表示件数
0

Modern ARTists:威霊遣彩能媛 キャラクター紹介

・亀戸ヒトエ
初めて怪人を倒しました。初めて倒した怪人が上位怪人という魔法少女はそこまで多くは無い。全体の3割弱くらい。

・カミラ
前のエピソードを含めてヒトエの名前を50回以上も呼んでいた。【ロスト・ファンタジア】の上位怪人。大好きなお友達に直接手を下してもらえて幸せでした。最終的に魔力に分解されてヒトエに吸収されたので【ロスト・ファンタジア】史上でもトップクラスに最高の上がりです。

・望月エイリ
年齢:13  身長:152㎝
中学2年生の魔法少女。ヒトエさんが仲間になるまでは《慈雲》で一番の後輩だったので、初めての後輩にかっこつけたくて頑張りました。
魔法名:【玉桜楼】
九字印によって5体の使役存在を召喚する。完成度によって使役存在の強度は変化する。
奥義名:〈新形三十六怪撰〉
九字印によって、36体の使役存在のうち1体を選択して召喚する。選択した怪異が必ずしも召喚されるわけでは無く、1体1体に番号が振られており、印の完成度が低いほど指定した番号から離れた怪異が現れる。

・“閲覧者”アラン・スミシー
外見性別:男  外見年齢:25歳  身長:174㎝
黒いロングコートを羽織った痩身の男性。対象の『人生の記録』を本の形に具象化し、閲覧する能力を有する。この本は700頁程度の厚みに見えるが。半分ほどから先のページをめくっても、残りページ数が減っていくことは無く、無限にページが続く。後半のページを破り取ることで、このページの追加は起こらなくなり、「記録」が最後のページに到達すると同時に、対象は死亡する。アランがこの攻撃を人類に対して使用することは無い。
また、空白のページに自信の血液で文章を書き込むことで、「記録」がそのページに到達した際に文章の内容が具現化する。1度だけ魔法少女の命を救うためにこの能力を使ったことがある。
怪人たちの敵である魔法少女のことは嫌いだが、同時に怪人たちを倒してくれる存在でもあるので、全力で妨害しつつも怪人との戦闘以外で魔法少女が減らないように気遣ってもいる。人間の道徳観で考えてはいけない存在。
ちなみに主な役職は参謀補助と陣頭指揮及び現場補助。雑に言うと雑用係。ッ負担の微妙に大きな部分を好き好んでやってくれる奇人。

0

Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑬

「その幹部サマが何の用?」
ヒトエを庇うように前進し、警戒心を露わにしてエイリが尋ねる。
「あー? 別に大したことじゃねェよ。カミラを終わらせてくれた奴に、感謝しとかねーとと思ってな。それだけだ」
「仲間を殺されて……感謝? 何その歪んだ価値観」
「ククッ、歪んでる、ねェ……。お前ら人間の価値観で、“怪人”を量るなよ」
エイリはヒトエを、目の前の男から引き離すように後方へ押した。
「後輩ちゃん、あんな奴の言うこと聞いちゃだめ! 頭がおかしくなっちゃうよ!」
「テメェ、俺を何だと思ってやがる」
「不審者!」
「おっと言い返せねェ。まァいいや。用事は済ませたし。じゃーな、魔法少女ども。精々うちの怪人どものために命張ってくれ」
振り返って歩き出し、アラン・スミシーはふと足を止めた。
「あー、そうそう。お前らと割とご近所を守ってる《アイオライト》って魔法少女ユニット、知ってるか?」
アラン・スミシーの問いかけに、エイリは恐る恐る頷く。
「そ、それが何?」
「最近あのユニット、3名中2名が戦闘不能になって壊滅状態になったよな。悲しいよなァ……」
「……何が言いたいの?」
エイリは悪寒を感じながらも問い返す。
「あれを壊滅させたの、俺。まぁ半分事故だけど」
その言葉に、エイリの顔色が青くなる、
「なんっ……なんで、そんなことを私たちに……?」
「あー? ただの自慢。ついでに、一応敵の魔法少女どもをビビらせられりゃ儲けものだと思ってな。んじゃ、サラバダ」
アラン・スミシーは包帯を巻かれた右手を振りながら歩き去っていった。
「エイリさん? さっきの話って……」
「後輩ちゃんは気にしちゃ駄目! ほら、もう暗くなってきたし帰るよ!」
エイリに背中を押されながら、ヒトエは教室へと引き返した。

