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緋い魔女 Part2

「…ああ、あれですか?」
屋敷の主人は少女が指さす方に目を向ける。
「…あれは…えぇ、まぁ…我が家の”家宝”みたいなモノにございます」
ふぅーん、と少女はうなずくと、静かにさっき指差した方へ歩き出した。
あ、ちょっと…と屋敷の主人はうろたえたが、少女は気にせず広間の隅へと向かった。
そこには、奇妙な人影が立っていた。
―足元まである真っ黒な外套を着、頭巾で顔を隠した、少女と同じくらいの人影。
豪奢な屋敷の広間の中で、それはあまりにも異質に見えた。
少女は人影の前まで来ると、後を追ってきた屋敷の主人の方を振り向いた。
「これ…」
「えぇ、まぁ…知り合いから貰ったモノなのですが…」
極まりが悪そうに喋る屋敷の主人から少女は目の前のモノに目を向けると、何を思ったかその頭巾に手をかけた。
「…!」
一瞬のうちにひっぺがえされた頭巾の下から、少年とも少女とも似つかぬ顔が現れた。
その目は驚きで大きく見開かれている。
「…そう、やっぱりね」
少女はそう呟いてニヤリと笑った。
「…コイツ、あの有名な魔術師の”使い魔”でしょう」
…えぇ、と屋敷の主人は小声で答えた。
「しかも貴方はコレの”マスター”ではない…」
「…まぁ、そうですが…どうして…」
屋敷の主人が尋ねると、少女はクスクスと笑いながら答える。
「だって普通の”ヒトのカタチをした”使い魔は、大抵主人のそばにいることが多いでしょう? 貴方のような貴族なら殊更… でも、コイツは広間の隅で放し飼い…ならマスター契約せず、何か適当な魔法石から魔力供給させていると考えるでしょう」
間違っていて?と少女が訊くと、屋敷の主人はいえ…と答えた。

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パンはパンでも食べられないパン何だ?

A「気付いたら真っ白で、部屋の中央にある一台のテーブルと一脚の椅子、それから天井の照明とそれのスイッチの他は何も無い部屋に居た。するとそこに、何かを持った男が現れた。男は手に持っていたそれをテーブルに置いた。それは竹細工の浅い籠に入った一つの菓子パンだった。なんとも形容し難い形状をしているが、クリームが乗っていて甘い匂いを漂わせていて、とても美味しそうだ。それを見ていると、男がこう言った。
『貴方はこのパンを食べても食べなくても良いです。ただし、十分後にまた来ますが、一口でも食べられた形跡があれば、貴方の身近の大切な人、もし居なければ貴方の内の誰かが凄惨な死を遂げます。一割以上が食べられていた場合、貴方の家族が全員、貴方も含めて悲惨な死を遂げます。二割を超えた場合、一族郎党その目に遭います。ああ、貴方、学生さんでしたか。三割を超えた場合は、クラスメイトと担任の教師も死にます。四割を超えたら、彼らの家族も。五割を超えた場合、現実に貴方を知っている全ての人間が死にます。六割でネット繋がりの人間やその家族も死に、七割でこの国の全ての人間、勿論私も、死にます。八割でアジア全土の人間が死に絶え、九割を超えた時点で、この星は滅びます。……まあ、信じるか信じないかは自由ですが。それでは、また十分後に』と置いていったパン!」
Q「いや重い上にその想像が怖いわ。お前絶対サイコパスだろ」

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或る男達の行程

五人の男が歩いていた。
以下は彼らの末路である。
一人は上を向いて歩いていた。その結果、ほんの少し頭を出していた石ころに気付かず躓いて転んでしまった。
一人は下ばかり向いて歩いていた。その結果、頭の高さにせり出した木の枝に気付かず、頭から突っ込んで驚きのあまり倒れ込んでしまった。
一人は横を向いて他の奴の様子ばかり見ていた。その結果、前の二人が次々と脱落していくのを見てまごついているうちに、はぐれてしまった。
一人は、ただまっすぐ前だけを見て歩いていた。その結果、迷わず歩き続けることができたが、星の美しさも雲の美しさも草花の美しさも知ることは無かった。
一人は、キョロキョロとしてばかりいて、落ち着きが無かった。その結果、様々な美しいものを見ることができた。
以下は彼らを見た人間の言葉である。
一人目は駄目だ。上しか見ていないのでは足を掬われる。
二人目は駄目だ。陰気に下ばかり見ていて、真実は何一つ見えていない。
三人目は駄目だ。一人で歩けないような奴が、どうして歩こうなどと思ったのか。
四人目は素晴らしい。何にも揺らがず真っ直ぐ行くべき道を進む。あれこそ人間のあるべきあり方だ。
五人目は駄目だ。あんな落ち着きの無い奴、社会に適合できるわけが無い。そもそもあんな奴と居るなんて、周りに何か言われたら恥ずかしくってしょうがない。