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This is the way.[Ahnest]13

アイネ・マウア山脈は古い言葉で『テ・トルフィ』と言うらしい。『3層の山』という意味だそうだが、その名の通り、この山脈は3列に山々が列なっている。ソルコム側の山々を、『テ・エスト』、ケンティライム側の山々を、『テ・ウィゼ』、真ん中は『テ・ランデ』と言うらしい。その語源までは、流石のアーネストも知らない。ちなみに、『トルフレア』と言う国名は、この『トルフィ』から来たと言う説があるが、定かではないらしい。
そして、残念なことにこの山脈の登山道は、テ・エストのソルコム側、テ・ウィゼのケンティライム側にしかない。つまり、この旅は、道なき道を進むことになる。
「で、ホントにこっちであってるのか、シェキナ?」
真っ白な雪道の真ん中で、怪訝そうにアーネストは言った。
「大丈夫よ、アーネスト。この道を通ったのもそんなに前のことじゃないわ」
「それならどうして僕らはあの山脈に背を向けているんだい」
シェキナが振り返ると、なるほど、荘厳な山々がそびえ立っているのが見える。それも遥か後方に。
「うーん、おっかしいな......」
「きっと雪が積もってるから道が解りにくいんだ、あっちの方向へ向かってみないか?」
「...そうね、アーネストがそう言うなら」
なんとも頼りない二人である。先が思いやられそうだな...。

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This is the way.[Ahnest]12

「大丈夫ですよ、奥さん。僕だって冬の山の危険性ぐらいわかってますし、何より僕一人じゃないですから」
そう言ってアーネストは横を見た。視線の先には、路肩に座り込んで木切れをナイフで削る黒い目の少女。
「シェキナ、そろそろ行くぞ。支度は、良いのか?」
「ん、ええいいわよ、アーネスト。いつでも」
シェキナと呼ばれた少女は、短いブルネットの髪をかき上げて言った。
シェキナ・アビスタシ。アーネストと同じソルコム経済学修学院に通う貸馬屋の娘だ。
そう、その貸馬屋とは他ならぬあの貸馬屋である。馬は貸せねえが、うちの娘なら貸してやるよ、わっはっは!と言って、連れていくように言ってきた。シェキナ本人も大してまんざらでもない顔をして、一度ケンティライムに行ってみたかったの、なんて顔を赤らめながら言うもんだからたまったもんじゃない。
接点がなかったわけではない。同じ講義も幾つか取っていたし、一緒にお茶したこともある。しかし、それだけだった。アーネストは彼女のことを何も知らなかった。
なんでこんなことになってしまったんだろう。とれだけトホと嘆いても、流石に今から帰ってくれなんて言えない。
ただ一つ幸運だとすれば、彼女は何度か徒歩でかの山脈を越えたことがあることだった。しかしその彼女も冬のアイネ・マウアは初めてらしい。大丈夫か?
「あんまり遅くなっても名残惜しくなるだけだし、もう行きます」
「そうか。気を付けろよ、アーネスト」
「わかってますよ、ライネンさん」
「あ、そうだ、」
「?なんですか」
「アーネスト」
「はい」
「どさくさに紛れて押し倒したりなんか「んなことしませんよッ!!!」
さっきからライネンがニヤニヤしていたのはそのせいか。
「アーネ、行っちゃう?」
その腕に抱かれているカルクは、対照的にしょんぼりとした顔をしている。アーネストはその頭を撫でた。
「大丈夫、兄ちゃんすぐ戻ってくるからな」
カルクはこくりとうなずく。アーネストはその顔にニッと笑いかけると、矢筒と弓、肩掛け鞄を担いだ。
「それじゃあ、行ってきます!」
二人の過酷な山越えの旅が始まった。

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赤い花がよく似合う君はー2ー

次の日の朝、起きたら携帯に連絡が入っていた。犯人が捕まったらしい。高橋陽介…高橋?昨日の話した警察の人も高橋さんだった。でも高橋さんなんて沢山いるからたまたまだろう。しかも疑ったらその人に失礼だ。
しばらくしてその犯人と話すことが出来ることになり僕は面会室に入った。そこに居たのは事情聴取したあの高橋さんだった。一気に怒りが湧いてきた。
「どうして、どうしてひなを殺したんですか!」
「俺がひなと付き合ってたからだよ。だからひなを殺した。でも綺麗なひなのままでいて欲しかった。だから綺麗なままで残るように殺して綺麗にしてあげて最後に花瓶に挿してあった憎い君からのプレゼントを彼女に持たせてあげたんだよ。あの夜俺はひなに別れを告げられたんだ。他に好きな人がいるって。そんなこと言われたら許せなくて君には申し訳ないけど殺させてもらった。」
「それなら僕を殺せばよかったじゃないか!そしたらお前はひなと一緒にいられたし邪魔者もいなくなるだろ!」
「ひなは君の方が好きだったんだよ。どうせ俺にはもう飽きてたんだよ。だから君を殺したらひなが悲しむ。ひなが悲しむのは見たくないからね。」
「だからって殺していいことにはならないだろ!もういいです。あなたなんかと話したくないです。」
僕は勢いよく部屋を出ていってしまった。あいつの顔を見てると怒りしかなくて声も聞きたくなかった。なんだよ。ひなのためにひなを殺したなんて。意味がわからない。どこがひなのためになってるんだよ。

3年経った今は仕事も順調にいってて新しい彼女もできた。付き合い始めて1年と少しがたったところだ。付き合ってちょうど1年の日に僕はプロポーズをして結婚することが決まっている。
ひなの三回忌に行って色々思い出していた。犯人のこととか殺される前の日のひなとか僕が最後に見た殺されたひなとか。あの美しいひなの姿を忘れるわけがない。今も鮮明に覚えている。怖いぐらいに。

指先が触れた。
満面の笑みの君の写真に。写真の君の頬は赤く染っていた。僕が撮ってあげた写真だからかもしれない。
僕は手を合わせた。
どうして君は死んでしまったのか。
犯人はどうして殺してしまったのか。
赤い花がよく似合う君はどうして僕の前からいなくなってしまったのか。
考えても、考えても、答えはどこにもなかった。