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侍に勝った海の向こうの勇者たち〜感動をありがとう〜

舞台は2013年3月,東京。
この街の球場で,WBCという野球の国際大会が開催されていた。
日本代表に接戦で敗れ,敗者復活戦のキューバ代表にも大差で負けて準々決勝に出られず悔し涙を流して終わった強豪国があった。
その国の名は台湾,戦前に日本の影響下にあった頃に持ち込まれた野球という競技が今も大衆娯楽として浸透している島国だ。
あの悔しい負けから11年が経った2024年,まずはこの島の中心都市・台北でドラマが生まれた。
日本のプロ野球で最も歴史の長いチーム,東京の巨人と現地のプロチーム2球団が親善試合を組んだ。
結果は,巨人の1勝1分。
それまでは日本選手相手だとなかなか勝てなかった中0-0で引き分けるほど守備と投手が張り切って、実力を発揮して見せた。
これが台湾野球の世代交代が成功した瞬間だった。
そして,迎えたその年のシーズンオフ。
世界ランクのトップ12カ国の代表だけが参加できる国際大会,プレミア12の試合が台北で開催された。
そこで圧倒的な成績を残した台湾。
一方,その大会のもうひとつの会場であり,決勝の会場でもあるスタジアムに新監督の指導のもと急成長を遂げたチームの姿があった。
そのチームとは,他でもない侍JAPANこと日本。ベスト4の総当たり戦の結果で1位と2位の代表が決勝でも対戦するというルールにより,「因縁の対決」が決定的になった。
そう,日本と台湾の試合だった。
総当たり戦では日本に軍配が上がった。
そんな中,決勝では日本代表の戸郷選手がホームランを打たれて失点。
そして,台湾の鉄壁の守備に阻まれて一点も取れずに日本は敗れた。
この瞬間,悲願の初優勝という波が感動の涙となって台湾全土を覆った。
そして,1人の日本人野球ファンの青年も、かつて少年時代に初めて父親に連れられて見た野球の試合が奇しくも台湾代表がキューバ代表に大敗したあの国際試合だった為当時と重ねて成長した台湾の優勝を心から祝う歓喜の涙を流したのだ。

あの感動を,俺は忘れない。
多謝,台湾!
立派に成長してくれてありがとう!

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あなたも入る?ようこそいか教へ!続き3

第二章 イカの心得って?
そして、爆速で廊下を走り、なんとかホームルームに間に合い、1時間目を受け終わった二人であった。。。
休み時間______
「・・・それで、いか教って何をするの?」
「うむ、まずはいか教3つの心得を教えてやろう!」
「3つの心得?」
「うむ、まずは毎日イカを食べること!」
げっそんなぁあ。。。アレルギーになっちゃうよお
「そして!」
まだあるの?
「給食のときには必ずしもいかのおかわりを第一にすること!」
え〜まあ、いか、好きだからいいけどさあ。
「最後に!」
多くない?
「回転寿司ではイカのお寿司を6個は食べること!」
ええええええええ!
「ちなみにわしはイカしか食べんぞい。」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ?!狂ってるんじゃ。。。
「ま、そういうことで我が信者よ、よろしゅうな!ああ、あと日頃は信者を多くする活動を。。。なんちゃらかんちゃら」
ああもう、なにこれ。やっぱり変な人に出会っちゃったな。
「〜〜〜だから、良いか!」
私は耳にタコができるほどの説明にむしゃくしゃした勢いで、
「う〜んもう!はいはいわかりましたよぉ!信者になりますぅ!!」
と答えてしまった。あああああああああやってしまったー!私はうつ伏せ状態になった。こんなことしたら私の新しい第1歩を踏み外したことになるじゃないか!(失礼)もう、きっと雀は嬉しそな顔をしているんだ。。。そして私が顔を上げるとそこには。。。
「ヒックヒックぐすん。。。え〜んえ〜ん」
雀が泣いていた。は、はぁ?!な、ないてる?もしかして、泣かせちゃった?!
「ど、どうしたの?」
「だって、だって、断られるかと思ったんだもん。。。みんな、私が誘っても、断ってどこかに行っちゃうの。。。」
断れるようなことするなよ。。。そんな気持ちもありながらも私は優しく雀を撫でた私であった。続く。。。

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あなたも入る?ようこそいか教へ!

「もう、、、行くから。。。」
そう言って私は猛ダッシュ!こう見えて私足速いし。
「まて〜い!」
って!足はっや!はぁ、はぁ、ここまでくればもう大丈夫?ああ、ここに貼ってあるのは地獄の紙。その名も。。。「クラス表」ドーン!私はAクラスなのか、Bクラスなのか、はたまたCクラスなのか、ドキドキドキドキドキドキ。勇気を持ってその地獄の紙を見る。______
A!29番!すかさず次の番号の人を見る。まあ、それが私のいわゆるくせ。う〜んと。。。「大王雀」か。。。すずめ?キラキラネームやん。{ここで豆知識!出席番号は名字のあいうえお順だけでなく、名前のあいうえお順があるのだ!ほかにも、誕生日の順番もあるんだよ!(今学校は誕生日だね)}仲良くできなさそう。。。まあ、それはいいとして、そして特に知ってる人はいない!いじめっ子もいない!最高だああああああ!私は絶叫しそうになった。その時。。。
「まて〜い!」
そ、その声は!いかっこ〜?!(いかの信者と言ってきた子の略)
「はぁ、はぁ、お、追いついたぞぉ〜」
なんとも幼い声。ていうかあの子の名前知らないんだけど?高校生ならこのクラス表に載ってるはずよね。一応聞いておこう。
「あのぉそのなんていうかお名前をお伺いしても。。。」
「うむ、良かろう。わしは大きい王、雀と書いて、大王雀(するめ)じゃ!」
ふーん。。。って!さっきの。。。〜「大王雀」か。。。すずめ?キラキラネームやん。仲良くできなさそう。〜???????????!!!!!!!!!!!!ham?!ていうことは同じクラス?
ああ、なるほど、なるほどね〜あ、なるほどね〜(理解できず無理やり理解しようとする図)。へにょん(理解が追いつかなくて倒れる図)
「うわ!おぬし、大丈夫か?!よし、わしが運んでやろう!」
「だ、大丈夫ぇす〜一人で歩けまぁ〜す!私の名前は中村友奈でぇす」
「別に名前は聞いてないが。。。」
このとき、二人は思った。やばい、変な人と友だちになってしまった。と。
第二章に続く。。。

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あなたも入る?ようこそいか教へ!