0

Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑫

「……カミラ?」
カミラの身体が、末端から少しずつ細かな粒子に分解され、宙に溶けていく。
「…………そっか。カミラ、おやすみ」
カミラの亡骸を強く抱きしめると、魔力に分解され崩壊したカミラの肉体は、ヒトエの傷へと吸い込まれ、損傷を補うように埋めていった。
「…………カミラ?」
虚空に呼びかけるが、答えは返ってこなかった。呆然としながらも立ち上がったヒトエに、エイリが駆け寄る。
「後輩ちゃん! 大丈夫⁉」
変身を解除し、ヒトエは答える。
「あ、エイリさん。大丈夫です。傷はカミラが埋めてくれたので……」
「そ、そうなの? 良かったぁ……本当、ドキドキしたよ」
溜め息を吐き、エイリも変身を解除した。
「……ハラハラではなく?」
「ん-……そうかも? でも、なんで治してくれたんだろうね? というか、治せるんだね」
「みたいですね……え、怪人ってそういうものじゃなかったんですか?」
「私の経験の限りでは、殺し合った相手を治癒してくれる怪人は知らないかなぁ……」
不意に、2人の背後に引きずるような足音が響いた。2人が振り向くと、黒いロングコートを身に纏った長身の男が立っていた。
「よォ、魔法少女ども。カミラが世話になったな」
男の言葉に、ヒトエは眉を顰める。
「カミラの……もしかして、【ロスト・ファンタジア】の?」
「正解。上級幹部“アラン・スミシー”。よろしく」
「えっあっはい」

0

Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑪

カミラの爪がヒトエの心臓を捉え、その表面をなぞる。
「ヒトエ、どきどきしてるね?」
「……そりゃ、生きてるもの」
ヒトエの答えに満足げに頷き、カミラは掌に湛えたヒトエの吐血を自身の頬に塗り付けた。
「みて? ヒトエとおそろい」
(見てる余裕なんて無いよ……! うぅ、背中が痛い……!)
互いに貫いた傷を抉り合い、止め処ない出血が2人の周囲に赤黒い水溜りを形成する。
継続的なダメージに、ヒトエの顔色は青褪めていき、衰弱から呼吸が荒くなっていく。
「……ヒトエ? もうだめ?」
「っ……カミラこそ。手が止まってるよ?」
「えへへ、ばれちゃった」
カミラの体重が、だんだんとヒトエの身体に預けられていく。
「ヒトエぇ……」
「……何? カミラ」
「ヒトエは、たのしかった?」
「…………うん。カミラは?」
「とってもたのしかった!」
「……そっか」
カミラの身体は完全に脱力しきり、また、ヒトエもほぼ力尽きていたことで、2人は互いを支え合うように抱き合っていた。
「…………ありがと、ヒトエ」
「カミラ……?」
ヒトエの問いかけに、カミラは答えない。ヒトエが覗き込むと、カミラは安らかな微笑を浮かべたまま目を閉じていた。

0

Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑩

「っ…………エイリ、さん……」
助けを求める言葉を、ヒトエは寸前で飲み込む。歯を食いしばり、再び口を開いた。
「大丈夫、です」
「そ、そうなの……?」
不安げに見つめるエイリに頷き、ヒトエはカミラを片腕で抱きしめた。
「?」
首筋に噛みついたまま、カミラが反応する。
「カミラ、もう逃がさないから」
「にげないし、にがさないよ?」
きょとんとするカミラに、微笑みかける。
「……そうだね」
短く言い、ヒトエは剣を持ち上げた。その気配に、カミラの目が輝く。
「ヒトエ!」
「っ……!」
振り下ろした刃が、背中側からカミラの心臓を貫く。そのダメージで、カミラはごぼりと血を吐き出した。
「あっははは! まただぁ! ヒトエぇ、ヒトエぇ!」
涙を流しながら笑い、カミラもまた爪をヒトエの背中に突き立てる。
「にっ……!?」
「ふふっ、きょーそーだね? ねぇヒトエ……」
カミラが頬を寄せると、口の端に垂れた黒い血液が、ヒトエの顔を濡らした。
「わたしは、とってもたのしいよ……? ヒトエは、たのしい……?」
「うぅ……た、楽しくなんか……」
カミラの顔が悲し気に歪む。
「……でも、私は真剣だから。だから……」
ヒトエの言葉に、カミラの手にも力が入る。ヒトエの口から赤い液体が垂れ、カミラはそれを優しく拭い取った。
「それじゃあ、はやく、ね?」

