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Trans Far East Travelogue83

嫁が爆睡してるので「まだ飲み足んねえけど、お開きにすっか」と呟いて俺の自腹で会計済ませると仲間達が「俺達で荷物は持つからお前は嫁さん背負いなよ」と言ってくれたので好意に甘えることにして荷物を渡す。
試合の八回から合流した兄貴が「肩に青痣できてるぞ。肩どこかに強打したのか?」と訊いてきたのに気付いて急に酔いが覚めたらしい嫁が「青痣?大丈夫?怪我したん?」と心配そうに訊いてくれるが、本当に心当たりが無いので試しに「その肩の痣の所,耳当てる感じで顔を乗せて体重かけて貰って良い?」と嫁にお願いして顔を乗っけて貰うと見事に痣の大きさが嫁の顔の大きさと一致した。
それを見て俺が頭を抱えて「マジでどれだけ重けりゃ青痣になるんだよ…普通赤く跡ができる程度だろ」と呟いたのを聞いて嫁が「もしかしてウチ,デブやけん嫌われてしもうたと?折角ばり好きな貴方と結婚できて幸せになったばっかりなんに愛想つかれて離婚なんて悲しかとはイヤばい。」と上目遣いで言うので嫁を安心させようと俺も福岡の方言使って「腹かいとらんけん,よう聞いて。俺は君やけんばり好きやし,君やけん結婚したんや。それに,君は俺の嫁やけん体重が重かくらいでは愛想尽かすことは無か。俺が愛想尽かすんは君が俺や東京のこと悪う言う時くらいや。お互い愛し合っとーけんこそ,お互いん心も体も傷付けん事出来ると嬉しかけん,肩を枕にするんやなくて肩にしてや。」と答えると「優しかね。ウチ、貴方が旦那さんでいてくれるお陰でいつも幸せや」と言ってくれたので「こげんイケメンな俺ば好きになってくれたとが世界一笑顔が愛らしゅうて美しか君が嫁やけん,君の笑顔見たかだけや。君の体重,俺の体感じゃ100キロ超えて重かばってん、それも君の魅力や」と笑って返すと嫁が頬を膨らませて「そげん重う無か」と言っているが続けて顔を赤らめて「貴方は文字通りウチの全てば受け入れて魅力だって言うてくれるけんバリ好き。そげな優しか男ん人と結婚したかて思うとっただけに,貴方と結婚できたんな幸せやね。貴方みたいな男は浮気せんけんそれも魅力。」と言って抱き付くので「俺の嫁,めんこいな」と呟くと仲間達は「でも,旦那はみったぐね」と茶化すので「じゃあ,俺達の結婚式呼ばねえぞ?」と冗談めかして返すと皆もつられて笑い出す。
嫁が突然「筥崎宮の方や」と言って指を指す方を見ると空が白み出している。

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Trans Far East Travelogue82

巨人ーホークスの最終戦は巨人の先発,戸郷投手が7回裏までパーフェクトでホークス打線を完全に黙らせる。
一方の巨人打線もホークスの先発・高橋投手が投げるサブマリン特有の浮き上がるストレートにタイミングが合わず1人も出塁できていない。
試合が動いたのは7回の表,変化球による死球を連発してノーアウト一、二塁の場面に頭部死球で危険球退場になった高橋投手に代わって登板した大関選手の直球とツーシーム,スライダーをそれぞれ3人連続でバックスクリーンへ運び、裏には戸郷投手がなおもパーフェクトピッチを続けて8回は両チームとも三者凡退,運命の9回の裏に投手交代で大勢投手が出て来てこちらも三者凡退に抑えて試合終了。
ミュージアムも無事に行けて皆で中洲に行き色々美味い店をハシゴして水炊きをツマミに呑んでる時,「気になってたんだが,試合観てる時ツマミになりそうなもの食ってたのにビール呑まなかったのか?」と兄貴から質問が飛んできた。
「俺,試合観る時の酒は洋酒,それもウォッカ系のヤツ派なんだ。あと,嫁と一緒に飲んで嫁が先に酔っ払って俺に甘えてくるのも好き。そう言えば,昨夜船で飲んだ後は嫁が酔っ払ってはしゃいでデッキから落ちそうになってたっけ」と笑って返すと嫁はツッコむのかと思いきやもう酔っ払って俺の肩を枕に眠っている。
日本で過ごす最後の夜は福岡名物の旨い飯,俺の肩にかかる嫁の髪からほんのりと香るシャンプーの匂いと寝息,そして体感では80キロほどある重さの3点セットと那珂川のせせらぎ,玄界灘の潮風,湾岸地帯の夜景が華を添えてくれたおかげで良くも悪くも五感を通じて体験できている。
明日の今頃は韓国の済州島南方のリゾート地である西帰浦の港から北上した韓国本土の港町,麗水に向けて出航している筈だから今は楽しみたい。