第一章 あなたはだれ?大王雀!
新学期。それは始まりの季節。中村友奈は新たな一歩を踏み出そうとしていt
「そこの方!」
うああ。びっくりしたあ。急に何だ?誰かにこんな大声で呼びかけるなんて。。。うん、変人だな。変人がここに1名いるだけ。よし、気にせず行k
「お〜いあなたですよあなた!」
え、私?私、そんな変なことしたっけ?聞き覚えのない声だし。。もしかして、私、変な人に目つけられちゃった〜?!うん、きっと気のせいだ、気のせい。私には言ってないと思うし。
「トントン!ちょっと、あなた、なぁ〜に無視してるんですかぁ〜?」
か、肩を叩かれた。。。こ、これはもう。。。た、助けてぇ〜(声かけられてるだけ)でも、新学期だ。ここで逃げてはいけない!うん、勇気を持って振り向いてみよう。新たな新学期と思って!そして、私は振り返った。
「は、はいぃ〜?」
うん、我ながら最悪の始まりだ。こんな最悪な声が出るなんて。。また逃げてると、おとなしいと思われる。噂されて。。。ああ、また_____
「あいつ暗すぎw」「それな?」「この前、発表でまぐれであたったとき緊張しすぎて「ああっああっ」しか言えなくてw」「いじめても何にも言わなそうw」「いっそやってみる? w」「やろw」ああ、ああ、ああ!やめて、やめて。。。
「何をボーっとしているんですか我が信者よ。」
はあっ?し、信者?!そう思いながらも私は緊張してその人の顔を見られない。
「ど、どういうことですか?」
そう言って少し顔を上げる。
って!ショタやないか〜い!え、なんでここにいるの?ここ高校だよ?
「ま、迷子かな〜?」
「わし、高校生だもん。」
そりゃそーだ。ってえ?!ちびすぎん?
「そんなことより!我が信者よ!」
だから信者って何?
「わからないのか?わらわにこえをかけられたということはいか教の信者ということだぞ!」
しらないよ!そんなルール!ていうかいか教って何?もう、かたっぱしから変な人!(背が小さすぎるし!)
「もう、、、行くから。。。」
そう言って私は猛ダッシュ!こう見えて私足速いし。
「まて〜い!」
って!足はっや!はぁ、はぁ、ここまでくればもう大丈夫?
どうなっちゃうんだ〜?!
続く。。。

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フリー世界観:チェンジリング総伐令②

・魔術師(メイガス)
”バックファイア”のうち、魔術を得意とする者。対幻想戦闘においては重要戦力であると同時に、超科学的現象である魔術の研究のためにも協力している。

・幻想人(ファントム)
”バックファイア”のうち、『変身魔術』を得意とし、幻想生物の機能や戦術を組み込んで戦う者。対幻想戦闘においては秘密兵器ともいえる。
『姿を変える魔術』は、肉体への負荷やアイデンティティの崩壊のリスクがあり、相応の資質や経験が無ければ使いこなせない。里親である幻想存在たちも、愛する継子である人間に無理をさせたがらない傾向にある。だからこそ、”幻想人”として人類社会に帰還できたバックファイアは『変身』を完璧に操れる猛者のみであり、彼らの使う『変身』に”リスク”というものは存在しない。

・破妖軍(アンチ・スピリット・フォース)
通称『ASF』。対幻想存在戦闘を専任する軍隊。実戦部隊は通常兵器によって戦う『科学軍』と”バックファイア”を中心に構成された『精霊軍』で構成される。
基本的には科学軍が銃火器類や戦車などの圧倒的殲滅力をフル活用して戦い、強力な魔術を使う個体に対してのみ精霊軍が出動する。
幻想存在たちもまた、生命と肉体を持つ『生物』である。人類が『殺傷』のために発明改良を重ねてきた”武器・兵器”という存在は、幻想にさえ手が届き得る領域に達していたのである。

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フリー世界観:チェンジリング総伐令①

勝手に使って良い世界観を用意したので勝手に使ってどうぞ。

・極めて簡単なあらすじ
物語の舞台は現代。
人類は『チェンジリング(取り換え子)』の脅威に対抗するため、「チェンジリング総伐令」を発令し、叡智の結晶である武力と、チェンジリングから生還した子供たち”バックファイア”の力を集結した『破妖軍』を結成し、世界全勢力を挙げて幻想存在の討伐を開始した。

・チェンジリング総伐令
人間の子供を妖精と入れ替える”チェンジリング”に対抗するための法令。
人民が一体となってチェンジリング及び幻想生物の討伐に尽力する指針を示したもの。

・”チェンジリング”
「取り換え子」とも呼ばれる、世界各地で確認される現象。人間の赤子が妖精の子供に取り換えられる。
取り換えられた人間の子供は幻想存在たちの集会へ連れ去られ、その子を気に入った幻想存在が引き取って育てる。

・”バックファイア”
”チェンジリング”によって取り換えられた人間の子供のうち、人類社会に帰還した者を指す。多くの子供は里親となった幻想存在から「魔術」を教わり、幻想の力を得ている。その力を利用して『チェンジリング総伐令』に協力する。

・魔術
主に幻想存在が『魔力』と呼ばれる未知のエネルギーを使って行う魔法的技術。
幻想存在はこれを人間の子供に説明するに当たり、以下のように語る。
『たとえば、人魚が水中で呼吸をする。たとえば、クモが糸を張る。それは”身体機能”であって君たち人間には到底再現不可能な領域だ。しかし”魔術”は飽くまで「技術」。生命と知性ある我々にできて、君にできない道理は無い。』

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百舌鳥と愉快な仲間たち_1〜6まとめ

情緒不安定でカテルヴァの所属経験がない14歳のアヴェス、ラニウス ブケファルス。
ある日突然、彼の家に三人の所謂問題児のアヴェスが訪ねてくる。凄まじい癖毛と乱暴な口調が特徴のストルティオ カメルス、小柄で愛想の良いアエギタロス カウダトゥス、おどおどして押しに弱いヴルトゥル グリュフス。突然同室となった個性的な同期に困惑しつつ、ブケファルスは彼らと交流を深めていく。
ブケファルスと問題児三人が同室になってから二週間経った日、四人で出かけている最中に大型のアリエヌスが襲来する。ブケファルスとグリュフスはアリエヌスから街を守り、カメルスとカウダトゥスは『先輩』と呼ばれる年上のアヴェス、パラブーテオ ユニシンクトゥスに救援を求める。

いつも読んでくださったり、反応をくださっている方々、ありがとうございます。
高校生活が忙しく投稿頻度が減り、今週からテスト期間にはいるためまた投稿頻度が減るので今回は続きではなくまとめを書いてみました。つたない文章、意外性のない展開になりがちなのですがこれからも執筆は続けようと思います。
最近気温が低く、インフルエンザも流行っているので体調にはお気をつけて。

