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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その⑨

「どうした、あんた『伝説』なんだろ? この程度で倒れてくれるなよ、ナハツェーラーさん!」
「倒れるかよ、この程度で……!」
ナツィが距離を詰める。それに合わせて、少女は刀を振り下ろした。
「っ……⁉」
ナツィはその攻撃を大鎌の柄で受け止めたが、少女の動作に違和感を覚え、素早く観察する。振り下ろした姿勢のまま、微動だにしない。
(…………この現象……もしかして、あのネリネって奴に散々やられた……?)
「それな……らっ!」
ナツィの放った蹴りは、少女が回避動作を取る間も無く命中し、数mも後退させる。
「『それ』、そっち側もなるんだ?」
「げッ……ほ、ぇほっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……痛ってェー……!」
少女は体勢を整え、上段の構えでその場に制止する。
「来なよ、ナハツェーラーさん。迎え撃ってやる」
「……そんなら、お望み通り!」
ナツィが駆け出す直前、少女は既に動き出していた。刀1本にて、遠距離に届く刺突の技。しかし、その動きはまたも空中で不自然に停止した。その隙を逃さず、ナツィは大鎌の斬撃を命中させる。ダメージによって少女はよろめき、更に後退する。
「ごッ……ふぅっ、はぁっ、っ、ぐぅぅぅ……完璧な騙し討ちだと思ったのにぃ……」
肩から胸にかけて深く残る傷を撫で、掌にべったりと付着した血糊を眺めながら、少女は溢す。
「……まあ良いや」
そう呟き、少女は再び刀を構える。
「どうせ私はこれ以外の戦い方知らないし」

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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その⑧

日が沈んだことで視界の悪い公園の中を、ナツィは周囲を警戒しながら進む。中ほどまで入った時、背後でかすかな物音が聞こえた。咄嗟に武器を構えながら振り返ると、暗がりの中のベンチに、1人の人影が腰掛けていた。
「やぁ、ゴスロリ美少女。どうした? こんな良い夜にそんな怒り顔で……綺麗な顔が台無しだぞ?」
ハスキーな女声で、その人影は軽快に話しかけてくる。
「…………」
「おっと、もしかしてゴスロリ美少年だったかな? 顔が良すぎて分からなくってさ。間違ってたらすまないね」
人影はゆらりと立ち上がり、周囲を見渡してから少し離れた街灯の明かりの下に進み入った。
その正体は、腰に1振りの日本刀を佩いた、セーラー服姿の長身の少女だった。艶やかな黒髪をポニーテールにまとめた少女は、丸眼鏡越しにナツィを鋭く見据えている。
「へいゴスロリ美少年……美少女?」
「どっちでも良いよ……それじゃ、俺は行くから」
「待ちなってカワイ子ちゃんや。ひょっとして君さぁ……」
少女はナツィに向けて、1枚の光沢紙を投げた。折り目の1つすら付いていないにも拘わらず真っ直ぐナツィの手の中に納まったそれは、笑顔でピースサインを取る練音の写真だった。
「!」
「この子のこと、探してたりしない?」
「お前……あいつのマスターか!」
「んー? どうだろうねー、ビミョーに外れ」
「は……?」
「私はネリネと『同一人物』だよ。そして……」
言いながら、少女は刀を抜く。次の瞬間、ナツィの肩口が切り裂かれていた。
「ネリネと同一人物である以上、目的は『あんたの暗殺』なんだよ、ナハツェーラーさん!」
「くそっ……ツファルスツァウル……!」

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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! 幕間

練音:GM、《遁走術》による特殊な回避したいです!
GM:えぇ……一応クライマックスフェイズ扱いなんですが……。
練音:GMの許可があればできると聞きました。
GM:できるけどさぁ……。
練音:現状、私決して不利じゃないと思うんですよ。
GM:遁甲符使い切ったけどな。
練音:向こうには既に3点与えてて、こっちはまだ2点しか削れてないし。このまま逆凪食らわせて叩き続けてれば勝てるわけじゃないですか。最悪【鎌鼬】で射程勝ちして一方的に叩けるし。
GM:それはまあはい。
練音:この高い防御力と優位性を捨てる縛りを結んで、攻撃の得意な他の方に繋ごうかと。GMもせっかく作った他の子使いたいでしょう?
GM:有利と言えるほど有利かは知らんけど……っつーか何ならその2点実質回復できる分余計に有利まであるけどな。まぁ、しょうがないにゃぁ……良いよ。でも《呪術》で縛り結べるか判定してね。
練音:6で成功です。
GM:はいはい…………いや待て何だそのダメージの受け方は。《遁走術》使えないじゃねーか。
練音:なので《鳥獣術》で代用します。
GM:目標値10。無理じゃね?
練音:そこで回想シーンの達成値ボーナスを適用させてもらいます。これで目標値7です!
GM:うーんしゃーない。やって良し。
練音:8で成功! あ、脱落する前に《言霊術》で煽り倒してから逃げても良いですか?
GM:じゃあ今+3修正入れてあげたから-3修正で。
練音:えぇ……あ、出目8。ジャスト成功です。
GM:了解。それではネリネちゃんは脱落したので、同じシステムの子から交代選手選んでください。次は誰が出るかなー。
練音:攻撃力高いキリカちゃんとかエリハさんだと良いなー。
GM:ダイスでランダムに決めようか。6は振り直しで。
練音:2! キリカさん!
GM:まーじか。