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Trans Far East Travelogue81

鉄道好きである以上地下鉄の路線図は最低限頭の中に入っているとはいえまだ土地勘が無く、また最短経路で行ける路線の駅が分からなくてこの商業施設を突っ切って博多駅の方に抜けようとすると嫁が「目の前のこの川に沿って行くと中洲川端や」と教えてくれたので,嫁に先導して貰いそのルートで進むことにした。
ところが,嫁は気合いを入れてくれたのか実家で着替えてお洒落して来たは良いものの履いていたストッキングが伝線してしまい「ごめん。直さんと」と言って嫁がいきなり足を止めたので,念の為時間を確認すると皆が今いる施設で合流できるどころか,試合開始に間に合うかすらも怪しくなっている。
そこで,一か八かの賭けに出て嫁に全部の荷物を背負って貰って俺が嫁を背負って走ることにした。
阪神の近本選手のようなスピードを火事場の馬鹿力で出して走り続けること3分,俺の肩や足腰が限界を迎えると同時に中洲川端駅の入り口が見えた。
「重すぎてヤバい…『パートナーの体重が重いのはそれだけ深く愛されている証拠だ』って誰かが言ってたし,それだけ俺は愛されてるってことだから,体ぶっ壊れても悪い気はしないな」と呟くと後ろから拳骨が飛んできて次の瞬間,「もう,貴方ったら失礼しちゃう!でも,男の人って好きな女の子にはちょっかい出すんだからこれもその一つってことよね」と言って嫁が笑い,ゆっくりと俺の背中から降りて来た。
なんとか地下鉄には間に合ったが,ミュージアムの営業時間を考えると試合の流れ次第で閉館時間を過ぎかねず、先が読めなくなっている。
すると,仲間達からメッセージが来た。
要約すると「あまりにも展示品が魅力的なのでもう一度見たいが,その前に試合がある。だから,試合が終わったら飲みに行く前に皆でミュージアムが閉まる前に見に行こう」とのことだ。
そんなありがたいお誘いを受けたので,嫁にそのことを告げてとりあえず球場へ向かう。
皆と合流して球場へ入りユニフォームを着て帽子を被り,タオルと応援バットを装備して嫁がオススメする福岡の球場飯を俺の自腹で爆買いして席に戻っ
たところで,スタメンの応援歌を演奏する時に必ず流される,青い稲妻の異名を持ち昭和の巨人の選手象徴の1人でもある松本匡史さんの応援歌の前奏が鳴り響く。
これで舞台は整った。
今,時計が試合開始時刻になった。

球審が一言「プレイボール!」

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あの惨劇から一夜明けた俺の思い

俺,あの屈辱的大敗となった2013年の最後の試合からずっと「今年は勝つ,今年こそは日本一になる」と10年間信じ続けたのに,もうその夢は儚く散っていった。
たとえ監督が変わって不甲斐ない負け試合を連発しても信じて応援し続けてきたのがバカみたいだ…
それも,大切な10代の殆ど始めから終わりまでずっと信じて応援し続けて来たなりの果てがこれ…
イジメられて辛い子供時代を過ごした俺にとって,大好きな鉄道は憧れとか夢、思い出が詰まった車両が次々と消えていった中で鉄道と入れ替わりで希望の光に成り代わったのが地元球団の読売ジャイアンツだった。
だからこそ,この仕打ちは本当に残酷だし,何故か今日のナイターも負けた…
本当に俺の青春返してくれ!
精神面で言うなら,コロナ禍で折角できた友達との交流が少なかったり、学校行事が潰されたことよりもダメージ強かったんだよ!

