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非現実ーおとぎ話ってそういうものー ⑤

そんな2人のことを、ローズとリリーはもちろんよく思っていませんでした。とくにリズに対して、とても怒っていました。2人はいろんな方法でヘンリーとリズを邪魔しようとしましたし、リズにもたくさんの嫌がらせをしました。リズはとても優しいですから、なにかの間違いだと思ってとくに気にせず暮らしていました 。でもヘンリーは2人のいやがらせに気づいていました。そして、そのことをヘンリーが知らないと思ってローズとリリーが近づいてきていることにも。
王さまとお妃さまももちろん気づいていました。2人はリズとヘンリーがせっかく結ばれそうなのに邪魔をさせるわけにはいかないと、ローズとリリーを遠い田舎の別荘にしばらく泊まらせることにしました。素敵な男性方とのパーティーが毎晩あると聞かされた2人は、喜び勇んで出かけていきました。
さあ、これでヘンリーとリズの邪魔をする者はいなくなりました。2人はこれから、相手の良いところや悪いところを知り、長い年月をかけて受け入れあっていくでしょう。そしていつの日か本当に夫婦になるかもしれません。もしならなくとも、2人ならお互いをいいパートナーとして、生涯付き合っていけるでしょう。
誰もが結婚するだろうと思っていたカップルが破局するように、一生の友だちだと思っていたひとといつしか疎遠になってしまうように、先のことなんて誰にもわかりません。
けれど、願わくばすべてのひとが、そのひとだけの幸せで満たされていますように。

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幻獣学① ドラゴン

『幻獣』とは、一般に架空の存在とされる、実在の確定した動物とは大きく異なった性質を持つ動物のことだ。その中でも今回紹介するのは、幻獣の中の幻獣、キングオブ幻獣、ドラゴンだ。
ドラゴンは世界中に生息し、その姿形も種によって様々だ。しかし、大抵の場合、爬虫類の身体的特徴を備えている。
例えば西洋で多く語られるドラゴン。巨大な爬虫類の身体、皮膜の翼、角が生えている種もあり、伝承にある多くのものは、火の息、または毒の息を吐く。
他には、中国や日本に生息する、一般に『龍』と旧字体で書くことによって西洋のドラゴンと区別される種。複数の動物の身体的特徴を備え、空を飛ぶ際には竜巻や雲に乗る。天候を操作する能力を持ち、その体長は、天を覆うほどの巨体から、蚕の幼虫ほどの小ささまで、自在に変化する。
さて、先程『大抵の場合』と書いたが、もちろん例外がいる。
タラスク、と呼ばれるドラゴンだ。これは、硬い甲と長い尾を持ち、そしてこれこそがタラスク特有の特徴なのだが、獅子の頭部と脚を持っているのだ。しかも、脚は三対六本。
これらのような生き物など、いるわけが無い。そう簡単に否定することも出来ないのだ。
皆様ご存じの通り、かつてこの地球上には、彼らの如く巨大な爬虫類が存在したのだから。そう、『恐竜』である。恐竜は、急激な環境の変化に対応し切れずに絶滅した。しかし、ドラゴンはどうだ。身体に宿した炎は、氷河期に彼らを温め、その時代を乗り越えた彼らは、他の動物と同じように、進化、多様化を経て、何種類もが確認されるようになった。人間が現れて以降、その畏怖は信仰へと変わり、ドラゴンは神格的性質を手に入れ、その存在を確かなものとしたのだ。
しかし、神格を得たことが、彼らの存在をまた、不確かにもしたのだ。観測されない『神』を否定する現実主義が蔓延した結果、彼らの存在は、信仰に依存する故、それを失ったドラゴンの実在性は希薄になったのだ。

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対怪談逃避行10

「とにかく、これでこのお話はお終いだ。我々人間は、見事怪異を撃退し、街には平和が戻った。何から何まで万々歳。お疲れ様」
「あ、はい……」
しかし、徹夜で走り通しだったからか、安心すると流石に疲労が一気にやって来た。眠気と疲労とで、膝の力が抜け、その場に座り込んでしまう。
「ありゃ。まあ、徹夜だったからねえ。軽い休憩以外はずっと走ってたし、緊張が抜ければ、そりゃあそうもなるか。ちょっと待ってな、タクシー呼ぶから。君の家がどこかは分からないから、行き先は自分で運転士に言っておくれよ」
「はい、すいません……」
そこから先の記憶は曖昧だ。気がついたら、自分の家のベッドに突っ伏してた。
「………何だったんだろ、変な夢……?」
水でも飲んで落ち着こうととベッドから立ち上がろうとしたけど、足に上手く力が入らなくて転んでしまった。筋肉痛も酷い。それでやっと、夕べの『あれ』が現実だったと認識できた。
「……マジか。じゃあ、『奴』も……?」
全身の毛が逆立つような感覚。あの時は深夜テンション的なものもあって恐怖が麻痺してたようなところもあったけど、今思い出すと、めちゃくちゃ怖い出来事だったじゃないか。
「………」
とりあえず、枕元に転がっていた双眼鏡を拾い上げる。首にかけるための紐のところを見ると、細く巻いた紙が結んであった。それを解いて広げてみると、『蓮華戸 080-○○○-☓☓☓☓ オカルトに出会ったら相談サレタシ』という走り書きが。
「………まあ、使うことなんて無いだろうけど」
四つ折りにして鞄に放り込み、双眼鏡の方は少し考えてから、押入れに投げ込んでおいた。
「……もう、夜に双眼鏡使うのはやめよ」