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉕

「私の腕?」
蒼依は天邪鬼が逃げ出してから気を失うまでの経緯を、冰華に説明した。
「えっ頭大丈夫⁉」
「言い方ぁ」
「良いから! ぶつけたところ見せて!」
「別に……この程度よくあることだし……」
言いながら、蒼依は濡れた前髪を掻き上げる。彼女の前頭部、やや左寄りの場所には、浅く抉れたような傷が残っていた。
「結構ひどい怪我じゃん!」
「だからこの程度平気だって……」
「平気ではないよ⁉ きちんと手当てしよう⁉」
「分かったよ……取り敢えず、冰華ちゃん家に戻らせてもらっても良い?」
「もちろん! 手当もちゃんとしなきゃだね」
冰華は川の方を向き、大声で呼びかける。
「それじゃあみんなー、鬼の死骸の処理、お願いできるー?」
その問いには、多くの泡沫や飛沫が応えた。
「よし、これで後始末もオッケー!」
「ありがとう。あっそうだ、私も人形回収しなきゃ」
蒼依が川に向けて手招きすると、水中から大きく広がった網状の物体が持ち上がった。
「わぁっ、それも人形が変形したやつなの?」
「そうそう」
気絶する寸前、蒼依が“奇混人形”に授けた命令は、『下流方向100mまで移動した後、網状に再変形して川を塞ぐこと』。水流に巻き込まれるように逃亡していた天邪鬼は、その網目に絡まったために不運にも水上に顔を出すことができず、呼吸不能の状態で川に潜む河童たちの襲撃を受けて絶命したのだった。更に、“奇混人形”の網は蒼依の手を離れた『冰華の腕』もまた、網目に絡め取られ、河童が回収することを可能としていたのである。
「……いやぁ……しかしまぁ」
歩き出しながら、蒼依は大きく伸びをし、小さな欠伸をした。
「どしたの蒼依ちゃん」
「……疲れた」
「お疲れ様。帰ったらお風呂入って、ご飯食べて、しっかり寝ようね」

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉔

瞼の向こうに光を感じて、蒼依は意識を取り戻した。
「…………? 腹が、重い……?」
蒼依の視界に最初に入ったのは、彼女の腹部を膝で押している冰華の姿だった。彼女の両腕は、未だその肩から抜けたままである。
「……冰華ちゃん、何やってんの?」
「あ、蒼依ちゃん起きた。いやぁ、追いかけてきたら蒼依ちゃんが川に下半身突っ込んで動かなくなってたから、溺れたのかと思って水吐き出させてたの」
「もう平気だから退いて?」
「うん」
冰華が身体の上から退いたことで、蒼依も身体を起こす。周囲を見回すと、空は既に白み始めていた。
「もう朝か……」
「うん。……あ、あの鬼は⁉」
忙しなく身体を揺らしながら尋ねる冰華に、蒼依は立ち上がりながら答える。
「見に行こうか」

下流に向けて並んで歩いていると、川の途中に不自然に木片や木の葉などの浮遊物が滞留している地点があった。
「なるほど……あの辺か」
二人がその場所に近づくと、水面に小さなあぶくが浮かび、1体の河童が姿を現した。その手には、流されたはずの『冰華の腕』を掲げている。
「あっ、私の腕! ありがとー」
冰華が腕を肩に嵌め直している横で、蒼依は腰ほどまで川に踏み入り、水中を手探りし始めた。
「蒼依ちゃーん? 何してるのー?」
「んー……あ、いた」
蒼依が再び川から上がる。その手には、ぐったりと動かない天邪鬼を引きずっていた。
「死んでる?」
「脈は無かったよ。溺死かな。あるいは冰華ちゃんの腕が偶然掠ったか」

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉓

天邪鬼を追って木立を抜けた先は、河原だった。
(この河原……冰華ちゃんが河童たちと会ってたあの川か! 気付かなかった……)
「……そんなことより!」
蒼依が下流方向に目をやると、天邪鬼の長い腕が浮き沈みしながら流されていくのが確認された。
(野郎……流れを使って逃げる気か!)
蒼依は四足獣化した“奇混人形”から降り、天邪鬼の流される方向に向けて駆け出した。更に手の中で“奇混人形”を短槍の形状に変化させ、投擲できるように構える。
「……いや。どうせなら」
蒼依は大きく跳躍し、そのまま川に飛び込んだ。同時に“奇混人形”をスイムフィンのような形状に変形させて自らの両脚に装着し、水を蹴って水中から追跡を再開した。
ただ藻掻き続けるだけの天邪鬼と、明確な意思を持って泳ぐ蒼依の距離は少しずつ縮んでいく。両者の距離が5mを切ったその時だった。
「ぐっ……ぁっ……⁉」
天邪鬼が水中で振り回していた右腕が、川辺に転がっていた倒木にぶつかった。更にその衝撃が倒木を動かし、水中へと転げ入ったうえ、タイミングよく蒼依に直撃したのだ。
そのダメージで蒼依は肺の中に残っていた空気をすべて吐き出してしまい、同時に緩んだ掌から『冰華の腕』がすり抜け、水流に浚われてしまった。
(クソッ、しくじった……武器が……冰華ちゃんの腕が……)
衝突の勢いで回転しながら、蒼依は天邪鬼と『腕』が流されていった方向を見やる。
(クソ……頭痛い……変に打ったか……? ……これ、私は追えないな)
蒼依は最後の力を振り絞って水面に浮かび上がり、どうにか息を吸い込む。そして――
「っ……冰華ちゃんの腕が持ってかれたァッ!」
掠れた声で叫び、態勢を崩して再び水底に沈んだ。
(もう駄目だ……『私には』追えない…………だから)
蒼依は薄れゆく意識の中、“奇混人形”を変形させ、魚のような形状で下流方向に送り出す。
(『友達』、なんでしょ……? 何とかしてよ、“河童”ども)
“奇混人形”の行動プログラムを設定し終えた蒼依は、酸欠によって完全に意識を喪失した。