本当は,今の原監督に辞任して貰いたい位だけど契約の話とか色々複雑な事情もあるから現実的には厳しいだろう。

これからドラフト会議があり,現役ドラフトでも選手の世代交代がある。
その歴史と伝統故に、キャンプでは野球好きならアマチュアでも名前を知っているくらいの有名なOBが視察に来ていて萎縮してしまい巨人では良い成績が出せなくて移籍先で才能が開花する第二,第三の大田泰示のような選手が出るかもしれないけど,俺は巨人を応援したい。

かつてイジメに苦しみ親や先生も対応してくれたけど裏目に出て余計にエスカレートしてしまって苦しみ,自ら命を断つことも検討し,実行する準備もした自分に生きる希望を与えてくれたヒーロー達には返しても返し切れない借りがあるし,地元の東京が大好きな俺にとってはそんな東京に根付く在京球団の一角である巨人軍には馴染みがあり,また10年間も苦楽を共にしたのだから幼馴染に対して抱くような愛着や仲間意識もある。
だからこそ、これからも巨人を応援していきたい。
しかし,図らずも身内から青春を否定される格好になったのだからまだ完全に気持ちの整理がついた訳ではないけど,1人のファンとしての唯一の願いは来年こそCSと日本シリーズで勝って青春を潰されて嘆く若いファンがいるという悲しい事を俺達の代で終わらせて笑い合うことだ。

巨人軍が存在する限り、俺はファンであり続ける

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Trans Far East Travelogue80

地元を離れる前にどうしても行きたいと嫁が言うので急遽キャナルシティでショッピングをすることになり,嫁がウキウキした様子で店から出て来たので「どうだ?良いモノ買えたか?」と声をかけると「勿論。今日買った水着で貴方を虜にしちゃうからね」と嫁が耳打ちして微笑んでいるので「期待してるよ。まぁ,俺も東京で買っておいたユニフォームで君を虜にするけどな」と言って微笑み返すと嫁に向かってまだ高校生位の女の子が「先輩,彼氏できたんですか?」と訊いてきた。
その声に気付いた嫁がお互いを紹介するのだが,彼女は嫁の中学時代の後輩で,話を聞いていると俺がセブにいた頃にコースは違うが俺の最後の1ヶ月に同じ学校に福岡県出身で当時高1の女の子がいたことを思い出し,試しにその子にセブ時代の話を聞いてみると俺が経験したことの多くが一致していて、俺らしき東京出身の男がその子を口説いてセクハラまがいの発言をしていたことも含まれており一通り話を聞いて「それ,俺だな。紛れもなく俺じゃねえか。全部心当たりあるぞ。どこに行っても女の人口説いて相手にパートナーいるって知った日に限って巨人負けたのは嫁と結ばれる為の試練だったのか」と笑うと嫁は「私にとって1番の試練は貴方が若気の至りでウチの知らない所で可愛い後輩ちゃんにやったセクハラの数々を聞かされとる今,この瞬間なんやけど」と言っていてただならぬ気配を感じて2人に土下座すると嫁が笑って「昔口説いた女と今も関係持ってたら怒るけど,持ってないから許すわ」と言ってくれたのだが,時計を見て我に帰って「君にも伝えてたけど,プロ野球ファンなら一度は憧れる巨人のレジェンド王貞治氏の現役時代の功績を紹介する施設が福岡にあって,職場の巨人ファン仲間全員と行くことになってるから待ち合わせの時間の30分前には出ようねと伝えたのに,今からタクシー乗っても間に合わないんだけど。もう集合の5分前だよ?」と伝えると今度は嫁が俺に土下座して来たが「俺は許すけど,俺じゃなくて彼らがどうするか決めることだから」と言って皆に電話をかけると今日の試合のチケット代全員分と試合後に中洲で吞み歩くのでその分の呑み代を俺達2人で全額支払うこと,それから直ちに皆がいる所へ向かうことで妥協して事なきを得た。
なんとか試合のチケットはネットで全員分購入できたが,俺だけ何故かレフトポールの向こう側になってしまった。

