Modern ARTists:魔法少女彩能媛 その③
吹雪の結界の中、【雪城】を操る魔法少女、チヒロは雪の中に息を潜めていた。
(……あの“カミラ”って怪人……『上位怪人』だ。しかも、マズいな……魔法が『喰われる』)
彼女のすぐ横を、カミラが通り抜ける。カミラが彼女に気付くことは無かったが、チヒロは慌てて距離を取る。
(あいつに触れると、魔法が吸収される。私は殴り合いは下手だし……となると、背後から奇襲とか?)
ふと、チヒロの感覚が結界への何者かの侵入を感知した。
(……誰だ?)
カミラもまた、その気配に気付いたようで、気配のする方に向けて飛んでいく。
気配の正体が目視可能なほどに接近したところで、カミラはニタリと微笑み、その相手に声を掛けた。
「あぁー、ひさしぶりぃ」
「あっ、怪人! いた!」
「カミラだよぉ」
「えっ、あっ、私はヒトエっていいます」
「よろしくねぇ」
「あっはい……」
ヒトエが答えるより早く、カミラは接敵し、右手の爪を振るう。ヒトエは積雪に足を取られながらも、転がるようにして回避した。
「危ないでしょぉ!?」
カミラは悲鳴をあげるヒトエを見て、腹を抱えてきゃっきゃと笑う。
「すごぉ……よけるじゃん」
「そりゃ避けるでしょ……」
再びカミラが襲い掛かる。防御しようと双剣を構えたヒトエを、魔法によって気配を消していたチヒロが背後から抱きかかえ、そのまま倒れ込むように姿を消した。