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Specter children:人形遣いと水潜り その㉕

「私の腕?」
蒼依は天邪鬼が逃げ出してから気を失うまでの経緯を、冰華に説明した。
「えっ頭大丈夫⁉」
「言い方ぁ」
「良いから! ぶつけたところ見せて!」
「別に……この程度よくあることだし……」
言いながら、蒼依は濡れた前髪を掻き上げる。彼女の前頭部、やや左寄りの場所には、浅く抉れたような傷が残っていた。
「結構ひどい怪我じゃん!」
「だからこの程度平気だって……」
「平気ではないよ⁉ きちんと手当てしよう⁉」
「分かったよ……取り敢えず、冰華ちゃん家に戻らせてもらっても良い?」
「もちろん! 手当もちゃんとしなきゃだね」
冰華は川の方を向き、大声で呼びかける。
「それじゃあみんなー、鬼の死骸の処理、お願いできるー?」
その問いには、多くの泡沫や飛沫が応えた。
「よし、これで後始末もオッケー!」
「ありがとう。あっそうだ、私も人形回収しなきゃ」
蒼依が川に向けて手招きすると、水中から大きく広がった網状の物体が持ち上がった。
「わぁっ、それも人形が変形したやつなの?」
「そうそう」
気絶する寸前、蒼依が“奇混人形”に授けた命令は、『下流方向100mまで移動した後、網状に再変形して川を塞ぐこと』。水流に巻き込まれるように逃亡していた天邪鬼は、その網目に絡まったために不運にも水上に顔を出すことができず、呼吸不能の状態で川に潜む河童たちの襲撃を受けて絶命したのだった。更に、“奇混人形”の網は蒼依の手を離れた『冰華の腕』もまた、網目に絡め取られ、河童が回収することを可能としていたのである。
「……いやぁ……しかしまぁ」
歩き出しながら、蒼依は大きく伸びをし、小さな欠伸をした。
「どしたの蒼依ちゃん」
「……疲れた」
「お疲れ様。帰ったらお風呂入って、ご飯食べて、しっかり寝ようね」

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 キャラクター③

アヴェス:ガッルス・ガッルス
モチーフ:セキショクヤケイ(Gallus gallus)
年齢:16歳  身長:170㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”のメンバー。トウゾクカモメ先輩より誕生日が4か月ほど遅い。仲間がいないと何もできないクソザコ。逆に言うと仲間がいるととても怖い。今回は残念ながら登場しませんでした。
レヴェリテルム:フェロクス・プエル(Ferox puer) 語義:野生児
説明:変形コンパウンドボウと蓋付矢筒。矢のストックは24本。一度に6本まで同時に矢を番えることが可能で、射出した矢は極細の導線で右手と繋がり、導線伝いに自由に操れる。複数本を同時に装填する際は、弦に専用装填補助具を取り付け、そこに矢を並べる必要があるので、連射は無理。一度射出してしまえば、いくらでも好き放題できるんだけどねぇ。

アヴェス:エクトピステス・ミグラトリウス
モチーフ:リョコウバト(Ectopistes migratorius)
年齢:7歳  身長:120㎝
所属カテルヴァ:迦陵頻伽(非公式)
説明:とある研究者の手によって密かに生み出された、本来禁じられているはずの『女性のアヴェス』。感情の不安定さを爆発力として発揮してくれることを期待されているようだが、教育不足のせいで随分と好き放題しているようで。ちなみに“迦陵頻伽”は彼女を生んだ研究者が便宜的に彼女に与えた所属先であり、彼女以外の構成員は存在しない。
レヴェリテルム:プリンセプス(Princeps) 語義:支配者
説明:大量のナノマシン。アリエヌスの体内に侵入し、操り人形のように支配する。最終的には侵入したナノマシンはアリエヌスを体内から破壊する。ちなみにナノマシンの総量は大体、大型アリエヌス10万体を同時に支配してもまだ余る程度。普段は周囲のありとあらゆる『隙間』に潜ませ、自らに追随させている。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 キャラクター②

アヴェス:ピトフーイ・ディクロス
モチーフ:ズグロモリモズ(Pitohui dichrous)
年齢:12歳  身長:152㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”の新入り。戦績は上々。最近の悩みは前歯が抜けてしまったこと。ご飯が食べにくい。大人になりたくないので、立派に戦って殉職したい。
レヴェリテルム:ソルス=ヴェネヌム(Solus venenum) 語義:唯一の毒
説明:口を開けた毒蛇を模した、全長3mほどの金属製の杖。首が自由に動き、顎も開閉する。内部に仕込まれた腐食液を毒牙部分を通して射出可能で、相手に食いつかせてから注入すれば確実にぶつけられる。何故か火炎放射も可能。舌下の穴からぶわって出る。特に意味も無く目も光る。思いの外やりたい放題。