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Trans Far East Travelogue79

九州を訪れるのが初めてと言うこともあって位置関係を誤認しており,博多も港町で福岡の中心地から近いのだから,ハンブルクや横浜のように中心駅から歩けると思っていて港から博多駅まで徒歩で行こうと提案したら「地下鉄の中洲川端,百歩譲って天神まで歩くならまだ理解できるけど,博多駅って結構離れとるよ。そがん所まで歩くなんて何考えとるの」と初っ端からツッコまれる羽目になった。
すると暫くして嫁が誰かに電話し始め,それからすぐに行き先が決まった。
最初に目指すのは港から徒歩で行ける距離にある呉服町というエリアで,嫁が予約した「あるもの」を受け取りに行くとのことだ。
そして,現地に着いてその「もの」の正体が一台のレンタカーであったことに気付く。
まず車で向かったのは嫁の実家で,そこで初めて義両親と対面することになった。
幸いにも,義父は俺と同じ東京出身で巨人ファンらしく,プロ野球は観るかと訊かれて自分は巨人ファンだと伝えると,笑顔で昔を懐かしんで現役時代の江川は負け知らずで云々,ONの2人や藤田さんが監督の頃は面白かったが当時主力だった原が監督になってからは今までと打って変わって云々と,とにかく巨人を中心に昭和から平成初期という俺が産まれる前の頃の話を聴かせてもらえたのでかなり充実した時間となった。
そして嫁が好きな町,糸島へ行き海を見て一句詠んだら嫁が「もう時間や。車返さんと」と言うので引き揚げ,義父が勧めてきた場所であり個人的に1番行きたいと思っていた場所へ行くことになった。
元々身長が低くて童顔なのもあって普段は子供っぽくて可愛らしい雰囲気だが,ハンドルを握らせると実はクールな大人の女性になるという嫁のギャップに惚れてしまい,嫁と結ばれたのがどれほど幸せなことか実感することになった.

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Trans Far East Travelogue78

まだ日が昇る少し前,興奮して眠れなかったのか嫁がカーテンを開けて外の景色を眺めている。
その時に入って来た街明かりに起こされる形で俺も目覚め,徐に嫁の隣に座ると嫁が指さしで「あの前に街,見えるでしょ」と言うのでその方向に目を向けると確かに街が見え,しかも高速道路のようなものが海に突き出る様子まで見えている。
今度は俺が一言「これが平安貴族の左遷とか、幕末の西洋列強の軍艦からの砲撃と言った歴史の悲劇の舞台,関門海峡か…俺も都落ちしたのか」と自嘲気味に呟くと何かを察したのか嫁は苦笑いだ。
それから暫くすると船内放送が流れ,博多にはあと1時間ほどで到着すること、出港時間は予定より遅れて明日の朝8時,その次の港は韓国の為出国審査の関係上その1時間前には港に戻るようにといったアナウンスがあった。
その放送が流れ終わるまでに嫁は着替えて荷物を持ち,俺を促してデッキに向かって駆け出すので俺も後を追い、俺が甲板に着くと同時に空が白金になり始め,博多湾の入り口に当たる志賀島・海の中道が黄金色に照らされているのを見た嫁はハッキリと「ただいま」と呟き,俺が「長旅お疲れ様。漸くそっちも帰郷したんだよな」と声をかけると嫁が笑顔で「今度はウチがリードするけん,信じてついて来てや」と言うので「分かった。ど真ん中ストレートで行くからな」と言って俺も笑い,揃って手を繋いで下船した。
ここからは嫁が考案した秘密のルートに沿うことになる。