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対怪談逃避行9

蓮華戸さん(仮)が言うのと同時に、足元に振動が走る。
「これは……!地震、いや……」
橋の、『奴』のいる側と反対側を支点に、橋がゆっくりと回転しているのだ。それによって道は分断され、『奴』は岸に留まることになった。
「旋回橋だよ。船が橋のあるところを渡れるように、こうやって動くんだよ。いや、逆かな?船の通る場所に架ける橋だから、こうなるのか。まあ良いや」
突然の轟音。驚いてその方向を見ると、中型船が橋のあったところを通過しようとしているところだった。
「もう日が昇る。それで僕らの勝ちなわけなんだけど……。最後に『奴』に何か言っておきたい事とかある?」
言いたいこと、か。正直、恨み言なら山程言いたいと思ってる。こいつのせいで夜通し怖い思いしながら走り続ける羽目に陥ったわけだし。
けど、そういえば蓮華戸さん(仮)は言ってたっけ。『怪異を存在させるのは恐怖』って。だとしたら……。
私は、『奴』のいる岸を正面に立って、船が通り過ぎるのを待った。遂に船は通り過ぎ、『奴』と正面から向き合う。睨んでくるその目を真っ直ぐ見返してやりながら喉の左端に右手の親指を当てて、ピッ、と右に引きながら、言ってやった。
「失せな化け物。あんたの時間は終わったんだ」
恐怖が力になるのなら、『お前なんか怖くない』って気持ちは、きっと武器になるはずだ。
段々と東の空が明らんでいく中、人外の不気味な断末魔が響き、そしてそこには、何も居なくなった。
「…終わった……?」
「うん、お疲れ。しかし、最後の啖呵、なかなか格好良かったじゃないか」

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対怪談逃避行8

それから、本当に3時間くらい、ひたすら走り続けた。スタミナを考えてか、蓮華戸さん(仮)は少しゆっくり走っていた(それでも十分過ぎるほど速かった)けど、やっぱり焦りが見える。ルートは大体一直線。少し離れてはいるけど、川に沿って移動してるみたい。
「はぁ……はぁ……、これ、どこに、向かって、るんですか……」
「………っはあ、えっと、ね……、………ッ、『奴』は今どこに!」
言われて双眼鏡を覗きながら後ろを向く。すぐに見つかった。『奴』はもう、300mかそこらしか離れていないところまで近付いていた。
「ああ!もうすぐそこに!このままじゃ追い付かれます!」
蓮華戸さん(仮)はそれに答えず、安っぽい腕時計を見ながら走っている。
「蓮華戸さん!」
「………大丈夫。ギリギリ勝った」
蓮華戸さん(仮)が急に曲がり、川に架かった橋を渡る。何とかそれに対応して、私もついて行く。『奴』の鼻歌のような声が聞こえてくるような気がする。
「だ、大丈夫なんですよね!?」
「……うん、もう大丈夫」
私が橋に足を踏み入れたと同時に、蓮華戸さん(仮)が言う。
後ろを振り向くと、『奴』がすぐそこまで迫っていた。
「ごめん、それ返してもらうね!」
蓮華戸さん(仮)が、さっき私に寄越してから放置されていたマックスコーヒーの缶を引ったくって、『奴』に思い切り投げつけた。それは見事に『奴』の頭に命中し、その足を止めるに至った。
「さあ、これでチェックメイトだ」