0

Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑨

「う…………ヒトエぇ…………ヒトエが、いい、のに……」
涙の滲む目で、カミラはヒトエを見つめる。
「ヒトエぇ……きて?」
「っ……カミラ……!」
ヒトエは髑髏から双剣を受け取り、〈髑髏〉を消滅させる。
「ヒトエぇ……! おいで……?」
カミラが弱々しく手を伸ばす。
「…………うん」
最早まともに動けない状態のカミラを前に、ヒトエは意を決して剣を振り上げた。振り下ろそうとする刹那、人型の存在を直接害することへの躊躇と同時に、微かな雑念が頭をよぎる。
(前に戦った時……カミラの心臓を貫いたはずなのに、カミラは死ななかったし、たったの一週間で治癒してきた。あれはなんで? 治した? どうやって? 魔力を吸っていたから? それとも、カミラ自身の性質? ハイジャックさんが何かをした? それとも……)
その時。
「ヒトエぇ、ありがと」
カミラの尾が手首に巻き付き、身体を引き上げてそのままヒトエに手足を固く絡めた。
「カミラっ……⁉」
「ヒトエ、だいすき」
カミラは耳元で囁き、ヒトエの首筋に牙を突き立てた。瞬間、ヒトエの体内から魔力が一気に流れ出す。
「くっ……⁉」
突然の事態に耐え切れず、ヒトエは膝をつく。
「後輩ちゃん!」
“滝姫”を差し向けようとしたエイリだったが、カミラはぴったりとヒトエに絡みついており、攻撃の隙が無い。

0

Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑧

半人半蛇の怪異“清姫”の『速度』は、尾の末端を『起点』とする。そこから関節の一つ一つを通り抜ける毎に増強され、人身の脊椎を通過して更に威力は増大する。最終的に合計10m近くの全身が完全に伸長し、『速度』と『威力』を最大限に乗せた突進は、召喚時の『クリティカル』による出力強化が合わさることで、最高速度は音速の5倍超、威力にしておよそTNT換算600t分に届くほどの破壊力を発揮し得る。更に“清姫”の特異性によって、その絶大な破壊力と速度によって発生する余波は周囲に影響する事無く、対象ただ一点にのみ作用する。
「かっ…………けほっ、ぅ、ぁぇ……? あ、ぅうぁ……?」
直撃の瞬間、清姫の接近に直前で気付いたカミラは、魔力の放出を盾にすることでダメージの軽減を試みていた。しかし、清姫の与える破壊力を耐えきることはできず、蓄積した魔力の全てを放出してようやく、致命傷程度にまで威力を減衰させたのだった。
「いぁ……ぃ……ぇ? あ、ぅぅ……ぉえ……?」
呼吸もままならず、痛覚反応も追いつかないまま、カミラは唯一自由の利く目だけを動かして、ヒトエを探し求めていた。
「ぃ……おぇぇ……? や……やあぁ…………なん、ぁぅ……?」
ヒトエは双剣を握った〈髑髏〉を盾に、慎重にカミラに接近する。
「どうだ! 私の“清姫”は! 完璧に印を組めたから、完全に物質化して吸えないでしょ!」
清姫を連れて近付くエイリには目もくれず、カミラは地面を這いずってヒトエに向かって行った。

