空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 その⑤
クミの案内で3人が辿り着いたのは、路地裏の隙間に隠れるように置かれた、地下入口だった。
「ここ」
クミに言われてカズアリウスがインターホンを探す。
「あいてる」
その言葉に、カズアリウスがノブに手を掛けると、扉はあっさりと開いた。屋内は何かの機械や骨董品が並んでおり、照明もついておらず陰鬱な空気を醸している。
「本当にここなのか? そもそも人住んでんのか?」
カズアリウスが呟きながら中に入ると、天井の方からスピーカー越しの音声が降ってきた。
『お客様かい?』
男声のようである。3人のアヴェスが突然の出来事に動揺していると、クミがサルペンタリウスの腕の中で声を上げた。
「んーん、お友達!」
彼女の答えに反応するように、暗い廊下の奥に小さく明かりが灯る。長方形のそれは、どうやらエレベーターのようであった。
『入って来てもらいなさい。』
それだけ言うと、ノイズが途切れ、スピーカーからの通信は終了したようだった。
クミがエレベーターを指差し、サルペンタリウスを見上げる。
「はやくー」
3人は顔を見合わせ、しばしの逡巡の後、意を決してエレベーターに進入した。
4人が入ると同時に扉が閉まり、エレベーターは自動で下降を開始する。
そして約1分後、エレベーターが重い金属音を立てて停止した。