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Trans Far East Travelogue77

この船は日本で生活している人の為に作られている関係で,大浴場のサウナ室や食堂を含めた全ての部屋には国外にいても日本のテレビやラジオが利用できるようになっており,当然ながらプロ野球中継も視聴できる仕組みになっている。
今中継で出ている場面は現在進行形で行われているホークス対巨人の対戦カード第二試合で先発はホークスが東浜投手,巨人は赤星投手だそうだ。
巨人ベンチには今日トレードされてきたばかりの元オリックス森捕手と元ロッテの山口選手,小林捕手と松原選手との2;2トレードで1週間前に才木投手と共に入団した大山選手が,ブルペンには中川,高梨,田中の3人の投手に加え,助っ人外国人のバルドナード投手,更にはヤクルトから金銭トレードで古巣に復帰した田口投手,無償トレードで獲得した元日ハムの伊藤投手もいる。
その様子を中継で見ている他球団のファンは「選手が移籍するのは勝手だけど,主力選手だけ引き抜くのはアカンやろ」とドン引きし,俺は巨人ファンなので巨人を応援,嫁も巨人応援で他は傍観という具合で船内の雰囲気は綺麗に分かれた。
試合が動いたのは船が淡路島を過ぎたのとほぼ同時の5回表ノーアウト三塁,田口選手と共にトレードされて来て、前年にアメリカへ飛び立った岡本選手に成り代わった元侍JAPAN村上選手の打席でフルカウントからのツーランホームランで巨人が先制、その裏に連打を浴びた後に甲斐捕手の3点タイムリーで逆転,その後は両者無得点でホークス有利の展開の展開が続いたが,9回の表に連打で巨人有利になると坂本選手のスリーランホームランで逆転すると,その裏に中川投手が三者凡退に打ち取り、そのまま巨人一点リードで試合終了。
そして,俺達は船内に2ヶ所ある飲酒可能なラウンジのうち西洋酒専門の方へ行きスミノフという度数の強いウオッカベースの割には飲み易いお酒をロックにして乾杯すると,嫁が「勝利の美酒って美味しい」と言って呑みまくり、2人で計7本のボトルを空けた。
2人ともデッキで海風に当たって酔いが覚めた頃,頭上の橋の向こうに尾道の街が見えている。
その後は同期達とデッキの喫煙ブースで少しメンソール系の煙草を吸いながら男3人で談笑していると進行方向左に宮島の,右奥に岩国市街の夜景が見えて来たので明日に備えて就寝とのことで散会する。
憧れの地,九州はもう少しだ。

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Trans Far East Travelogue76

結局撮影が終わった後は疲れて爆睡し,午後1時頃に来たネットニュースのプロ野球トレード速報を見て驚き,知らぬ間に眠気も吹き飛んだ。
嫁は既に起きていて、俺が起きたのに気付いて「昨日はお疲れ様。疲れてない?」と気遣ってくれたので「この位平気さ。色々あったけど、生涯バッテリーなんだから支え合わないとな。そっちこそ昨日はお疲れ様。そっちこそ体は大丈夫か?」と返すと「博多着くまで船で休んでれば大丈夫よ。明日は期待してや」と言って笑う。
すると,暫くして誰かが部屋の戸をノックする音が聞こえる。
廊下に出てみると北海道唯一の支社がある釧路に転勤した筈の同期が菓子折を持って立っていたので訳を聞くと,彼の弟さんも日本海周りの別働隊の予備の運転手として件の車に乗っていたが,同期が松江で皆と会った後皆境港から船に乗ると勘違いして,仮眠していた長岡まで運転してくれたあの運転手以外の全員で大酒飲んでしまった挙句自身は1人で先に北海道へ帰ってしまい,皆は東京まで行かなくてはならないのに代行が米子までで米子から新潟県まで1人で運転させてしまった上に,長岡から土地勘のない俺の嫁に運転させてしまったことに対する謝罪と,その嫁のサポートに回った俺への感謝とのことだった。
そこで,戒律で飲酒ができない代わりに喫煙を嗜好として好む人が多いムスリムが多数派を占めるクウェート在住経験の長い彼なら喜ぶと思い,場所を喫煙ブースのある2階デッキに移して男2人色々話し込み,結局部屋に戻ったのは日没ごろとなった。
船は瀬戸内海へと入った為,韓国勤務経験者の多くは西海(黄海)や釜山周辺を思い出し,この後寄港する韓国での思い出話に花を咲かせている。