上手く作れてはいないんだけど

いつか、上手く作れたら、

食べてもらうから。

その日まで待っていてね。




僕の我慢してきた時間よりも

ずっとずっと長く

大好きな君へ。

僕からの長ったらしい言葉。