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対怪談逃避行7

「今、3時過ぎ。夜明けまであと……3時間半ってところか。マズいな………」
「ええ……?あれ、追い付かれたらどうなるんでしょう」
「さあ?けど、『んー、んー』って声が聞こえてきたら、それが奴だ」
聞こえたら手遅れなやつでは?
「今の奴の状況は!」
蓮華戸さん(仮)が、さっき奪った双眼鏡を私に返して後ろを指差す。それを取って、これまでに辿ってきた道を探す。
居た。これまでよりもかなり距離が縮まっている。どうやら私達の通った道をそのまま辿っているようだ。
『奴』と目が合う。これまではニタッと笑っていたのが、口を一文字に結んで、目だけギョロッと開いてこちらを睨んでいる。
「こ、こっちを睨んでますけど!」
「そうか、困ったな……。『奴』が変質した。捕まったら何されるかは分からないけど、十中八九逃げ切らなきゃ詰みだよ」
ええ……。とはいえ、なってしまったものはもうどうしようも無いので、ひたすら走る。
「どこか、良い場所あったりしません?」
「良い場所?隠れるのに?逃げるのに?」
「どっちでも!」
蓮華戸さん(仮)は少し考え込んで、何かを思い付いたように手を打った。
「………これから3時間、休まずに走り続ける元気、あるかい?」
「やるだけはやってみます」

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対怪談逃避行6

しかし、話しながら走ったせいか、脇腹が痛くなってきた。止まるわけにはいかないのに、痛みで足が鈍る。
「ちょ……まっ……待って………、脇腹が……」
「む、なら少し休もうか。十分距離も開いただろうからね」
「ありがとう、ございます……」
脇腹を押さえてへたり込む。深呼吸しながらマッサージをするが、まだ痛みは引かない。
「だいぶ冷めてるけど、マックスコーヒー飲むかい?糖分とカフェインが同時に摂れるよ」
蓮華戸さん(仮)が、コートのポケットから缶を引っ張り出し、差し出してきた。受け取るだけ受け取って、とりあえず放置しておく。
「……『奴』は、またあの辺でキョロキョロしてるんですかね……」
「それなら良いんだけどね……」
蓮華戸さん(仮)は、今来た方を睨みながら、半ば上の空で返す。さり気なく双眼鏡がスリ取られてるけど、責める気もしない。
「どういうことですか?」
「君は、三度同じ方法で『奴』から逃げた。これ以上、騙されっ放しでいると思うかい?僕はそう思い込み切れない。『奴』がただのプログラムから、自律行動する完成品になるかもしれない。そして、多くの怪異は、標的との間にできた『縁』を、決して見逃さない」
蓮華戸さん(仮)が双眼鏡で、さっき居た方を見る。不思議なことに、首を回してさっきの場所以外の場所を見ている。
「………しまったな、『奴』が完成したぞ。僕達を、いや、正確には君を追ってきてる。嗅覚で指名手配犯を追い詰める警察犬のように、道に残った『縁』を辿って。あ、目が合った。これで僕も標的だ。……さあ、もう休んでいられない。走るよ」
「は、はい……!」
だいぶ楽になってきた。これなら走れる。蓮華戸さん(仮)を見失わないように、急いで立ち上がり、私も走り出す。

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つき (3) (Side 真月)

どうやら彼奴…龍樹は俺が入り込んだ事に気付いた様だ。
あ〜あ、もうちょっとだけ気付かれなければ上手く行ったのにな。
小豆を救う事が。
小豆は俺の猫だ。ちゃんと愛していたつもりなのに、つい最近身体の不調が目立つ様になった。
獣医に見せるも、時すでに遅し。
"この子の寿命は…5ヶ月持ったらラッキーだと思ってください。動物は強くありたいが為に自分の体の不調を自分から訴えないから初期発見は難しく、貴方のせいではないです"
嘘だ。
俺が悪い。
俺が…鈍感だから。
俺のせい。
駄目だ…
現実に苛まれながら寝たその日に、俺は不思議な夢を見た。

ねぇ、
あずちゃんだよ。小豆。
ねぇ、私ね、死んじゃうのはしょうがないと思うんだ。
だからね、最期に私の願いを聞いて欲しいな。
あず、好きな子が居るの。
近所の龍樹さんって人の猫で、ゆつきくん。
5年前に散歩してて出逢ったの。
うち、最期にゆつきくんに気持ち伝えてから逝きたい。真月にぃなら会わせてくれるよね?強いもん。

…目覚める。
起き上がると、足腰も弱くなって階段すらも登れない筈の小豆がベッドに上がってきていた。

まさか、ね

でも…

俺は計画を練り始めた。
龍樹の記憶を断片的に失くして行けるなら、ちょっとだけ"ゆづきくん"とやらを借りて来よう。
手始めに俺の龍樹の共通点…龍樹の元彼女と俺の彼女が同一人物なことを利用する。
いわば実験の様なものだ。
そして俺の勤務先が病院である事も。
彼女に仕掛け人を頼めば事故が起きる確率を増やせる。経過観察にも丁度良い。
その他にも、色々と。
俺の特殊能力をありがたいと思ったのもこれが初めてだ。
僅かながら理性は叫んだが、小豆は長く生きられないという事実が俺を駆り立てた。

《お詫び》
つき (2)でタグに『長編小説』いれるの忘れてました。すみません。

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