0

Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑦

カミラとヒトエの脇に、骨を思わせる甲冑を纏った鎧武者〈髑髏〉が現れ、2人を見下ろしていた。
「……ヒトエ? これ、ヒトエの?」
「た、多分……?」
カミラが髑髏の足首に手を伸ばす。
(っ、マズい! 避けて!)
カミラの手が触れる直前、髑髏は大きく飛び退いてその手を逃れた。
「? よけたの?」
ヒトエも転がるようにカミラから離れ、髑髏と共にカミラを挟む位置に陣取る。
(私の魔法で生み出したものだから、何となく分かる……。〈髑髏〉はまだ、私の鎧みたいに完全に固まってるわけじゃない。多分、カミラに掴まったら吸収される)
ヒトエは双剣を再び生成し、片方をカミラに向けて投擲した。カミラが身体を逸らして回避した剣を、髑髏がキャッチする。
(これで、直接触れずに攻撃できる!)
「〈髑髏〉!」
ヒトエの号令で、髑髏が剣を構えて突撃する。ヒトエも同時にカミラに斬り付けるが、カミラはヒトエに向かって飛行し、背後に回り込んで髑髏をやり過ごそうとする。
「っ……そぉー……れっ!」
髑髏が深く前傾し、その背中の上を転がるようにして、ヒトエと髑髏はすれ違う。そのまま態勢を直し、髑髏がカミラに斬りかかった。
「〈髑髏〉!」
カミラが斬撃を回避した瞬間、髑髏はヒトエが投擲したもう1本の剣を後ろ手で受け止め、立て続けに二撃目を放った。カミラは後方に飛び上がって回避したが、刃先が翼を浅く切り裂き、黒い血液が噴き出す。
「んっ……! ヒ、トエぇ……! またとどいたぁ……!」
痛みに顔を歪めながらも、カミラは幸せそうに笑う。
翼を羽ばたかせ、身を翻して髑髏を躱し、ヒトエに飛び掛かる。その時、カミラを横合いから“清姫”の巨体が轢き飛ばした。

0

Modern ARTists:威霊遣彩能媛 その⑥ Side:玉桜楼

ヒトエがカミラと交戦している間、エイリは少し離れた場所で瞑目し、意識を集中させていた。
「ふぅー……よし」
深呼吸し、目を開く。
「奥義、〈新形三十六怪撰〉。第十一怪、“清姫”」
エイリの魔法【玉桜楼】は本来、九字を切ることにより『5体』の使役存在を召喚するものであり、使役存在の強度は九字切りの完成度に比例する。
対して奥義〈新形三十六怪撰〉は、従来の数のアドバンテージを捨てることと引き換えに、36種の強力な使役存在のうち任意の1体を選択し、召喚できる。
当然ながら九字切りの完成度は術の行使に影響し、一つは使役存在の強度。そしてもう一つは、『実際に召喚される使役存在の種別』。印の完成度が下がるほど、実際に召喚しようとしたものからかけ離れた使役存在が出現する性質を有しているのだ。
「臨」 独鈷印。
「兵」 大金剛輪印。
「闘」 外獅子印。
「者」 内獅子印。
「皆」 外縛印。
「陣」 内縛印。
「列」 智拳印。
「在」 日輪印。
「前」 宝瓶印。
その後、詠唱と同時に、一字毎に右手の刀印で横に、縦に、軌跡を織り重ねるように重ね、最後に右手を左手の中に収める。
これまでの戦いの中で何十、何百と重ねてきた動作であり、それ故にエイリは、その完成度を直感的に掴むことができるようになっていた。
(この感じ…………来た、“クリティカル”!)
戦闘の中での動作を要求される以上、完全な九字切りを成功させることはほぼ不可能に近い。ただ、今この瞬間、敵の注意は完全に前衛のヒトエ一人に集中しており、それ故に叩き出すことのできた『100点満点』。
彼女自身、仲間の庇護を受けた上で、数度しか実現できたことの無い最大威力で、使役存在が召喚される。
下半身を巨大な蛇のそれに置き換えた、和装の鬼女のような怪異“清姫”。エイリを囲うようにとぐろを巻き、鋭い牙の並ぶ口からは、深い淀を思わせる濃い水の香りと、香木が焼ける煙の香りが混ざったような息吹を吐き出している。