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉒

天邪鬼の爪に切り裂かれるより早く、冰華は腕を片側に伸ばして手近の木の幹を掴み、身体を引き寄せるように回避した。更にその慣性を利用して腕を完全に肩から引き抜き、素早く距離を取る。
「蒼依ちゃん、残しといたから!」
「助かる!」
蒼依は“奇混人形”を走らせ木の枝に掴まっていた『冰華の腕』を掴んだ。そのまま掌を天邪鬼に向けるように『腕』を突き出し、魂の奪取を狙う。天邪鬼は大きく身体を反らせて回避し、バランスを崩して倒れかけたところを尻尾で身体を支えることで持ち堪えた。
天邪鬼が身体を起こした次の瞬間、蒼依が突撃を仕掛けた。跳躍し、天邪鬼の角を掴み膝蹴りを喰らわせようとする。しかし、天邪鬼は上体を伏せるようにして躱し、尖った角の先端が蒼依の左上腕を掠める。
「っ……」
蒼依は左腕を背中に庇うように体を捩じりながら、天邪鬼の左肩を蹴って距離を取った。折れた腕に衝撃を受けたことで、天邪鬼は奇声をあげて右手を地面に付き、両脚と右手の合計三足で獣のように木々の間に逃げ込んだ。その退路を塞ごうと“奇混人形”が『冰華の腕』を叩きつけるが、天邪鬼は地面すれすれにまで身体を這わせ、その指先を回避する。
「逃げんなクソ鬼がぁっ!」
そう叫び、蒼依は即座に追跡を開始した。“奇混人形”が隣を並走しながら冰華の腕を蒼依に投げ渡し、自らは大型四足獣のような形状に変形する。蒼依はその背に飛び乗り、身を伏せながら後を追った。変形した人形の四肢の先端に生えた鉤爪が地面を掴み、みるみるうちに天邪鬼との距離を詰めていく。
(届く……ッ!)
至近距離まで追い縋り、蒼依は『冰華の腕』を振り抜いた。しかし、直撃の寸前で天邪鬼はバランスを崩し、地面を転げることで蒼依の攻撃は外れてしまった。
天邪鬼は慣性に従い、地面を転げながら前方へ前方へと進み続ける。
張り出した木の根に乗り上げたことで跳ね上げられた天邪鬼の身体は宙を舞い、木々の向こうで『水音』を立てながら落下した。

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Specter children:人形遣いと水潜り その㉑

全身を泥と出血に汚した鬼が、芋虫のように五体を蠢かせ、ふらふらと立ち上がる。
『おおおォォォ……グッ、うウゥゥゥ……! 逃げ……なくては……! 体力を……回復サセなくては……!』
呻き声をあげる鬼の両腕は力なく垂れ下がり、全身の傷からは止め処なく血液が噴き出している。
(……右腕は、ピクピク動いてる。多分まだ動かせるな。左腕は完全にイってる……それなら……)
刀剣を握り締め、蒼依は鬼に向けて駆け出した。刃の間合いに入る直前、鬼の右腕側――蒼依から見て左側に大きく踏み込み、鬼の顔が彼女に向いたのを確認したのと同時に次の一歩で大きく鬼の左手側――蒼依から見て右側に飛び込んだ。フェイントである。
(いける……!)
しかし刃が脇腹を捉える寸前、鬼は上体を前屈させ、『折れている左腕で』殴りつけたのだ。
「ぐッ……!」
蒼依は刀剣型だった“奇混人形”を人型に再変形させて、身体を支えさせる。
「……折れてたろ」
『ハアアァァァ? 一向に動かせるンダガァ?』
不自然な方向に曲がり青紫色に鬱血した左腕を、胴体を揺らす慣性によって振り回しながら、鬼は主張する。
「天邪鬼がよぉ……」
蒼依の呟きに、鬼の動きが止まった。
「……? ……おい、まさか」
『違ェぞ! 誰が天邪鬼なモンカ!』
「お前……鬼は鬼でも“天邪鬼”かよォ!」
“天邪鬼”は不意に蒼依に背中を向け、森の奥へと逃げ込もうと試みた。しかし、交戦中に背後に回っていた冰華が道を塞いでおり、退路が潰されている。
『退ケェ!』
「退かない!」
『なら退クナ!』
「退かない!」
『コノ餓鬼ガァ!』
天邪鬼は右腕を振り上げ、長く鋭い爪を冰華に向けて振り下ろした。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑳

樹上の枝葉に身を隠していた鬼が、飛び降りるようにして二人に飛び掛かった。蒼依は咄嗟に冰華の背中を蹴飛ばしながら飛び退き、結果として鬼は二人の間を通過して地面に転がった。
「わあっ……とっ、とぉ。助かったよ、蒼依ちゃん」
冰華はバランスを崩しかけたもののどうにか転倒を堪えて振り返る。
二人の間には、奇襲を失敗した鬼が俯せに転がっており、起き上がろうと藻掻いていた。
「よく見えたね蒼依ちゃん⁉」
「人形がちらっと見てたからね……!」
手元に“感情人形”を再生成して攻撃に移ろうとした蒼依のすぐ横を、背後から白い影がすり抜けた。
「…………?」
蒼依が反応するより早く、それは一直線に地面に伏せる鬼に飛び掛かった。
「あ、蒼依ちゃん……あれって……!」
「……まさか、この辺まで縄張りだったなんて……冰華ちゃん、よくさっき転ばなかったね」
影の正体は、体長2mを超える巨大なイヌのような姿の妖獣だった。それは鬼を組み伏せ、爪を突き立て、容赦なく噛み付き牙を立てている。
「こいつ……“送り狼”だ……!」
送り狼に襲われながら、鬼は金切り声をあげて抵抗する。しかし、送り狼の膂力に負け、肉を裂かれ骨を砕かれ、全身あらゆる部位を牙で穿たれていく。
『おいコラ! ヤメロ! 犬野郎が! 俺は転んでネェ! 寝ッ転がったダケだゼ! オイ退きヤガレ!』
そう喚きながら鬼が暴れると、送り狼は急に攻撃を止め、鬼の背中から降りて闇の奥へと消えてしまった。
「あ、蒼依ちゃん⁉ 狼さん攻撃止めちゃったけど⁉」
「そりゃ、『転んだ奴』を獲物にするんだから、『そうじゃない』と言い張られれば……」
蒼依は《奇混人形》を発動し、刀剣の形状に変化させて鬼に斬りつける。
(あれだけのダメージ、手足も胴体もズタズタだ。勝てる……!)
しかし、振り下ろされた刃は鬼の肉体には届かず、地面に突き刺さった。鬼は全身を使って転がるようにして移動していたのだ。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑲

深夜の森の中を、蒼依と冰華の二人は周囲の気配を警戒しながら慎重に進んでいた。
「っとと……」
「蒼依ちゃん大丈夫?」
「うん」
足元の小さな凹凸に足を取られて転びそうになった蒼依を、冰華が支える。鬼を逃がしてから、このやり取りは既に5度目だった。
「どしたの蒼依ちゃん。疲れた? ずっと戦ってくれてたもんね」
「いや、それは大丈夫。ちょっと注意力が散漫になってて」
「暗いんだから気を付けなきゃ」
「いやぁ……さっき、人形たちを先に森に突っ込ませたじゃん?」
「うん」
「私、あれと感覚共有できんのよ……人形たちの見聞きしてるものが、ぼんやりと分かるの。『ぼんやりと』ね」
「へー?」
「ただ……あまりにもぼんやり過ぎて、めちゃくちゃ意識集中させないと分からないんだよね。だからちょっと、足元に注意払う余裕が……」
「おんぶしたげよっか?」
「重いよ?」
「大丈夫、私の腕は“河童”なんだから!」
「おんぶって腕だけでするものじゃないじゃん」
「良いから! 蒼依ちゃんは鬼見つけるのに集中して!」
「……じゃ、お言葉に甘えて」
蒼依が恐る恐る、冰華の背中に覆い被さる。
「……重い」
「だろうね」
冰華がよたよたと歩き出して1分も経たないうちに、背中の蒼依が声を上げた。
「止まって」
「何?」
「来る」