アヴェス:ステルコラリウス・ポマリヌス
モチーフ:トウゾクカモメ(Stercorarius pomarinus)
年齢:16歳  身長:173㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”の副隊長。高校生なので結構忙しい。一番の年上なので何かと頼られがちだが、他人のサポートはかなりド下手クソ。1人で戦うか、周りが合わせてくれるのが一番やりやすい。
レヴェリテルム:ポラリス=カエルム(Polaris caelum) 語義:極地の空
説明:長さ150㎝程度の短槍と、縦横150㎝×45㎝程の大盾。大盾は浮遊させ、飛行ユニットとして利用可能。小型無誘導ミサイルも撃てる高性能大盾。短槍の方は馬上槍形態と大刀形態に変形可能。短槍形態は投擲、馬上槍形態は刺突、大刀形態は斬撃の威力をブースターユニットによって強化可能。更に、大刀形態の武器と大盾を変形合体させることで、大型戦斧にもなる。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 キャラクター①

アヴェス:カズアリウス・カズアリウス
モチーフ:ヒクイドリ(Casuarius casuarius)
年齢:15歳  身長:165㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”のリーダー。好戦的だがその暴力性はアリエヌスにしか向かないので意外と安全。ただ、戦闘時の様子が恐ろし過ぎるので、よそ様からは怖がられている。趣味は対戦型ゲーム。
レヴェリテルム:カルチトラーレ=ウングラ(Calcitrare ungula) 語義:蹴爪
説明:両脚の膝近くまでを覆う脚甲。爪先と踵部分にはブレードが、両足裏と脹脛にはブースターが仕込まれており、爆発的加速を乗せた蹴りでブレードを叩き込む。ブースターを利用することで、短距離の飛行も可能。ブレードを格納することで打撃武器として使ったり、ブースターの出力を射程武器(エネルギー砲)として利用することも可能。『足を覆っている』こと以外に欠点が無い。

アヴェス:サジタリウス・サルペンタリウス
モチーフ:ヘビクイワシ(Sagittarius serpentarius)
年齢:14歳  身長:158㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”の一員。密かな自慢は『両利きなこと』。どちらから攻められても同じように受け、押し返せる対応力の高さが売り。
レヴェリテルム:チェレリタス=フルグル(Celeritus fulgur) 語義:雷速
説明:一節辺り約1mある、大型三節棍。各節部分は鎖状に変形可能で、疑似的二刀武器や鎖付き武器としても扱える。また、各節は部分的に側面を刃状に変形させられる。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑩

「見えたぜェ、リーダー後輩。お前の上げた“狼煙”がよォ……」
粉塵の舞い上がる中から、刺々しい声が楽し気に響く。
「それで? コイツをブッ殺せば良いのか? 遅刻した分働くぜェ……!」
薙ぎ払いが粉塵を吹き飛ばす。高校制服姿のアヴェスが、大盾と大刀で武装して立っていた。
「よく来てくれたぜゾッさん。テストの出来はどうだった?」
「現文駄目だった!」
「ドンマイ! じゃあ頼む!」
「りょーかいィ」
“ゾッさん”と呼ばれたアヴェス、ステルコラリウス・ポマリヌスはレヴェリテルムを変形合体させ、一つの大型戦斧を完成させた。
「叩き斬れ……“Polaris caelum”!」
全長約3mもあるそれを大きく振りかぶり、大型アリエヌスの正中線に照準を定める。
「せェー…………のォッ!」
渾身の振り下ろしが炸裂する。その破壊力はアリエヌスが構えていた両腕を破壊し、剣圧の余波を体幹部にまで到達させ、その巨体を完全に両断した。
「ふゥー……大型アリエヌス何するものぞ。俺が本気出しゃぁこんなモンよ」
レヴェリテルム“ポラリス=カエルム”の合体機構を解除し、ポマリヌスは研究者とクミを睨みつけた。
「で? 何なのお前ら。マッドサイエンティスト?」
「似たようなものだね」
研究者の男が答える脇でクミが片手を振り上げると、大型アリエヌスの残骸から黒い霧が吹き出し、彼女の足下に吸い込まれて消えた。
「うおっ、何あれ」
「ゾッさん。あのおチビちゃん、アヴェスらしいぜ」
カズアリウスの言葉に、ポマリヌスはカズアリウスとクミを交互に見た。
「えっマジで? 女の子じゃん」
「あのマッドが作ったんだとよ」
「マぁジか。ガチマッドじゃん。通報したろ。……帰してくれるならの話だけどな」
ポマリヌスが短槍を握りしめ研究者の男を睨む。しかし、男はけろっとした表情でビデオカメラをしまい、アヴェス達を追い払うように手を振った。
「帰ってくれて構わないよ。君達には感謝しているんだ。恩には報いるのが信条でね。帰った後は好きに通報してくれて構わないよ。どちらにしろ、私の研究に大きな支障は無いからね。さぁ帰った帰った。良い日を過ごしておくれ」
研究者の男とクミが手を振って送り出す中、4人のアヴェスは釈然としない感情でエレベーターに乗り込んだのだった。