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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その⑦

(自己紹介か? 悠長な……)
「“木下練音”は、防御能力に秀でたロールでして。主殿は私が行くと決まった時、『練音ちゃんはハマれば誰にも触れられないからね』って、とっても喜んでくださったんです。何故なら……」
それまで伏し目がちに話していた練音が顔を上げ、ナハツェーラーを真っ直ぐ見据える。
「主殿が私に課したのは、ナハツェーラーさん。『あなたを殺すこと』だから!」
「……何?」
「主殿の命の達成こそ、私の存在意義! そして“私”の役目は『威力偵察』。あなたの実力は掴めました。つまり“私”は『次の一手』に繋げたので!」
練音が不意に、ナツィに背中を向けた。
「……1つアドバイスです。私を逃がさない方が良いですよ。私はナハツェーラーさんの大事なひとを知ってるんですから」
「何を……!」
大鎌で斬りかかったものの、僅かに届かず練音は既に駆け出していた。
(逃げた……⁉ どうする、このまま追うか、いや、かすみの下へ向かった方が確実に護衛できるか……?)
「……そういえばあいつ、『俺を殺すこと』を命じられたって言ってたな。それなら」
練音の走り去った方向へ、ナツィも駆け出す。
(無理に近くにいて危険に晒すより、俺1人で全部片付けた方が良い!)
ひと気の無い宵の入りの街を、ナツィは練音の気配を探りながら駆け続ける。
とある児童公園の前まで走り続けたところで一度立ち止まり、周囲を見渡した。ここまで、練音のものに近い気配は感じられなかったが、目の前の公園の奥から、注意を引く気配を感じるのだ。
「…………ここか。誘ってるのか?」
いつでも大鎌を振り抜けるよう肩に担ぎ、ナツィは公園敷地内に足を踏み入れた。

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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その⑥

「なん……で……⁉」
「あ、危なかった…………まさか、いきなりリソース全部出し切ることになるなんて……」
ナツィの時間が鈍化する。ナツィは攻撃に備え意識を練音に向けたが、反撃が来ることは無く、鈍化は終了する。
(何だ? 攻撃が来なかった……。あの【御霊縛り】って術が大分しつこかったし、その影響か?)
「うぅ……どうしよう……」
目を伏せる練音に釣られて、ナツィが彼女の足下に目をやると、大部分が焼き切れた紙製の札の燃えさしのようなものが2枚落ちていた。
(……2枚? もしかして……)
「さっきの【御霊縛り】、『それ』で当てたな?」
「はい、お察しの通りで……残念ながら、手持ちは全て使い切ってしまいましたけど」
「へぇ? じゃ、もう【御霊縛り】は使えないと思って良いんだ?」
「使いますよ。ナハツェーラーさんなら簡単に凌いじゃうと思いますけど…………」
そして練音は黙り込み、しばらく瞑目してから意を決してゆっくりと話し始めた。
「……ナハツェーラーさん。私、木下練音と名乗りましたね。本当は違うんです」
(……何だ、いきなり?)
練音の行動の意味を理解できず、ナツィは武器を構えたまま練音の言葉の続きを待つ。
「いえ、『私』は木下練音なんですよ? それは間違いなく。けど、“木下練音”は飽くまで、数ある私の『ロール』の1つでして…………。純粋な『使い魔としての私』の名前を教えますね。私は“ツファルスツァウル”。生まれは30年と4か月と14日前。刻まれた術式は、『ロールの実行』と『乱数による能力の上下』。現在の主殿は、私を創った魔術師のお子さんです」

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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その⑤