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑱

地面に俯せに倒れ、ぴくぴくと痙攣する鬼を見下ろしながら、冰華は再接続された両腕の挙動を確かめる。
「“河童の尻子玉”の話ってあるじゃない?」
「どしたのいきなり」
冰華の不意の発言に、蒼依は網状に変形させた“奇混人形”で鬼を拘束しながら答える。
「河童が溺れた子供から“尻子玉”を抜いて殺しちゃうの」
「あるねぇ」
「尻子玉っていうのは架空の内臓らしいんだけどね。……もし、『本当に何かを奪っているとしたら』?」
「…………何を?」
「“魂”」
冰華の淡々とした答えに、蒼依の眉が僅かに上がる。
「河童の手は、“尻子玉”……つまり、“魂”を標的の肉体から掠め取るの。しかも、『末端部からほどより多く』。多分、尻尾にでも掠ったんじゃないかな?余計なパーツが多いと大変だねぇ」
「物騒な能力だなぁ……」
「…………あれ?」
冰華のあげた素っ頓狂な声に、蒼依は捕縛しようとしていた鬼を見下ろした。そこに、鬼の姿は無かった。
「……冰華ちゃん? 魂を奪って動けなくさせたはずじゃ?」
「流石に1発で全部は無理だよ。感触的に、多分奪えたのは半分くらい。タフなやつなら十分動くもの」
「半分なら結構な痛手かな」
「うん」
「じゃ、この勢いで押し切っちゃおう」
蒼依は“奇混人形”を3体の“感情人形”に解体すると、森に向けて解き放った。

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プロ野球物語特別版〜裏方と選手が支えた90年〜

舞台は兵庫県西宮、この地に建てられた高校野球専門の野球場。
球場関西から11年後、この球場の建設に貢献して球場の前に駅を設置した鉄道会社に職業野球、のちにプロ野球と呼ばれるリーグに加盟することになる野球チームができた。
その名は、タイガース。

この国を襲った悲惨な戦争による中断を経て、プロ野球のフランチャイズ制導入。
この結果、都道府県単位でのチームの本拠地登録と届け出が義務付けられ、自社路線の駅前スタジアムでプレーすることが多くなったこの虎さんたち。

伝統的に用いられる独特な黒土に含まれる砂や土の割合を園芸さんとして親しまれるグラウンド整備士が日々の湿度や気温に合わせて調整し、プロや学生を問わず、ここに集まるすべての野球選手のプレーを支えてきた。
チームをはじめての日本一に導いた背番号31の選手も、まさか自分1人のためだけに手作業でグラウンドを均してくれていたとは知らず、軽視していたが現場を見たことで心を入れ替え、尊敬してやまなかった伝説の整備士さん。
他の屋外球場では中止になりそうな雨でも、灼熱の炎天下でも昼夜問わず試合の前後でグラウンドを整えてプレーができるようにしてくれている整備士さん。

彼らが整えてくれたスタジアムで、西の猛虎、タイガースは2年ぶり7度目の優勝を果たした。
移籍選手ではなく生え抜きの選手で、純血打線と伝統と誇りを胸に活動する園芸さんが光と影で支え合って掴み取ったリーグ優勝、それもチームの創設90周年の節目となる年、新監督の就任初年度にリーグ最速記録を更新する圧勝だった。

優勝おめでとう、阪神タイガース!

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑰

人形に退路を塞がせながら、蒼依は『冰華の腕』で殴りつける。鬼は身体を折り畳むように回避し、そのまま両腕を伸ばして長い爪で反撃を仕掛ける。
蒼依は倒れ込むように攻撃を回避しながら、『腕』を斜め上前方に向けて投擲する。倒れながら地面に手を付いて支え、足払いの回し蹴りを放つ。それと同時に、蒼依が投げ出した『腕』をキャッチした“奇混人形”が、それを鬼に向けて空中から叩きつける。鬼は伏せたような姿勢のまま横方向に身を投げ出し、両方の攻撃を回避した。
“奇混人形”は着地する直前、『腕』から手を放し、空中に投げ出された『腕』を更に蒼依が手に取った。蒼依はそれを“奇混人形”に向けて投擲し、回避行動を予測して“奇混人形”を突進させる。しかし鬼は回避行動を取らずに『腕』を受け止め、逆に奪い取ってしまった。目論見が外れたことで“奇混人形”は虚空に突撃し、そのまま前のめりに転倒する。
「ごめん腕盗られた」
鬼から目を離さず、蒼依が静かに言う。
「仕方ないよ。あとすっごいかっこ良かった」
「ありがと」
「早く倒して、腕も取り戻してね?」
「了解」
蒼依が答えたのとほぼ同時に、鬼が『冰華の腕』を振り上げながら飛び掛かった。『腕』は鬼の乱雑な扱いに合わせて滅茶苦茶に関節を揺らし、指先が木々の枝葉や下草を掠める。
その不規則な挙動を見極めようと観察していた蒼依の目の前に鬼が迫り、『腕』が直撃する寸前。
鬼が慣性そのままに倒れ込み、その手から『冰華の腕』が零れ落ちた。
(何だ……? いきなり倒れて……)
蒼依は警戒しながらも素早く『腕』を拾い上げ、冰華に投げ渡した。その掌が自然に動き、冰華の肉体に掴みかかると、腕は元の位置に再び収まった。
「冰華ちゃん? 何したの?」
「えっなんで私?」
「冰華ちゃんの腕振り回してこうなったんだから、冰華ちゃんのせいなんじゃないの?」
「まぁそうなんだけどね」

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑯

「……蒼依ちゃん」
鬼の様子を注視したまま、冰華が小声で呼びかける。
「何」
「多節棍って使える?」
「何いきなり。まあ三節棍ならよく使うけど……」
「3も5も同じだよね」
「そうかなぁ……なんで5?」
「蒼依ちゃん、手ぇ握って?」
「ん」
蒼依が冰華の右手首を掴むと、冰華は両腕を水平に上げながら、蒼依から離れるようにステップを踏んだ。それに合わせてずるり、と彼女の腕が抜け、両腕が繋がった奇妙な身体器官が蒼依の手の中に残った。
「うっわナニコレ気持ち悪っ」
「私の腕! 武器にして良いよ!」
「いや武器ならあるんだけど……まあ良いや」
蒼依は『腕』の両前腕部を持ち、軽く振り回しながら手応えを確認する。
(節が2つ増えただけで、一気に扱いにくくなるな……柔らかいせいで絶妙に握りにくいし……まぁ、やってみようか)
蒼依が『右前腕』節を掴み、反対側の先端を叩きつけるように振るう。鬼は大きく後方に跳躍し、蒼依から大きく距離を取った。そして態勢が整うより早く再び前方に駆け出そうとして、バランスを崩して地面に倒れ込む。
(……また躱された)
蒼依は内心で舌打ちしながら、鬼の背後を見る。そこに立っていたのは、人形型に戻った“奇混人形”だった。短槍状態から人形型に変化し直し、密かに接近していたのだ。
“奇混人形”は鬼が転倒したために羽交い絞めに失敗し、素早く回り込むような軌道で蒼依の隣に戻ってきた。
(まあ、何とかして当てるけど)
蒼依が鬼を指差すと、“奇混人形”は小さく頷き駆け出した。人形は再び鬼の背後に回り込み、蒼依と共に鬼を挟撃する形を取る。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑮

『クカカッ……キ、キキッ……知ってるんだゼェ? 盗み聞き、してたカラ……オマエ、“喜怒哀楽”を人形にして使うンダ』
鬼は長い前髪に隠れた口を歪めながら言う。
(……冰華ちゃん家で話してたの、聞かれてたのか。窓の下にでもいたのか? まったく気付かなかった……)
『ソレに、見たゾ……オマエの“武器”、人形を3体混ぜテ使うンダ。クカカッ』
「……それが何?」
拳を握り締めたまま蒼依が聞き返すと、鬼はケタケタと笑いながら言葉を続けた。
『カカカッ! 簡単な引き算ダ! 人間は感情ゼンブを捨てル事なんか出来ネェ! ソンナ事したら、感情ある生物は抜ケ殻になっちマウからナァ! ツマリ!』
鬼が右手の人差し指を立て、蒼依に突き付ける。
『オマエが同時に扱えるノハ“3体”! 3体マトめた“武器”は投げ捨てた! もう武器ハ無ェノダ!』
嘲るように笑う鬼に対して、蒼依の表情は飽くまで冷淡だった。
何も答えず駆け出し、跳躍して勢いのままに膝蹴りを鬼の鳩尾にめり込ませる。
『ゴブッ……⁉』
揺らいだ鬼の両肩を掴まえ、蒼依は更に膝蹴りを続ける。3度、4度、5度と、ひたすら膝蹴りを続けていた蒼依だったが、鬼が上半身と両腕を振り回したことで、飛び退くように距離を取り直した。
『効かネェんだヨ!』
反撃しようと、鬼が両腕を振り上げて一歩踏み出す。次の瞬間、鬼は『後方に向けて』跳躍した。その直後、1台のスクーター(原動機付自転車)が蒼依と鬼の中間を駆け抜けた。
(バイク……?)
蒼依が原付に気を取られていると、数m先の木の幹に車体を擦らせながら停止した機体から、冰華が飛び降りてきた。
「蒼依ちゃん! 助けに来たよ!」
「冰華ちゃん。原付免許持ってたんだ」
「うん、家まで取りに行ってて遅くなった。でも絶対轢けると思ったのに……」
「流石にエンジン音でバレるんじゃ」
「そっかぁ」
二人が鬼に意識を向けると、鬼もまた原付に気を取られ脇見をしていた。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑭

森の中は、動物の気配すら感じられない不自然な静寂に満ちていた。蒼依は“奇混人形”を人型に変形させ、自身の前方2mほどを先行させながら慎重に進む。耳を澄ませ、夜闇に目を凝らすが、“鬼”の気配は無い。
不意に、背後から草を踏む音が近付いて来た。まだかなり距離があるようで、耳に届くのは極めて小さな摩擦音のみである。音の感触は軽やかで、足音を潜めようという様子はなく、蒼依はその音の主を冰華であると判断し、構わず前進を続けた。
『おーい、蒼依ちゃーん』
しばらく前進していると、背後をついて歩く気配が蒼依に声をかけた。
(冰華ちゃん……?)
声に反応して立ち止まった蒼依は、“奇混人形”を自身の傍に呼び寄せてから振り返った。
「……冰華ちゃん?」
小さな声で呼びかける。しかし、返事はない。
「…………冰華ちゃん……じゃ、ないな?」
『冰華だよー』
蒼依の呟きに対して食い気味に、再び声がかかる。
(やっぱり違うな)
蒼依は“奇混人形”に手を繋がせると、それを音もなく短槍の形状に変化させた。
「冰華ちゃんならさぁ……さっさと姿見せるよね?」
闇の奥から聞こえた声に向けて呼びかける。数秒待った末に、『声』が返答した。
『アオイ、ちゃーン…………ヒョーか、だ、ヨォ……』
その声は明らかに異質で、冰華どころか人間の声ですら無いと容易に確信できるものだった。その声が止むのと同時に、荒々しく草木をかき分ける音と共に、気配が接近してくる。
(正体隠すの止めたか)
短槍を構え、短く息を吐き出しながら気配の方向へ投擲する。槍は木々の隙間を縫うように飛んでいき、硬い衝突音を鳴らした。木の幹に着弾したらしい。
(外した。そして、私は武器を失った……)
徒手のままに暗闇に向けて構えを取り、相手の出方を待つ蒼依。
数瞬の間を置いて。
『ク……クカカッ』
灰白色の皮膚を持った痩躯の“鬼”が、木の枝を掴み折りながらゆらゆらと現れた。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑬

(横跳び……脇から打ってくるか)
現在、蒼依は“奇混人形”を生み出すために、『恐』、『驚』、『悲』の3つの感情を切り離している。そのため、鬼の不自然な動作にも驚愕は無かった。“奇混人形”を動かし、横からの攻撃に備える。
しかし、2秒弱の静寂――鬼からの攻撃が無いことに、冰華が先に気付いた。蒼依の庇護下にあったことが、逆に周囲の状況を冷静に観察することを可能としたのだ。
「……蒼依ちゃん。アイツ、来なくない?」
「……逃げたのか!」
気付いたのと同時に、蒼依は鬼が逃げた方向へ駆け出した。
「あ、待ってよ蒼依ちゃん! 私も行くから!」
僅かに遅れて冰華が、その背中を守るように“奇混人形”が続く。