再び、ナツィは約1.5mの距離を取り、大鎌を構える。
(…………当たり前だけど……長物の強みは『射程』。これを忘れるな。こいつの蜘蛛脚はたしかに見た目こそ恐ろしいが、実際はかなり軽量で打撃の威力も大した事無い。むしろ素手での格闘の方が重いまである。糸の防御、糸の攻撃はどちらも踏み込んだ時のカウンター用らしい。『超』近距離の範囲じゃ、あの武器として使われている蜘蛛脚ですら、こいつにとっては邪魔なんだ。…………頑なに、この距離を保って、大鎌を当て続ける!)
薙ぎ払い。石突近くを持って放たれたその攻撃は、練音を深く捉え、実体に到達した。
「わぁっ!」
「届いたな」
練音は直撃の瞬間、辛うじて刃と身体の間に蜘蛛脚を滑り込ませ、盾代わりにした。しかし、威力を完全には殺せず、薙ぐ勢いのまま弾き飛ばされる。
「うぅっ……けほっ、あぅぅっ…………参ったな…………うん」
蜘蛛脚を利用して立ち上がり、練音は懐を探る。やがて目当てのものを発見し、若干手間取りながらも取り出した。
「あのぉ…………最初に私、本気でやるって言ったじゃないですか」
「……? 何だ突然……」
「あれは嘘でした。まだ出せます。ちょっとここから、本当の本当に本気で、全力で、あるものとできる事100%ぶち込んで、戦おうと思います!」
「……何なんだ突然」
練音が先程ポケットから取り出した小さな物体を真上に放り投げ、蜘蛛脚による攻撃を放つ。ナツィはそれを大鎌の柄で受け流し、カウンターとして斬り上げる。
「っ! 【外法・御霊縛り】!」
「その術、やっぱり技名言わなきゃ駄目なんだ?」
ナツィは背後から迫る腕を視線も向けずに回避し、そのまま攻撃を続ける。しかし。
「…………ッ⁉」
回避したはずの腕は更に追いすがる。攻撃の軌道を僅かに変え、自身の周囲をまとめて斬り払うようにして腕に対処し、勢いのままに練音を狙った。はずだった。
「ぐぁっ……⁉」
刃が練音の首に届く寸前、その動きが止まる。先ほど振り払ったはずの腕の呪いが、いつの間にかナツィの全身に絡みついていたのだ。

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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その③

「っ…………」
「ナハツェーラーさんっ、どうですか? 痛いですか?」
表情を輝かせて問いかける練音に、ナツィは不敵な笑みを返した。
「いいや、全然。始めようか、第4ラウンド」
「! ……はい、胸をお借りする気持ちで、行かせてもらいます!」
ある種の武術のそれに近い構えを取った練音に、ナツィは1歩ずつゆったりと接近し、およそ2m弱離れた地点で立ち止まり、大鎌を構えた。
「……!」
「流石にあれだけ打ち合えば分かるよ。ここだろ、『お前の1番苦手な距離』。その蜘蛛脚の見た目で騙されてたけど……お前の『糸の防御』、あれは超近距離にしか張れないんだろ」
「……正解です」
「だから、この距離。俺の刃は、お前に届くぞ」
「……私の武器も、十分届きますよ!」
ナツィが斬撃を放つ。
「っ! 【外法・御霊縛り】!」
「その魔法も、もう知ってる!」
ナツィは大きく踏み込み、無数の腕の拘束を回避しながら練音に斬りつけた。
「きゃぁっ」
「ようやく入ったか……どうだ? 俺の強さは」
「お、思った通りです。とってもお強い…………ところでナハツェーラーさん。ご存じですか?」
「…………?」
練音の言葉の意味を察するより早く、ナツィの手足に多数の切り傷が開いた。
「なっ……⁉」
「『糸』、って…………ぴんっと張ると『刃物』になるんですよ? 懐に飛び込んできてくれて助かりました」
「つくづく……近距離型か……!」

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我流造物創作:ロール・アンド・ロール! その③

(何だ……? 急に、身体が動かなく……どんな魔法だ……?)
練音は悠然とナツィに接近し、蜘蛛脚でナツィを殴りつけた。地面に叩きつけられるのと同時に、ナツィの身体も動き始める。
(ぐっ……やっと動くようになった……! あいつの攻撃、そこまで強くは無いけど、まるでこっちの時間の流れが遅くなったみたいに反応できなかった…………!)
「さぁナハツェーラーさん、第2ラウンドですよ!」
練音の言葉に、ナツィは大鎌を構え直し、再び距離を詰めた。練音も更に踏み込み、近距離の戦闘に持ち込む。ナツィは石突側による打撃を仕掛けたが、その攻撃も幻影を貫くだけで終わり、再び時間の鈍化が発生する。
(マズいっ、また……!)
「せやぁっ!」
ナツィの鳩尾に、練音の掌底が突き刺さる。
「ぐっ……また…………この感覚……」
「どうですか、ナハツェーラーさん! 私の実力、ナハツェーラーさんの足下くらいには届いてますか?」
「…………っはは、一撃が軽すぎる。3倍強くなってから出直せ」
「あらら手厳しい。それじゃ、届くまで続けましょう。第3ラウンド!」
ナツィが再び突進する。練音がそれに合わせようとした時、ナツィは急ブレーキをかけ、完全には詰め切らないままに大鎌で薙ぎ払った。斬撃は無防備な練音の首に迫り、直撃をナツィが確信した瞬間であった。
「……【外法・御霊縛り】」
練音の詠唱と共に、ナツィの身体を複数の冷たい腕が背後から引き、攻撃が逸れる。
(外れた⁉ マズい、それよりも……!)
再び発生する時間感覚の鈍化。身動きの取れなくなったナツィに、蜘蛛脚が打ち込まれた。