数分、寝静まった村の中を走り続けると、蒼依は星明りの下に“鬼”の姿を発見した。
鬼は集落内に多く見られる畑の上を躊躇なく通り抜け、逃走行動を継続している。
(あの野郎……山に隠れるつもりか?)
蒼依がその後を追うように畑に踏み入ろうとしたその時だった。
「あああぁぁーっ!」
悲鳴にも怒声にも似た冰華の叫び声が、深夜の村に響き渡った。
「うえっ、冰華ちゃん?」
「あああアイツ! アイツ畑に! めっちゃ! めっちゃ踏み荒らしてる! スイカ、ナス、キュウリ、レタス、長ネギ! アイツ! アイツ絶対逃がさないで!」
蒼依に追いついた冰華は、叫びながら蒼依の両肩を掴んで揺さぶる。
「分かった分かった……取り敢えず放して……」
冰華が手を放すのと同時に、蒼依は軽く真上に跳躍する。彼女が着地したのは、“奇混人形”が水平に持ち上げた片足の脛の上だった。
「……打ち出せ」
“奇混人形”が放った回し蹴りは、投石機のように蒼依の肉体を高速で射出し、一瞬にして鬼の背中まで追いつかせることに成功した。
更に“奇混人形”もまた、蹴りの直後にオオワシような形状に変化し、飛行によって蒼依の手の中へ舞い戻る。
蒼依は慣性そのままに、手の中で人形を薙刀の形状に変え、鬼の脳天を目掛けて振り下ろす。しかし鬼も前方に飛び込むようにして躱し、畑から転げ出て森の奥へと逃げ込んでしまう。
「逃がすかよ……!」
蒼依は振り下ろした勢いのまま畑の土に薙刀の刃を突き刺し、薙刀で地面を押すようにして棒高跳びの要領で畑の範囲外まで飛び出した。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑫

初撃の勢いのままに屋外に出た蒼依から一瞬遅れて、冰華も玄関を出て引き戸をぴしゃりと閉める。それによって、冰華の目にも、家を訪れた存在の外見が映る。
灰色の体表、異常に痩せ細った長い体躯と四肢、長い尾、黒い髪に隠れた顔面、そして額から伸びる2本の捻じれた角。
「こわい! これが“鬼”なの?」
鬼の真横を慌てて駆け抜け、冰華は蒼依の背中に隠れる。
「鬼っぽさは無いけどまぁ……角はあるなぁ」
蒼依の手に合った刀剣は再び溶け、元の3体の人形に戻った。
「とにかくまぁ……」
鬼が態勢を立て直し、二人に向き直る。そこに突撃していた蒼依が跳躍し、鬼の両角を掴んで顔面中央に膝蹴りを叩き込んだ。鬼がよろけたところに、蹴りの反動で浮いた膝を再び打ち込む。再び、更に再び、何度も膝蹴りをぶつけ続ける。
呼吸の合間、僅かに連撃の速度が落ちたその時、前髪の隙間から虚ろな眼が蒼依を捉えた。
「ッ……!」
鬼が動くより早く、蒼依は角から手を放し、鬼の胸板を蹴って距離をとった。
『アァ……全く……効かネェ、ナァ……?』
鬼は首をゴキゴキと回し、ニタリと笑った。
(マジかよ……手応えはあったけど……)
冰華を庇うように位置取りを調整しながら、蒼依は3体の人形を融合させ、“奇混人形”を隣に控えさせる。
鬼が長い腕を緩慢に動かして両手を地面に付き、獲物に飛び掛かろうとする猫のような低い姿勢を取る。蒼依が片腕をわずかに上げて冰華を庇い、“奇混人形”を一歩前進させて盾にする。
次の瞬間。
鬼は両腕両脚をバネのように使い、『真横に』跳躍した。

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Specter children:人形遣いと水潜り キャラクター②

名前:水潜冰華(ミクグリ・ヒョウカ)
年齢:16歳(高校2年生) 性別:女 身長:157㎝
説明:とある田舎の村に生まれ育った少女。色素の抜けた濃茶色のショートヘアが特徴。明るく人懐っこい性格で、人間・人外を問わず、友好的な相手には簡単に懐く。友達も多い。
5年前に川遊びしていた際に誤って足を滑らせ落水。挙句、川に生息する野生の河童に襲われ、殺されそうになった。その時、ある霊能者に救われ、人工呼吸のついでに河童の血肉を強制的に飲まされ、結果として河童の体質を部分的に獲得した。
河童の血肉を取り入れたためか、河童たちからは群れの仲間として好意的に捉えられるようになり、毎日早朝に川に下りては挨拶するのが日課になっている。
落水事件の後、泳ぎが好きに、かつ上手になってきたが、これは河童を喰ったこととは無関係。高校では水泳部に加入している。実力は県大会でギリギリ入賞できない程度。

霊能力:【河童通臂拳】
能力説明:両腕が肩の内側で1本に繋がっている。そのため、片方を引っ張れば繋がった両腕がそちら側に抜けてしまう。なお、体から抜けた後でも腕の操作は可能だが、見えない場所に腕があると、上手く動きをイメージできずに複雑な操作はできなくなってしまう。
もう一つの効果として、冰華は両手の指で対象の”魂”を引っかけ絡め取り、奪うことができる。この効果は、相手の末端部を狙うほどより多くの魂を奪い取れる(頭部や体幹部よりも、手足などを狙った方がダメージが大きくなる)。

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Specter children:人形遣いと水潜り キャラクター①

名前:豊原蒼依(トヨハラ・アオイ)
年齢:16歳(高校2年生) 性別:女 身長:162㎝
説明:ある街で生まれ育った少女。痩せた体躯、癖っ毛で肩甲骨の辺りまである黒髪、目の下のクマが特徴的。服装は黒い長袖のセーラー服に黒タイツ、スニーカー。
先天的に霊感があり、また固有の才能として、感情を人形の形で切り離し操る能力があった。昔から能力と霊感の才能があったことで、人知れず街に現れる怪異存在たちを祓う活動を続けており、実戦経験はかなりのもの。人形たちは通常時はあまり攻撃力が無いため、補助や妨害目的で利用しつつ、殴る蹴るの格闘戦で怪異を攻撃する。
また、他の霊能者には自分の能力を『喜怒哀楽の感情を人形の形で切り離す』と偽っており、『3体の人形しか使えない』と偽装している。
あまり感情を積極的に発露するタイプではないが、人間、特に霊能力の無い人間は庇護対象と捉えており、穏やかに接するようにしている。ただし相手が霊能者や近い立場の者の場合、遠慮が無くなって年相応のガラの悪さが出てくる。

霊能力:【感情人形】(パッション・ドール)
能力効果:感情を掌大の人形の形で切り離し、自由に使役操作する。人形自体の能力はあまり高くない。人形とはぼんやりとだが五感の共有が可能で、意識を集中させることで人形の見聞きしている情報を取り入れることも可能。
人形として切り離した感情を、能力持続中に蒼依が感じることは無い。また、人形が破壊されても蒼依に直接のダメージは無いが、その後の10分間程度、同じ感情を人形化することはできず、その感情を感じると胸が痛む。
能力の対象にできるのは『喜怒憂思悲恐驚』のいわゆる”七情”。また、すべての感情を切り離してしまうと、抜け殻のようになり再起不能になってしまうため、最低1つは感情を自分の中に残しておく必要がある(実質的に同時に使役できる人形は6体まで)。また、切り離した感情が何であっても、人形の性能に差は無い。
必殺技:《奇混人形》
【感情人形】で召喚した人形を『3体』融合させることで、1体の大型人形に変化させる。奇混人形は蒼依と同程度の体格のデッサン人形のような外見で、身体能力・耐久力ともに極めて高い。また、蒼依の思う通りに形状を変形させることが可能で、武器の代わりに用いることもある。蒼依が一番気に入っているのは三節棍型。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑪

二人は屋外での行動に備えて一度着替え、慎重な足取りで玄関に向かった。引き戸の擦りガラスには、子どもらしき背丈の影が映っている。
(子供? “鬼”は結構大柄だったはずだけど……)
蒼依は冰華の背後に身体を丸めるように隠れ、【感情人形】を3体召喚した。
「だーれー?」
扉の向こうに向かって、冰華が呼びかける。
『ミクグリちゃーん。あーけーてー。顔が入るくらいで良いからさー』
引き戸の向こうの影が答えた。
冰華は背後の蒼依にアイコンタクトを送る。蒼依は顎で玄関の外を指した。影との会話を続けるようにとの意思に、冰華は再び呼び掛けた。
「だからー、誰なのー?」
『あけてよー。腕が入るだけで良いからさー』
声の主は名乗らず、再び戸を開けるよう要求した。
冰華は再び蒼依を見る。蒼依が外を指差し、冰華は再び引き戸に向き直る。
「もしかして、ササキちゃん?」
『そうだよー。だからあけてー。指が入るだけで良いからさー』
「この村に、『ササキ』なんて家無いよ? 高校の友達にもいないし」
蒼依は思わず冰華を見上げた。
(冰華ちゃん⁉ 何て度胸だよ……⁉)
蒼依は人形3体を右手の上に呼び寄せ、いつでも攻撃に移れるよう身構える。
『あけてー。爪の先が引っかかるくらいで良いからさー』
引き戸に移る影は、いつの間にか異常に背丈が伸び、朧げなシルエットは灰白色に変化していた。
冰華は一度、蒼依に視線を移す。蒼依は無言で頷き、深く腰を落とした。
「……良いよー。爪の先なんて言わず、全身通るくらい開けてあげる」
冰華は蒼依の後ろに隠れるように後ずさり、精一杯腕を伸ばして引き戸に手をかけた。
「ただし……」
勢い良く扉を開くのと同時に、蒼依が屋外に向けて飛び出した。
「こっちの『全身』のことだけどね!」
(……《奇混人形》!)
右手の中の3体の小さな人形が溶けるように混ざり合い、蒼依の手の中で一振りの曲刀に変化する。シルエットの首の辺りを目掛けて振るわれた初撃は、相手の大きく身を屈めた回避動作によって対処された。

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Specter Children:人形遣いと水潜り その⑩

その日の夜、2人は入浴と夕食を終え、冰華の部屋でのんびりと休んでいた。
「冰華ちゃん、寝間着貸してくれてありがとうね?」
「気にしないでー」
「冰華ちゃん、寝間着は結構緩いの着るタイプなんだね。おかげで割とぴったり」
「普通じゃない? パジャマってゆるっとしたの着るものだと思うんだけど。っていうか蒼依ちゃん、手足長いよねー。モデルさんみたい、羨ましいなー」
冰華が剝き出しの蒼依の前腕に触れ、掌を滑らせる。
「こういうのは『蜘蛛みたい』っていうんだよ」
「良いじゃん蜘蛛。益虫だよ?」
「ポジティブだなぁ……」
時刻が午後11時を回った頃。2人が就寝準備を整えていたところ、冰華の母親が声をかけてきた。
「冰華ー? お友達が来てるけどー」
「え? うん分かったー。今行くー」
立ち上がろうとした冰華の肩を、蒼依が無言で掴んで引き寄せた。
「わぁっ」
「……冰華ちゃん」
蒼依はやや俯きがちだったものの、ただならぬ気配は冰華にも感じ取れた。
「えっ何蒼依ちゃん」
「冰華ちゃんには、『夜中にアポなしで家に尋ねてくる友達』がいるの?」
「えっ、いやそれは、…………!?」
蒼依の問いに、一瞬遅れて冰華の気付く。
「い、いや、ほら……もしかしたら、河童のみんなかも……?」
冰華の目は泳いでおり、その言葉があり得ない可能性であることは明白だった。
「……冰華ちゃん、出よう。私も行くから」
「えっ、いいの?」
「もしかしたら、ヤツかもしれないから。ここでぶつかれるなら好都合」
「……分かった。何かあったら守ってくれる?」
「うん」
2人は足音を殺し、揃って部屋を出た。
「……あ、待って冰華ちゃん」
「何よ蒼依ちゃん」
「セーラー服に着替えてからで良い?」
「……カッコつかないなぁ」
言いながら苦笑し、冰華は溜め息を吐いた。

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑨

「割とガチでヤバいやつじゃん!」
「だから最初に言ったじゃん『殺しに来た』って」
「……そういや言ってたね」
水際に並んで座り、二人は話し合う。集まっていた河童たちは、既に蒼依からの情報をもとに捜索のため散開していた。
「そういえばさぁ、蒼依ちゃん」
「何よ冰華ちゃん」
「子供さらうような凶悪な妖怪が、なんで子供の少ないド田舎にいるの?」
「いや知らないけど。隠れ場所多いからとか?」
「絶妙に頼りない……」
「仕方ないじゃんまだ高校生だぞ?」
しばらく意味の無い雑談を続けた末、二人はどちらともなく立ち上がった。
「取り敢えず……村戻るかぁ」
「何か手がかり無いかなぁー」

結果として、二人は何の成果も得られなかった。農作業の合間に休む老人、商店を利用する大人たち、村の数少ない子供たち、およそ出会えたすべての人間に、蒼依が『自由研究の一環で伝承について知りたい』という体で尋ねたものの、有用な情報は一切なかったのだ。
「……ダメだったねぇ」
「まぁ、仕方ないよなぁ……」
水潜家に帰還した二人は、冰華の自室に入ると揃ってベッドに身を投げ出した。
「疲れたぁ……蒼依ちゃん、今夜はうちに泊まる?」
「えー、あんま迷惑かけられないよ」
「大丈夫だよ、お母さんも蒼依ちゃんのこと気に入ってるし。蒼依ちゃん礼儀正しいんだもん」
「んー? いやぁ……まぁほら、いきなりお邪魔したわけだしねぇ……」
「めっちゃ良い子じゃん。……あ」
「何よ冰華ちゃん」
蒼依の問いかけに、シーツに手を付き、冰華が勢い良く身体を起こす。
「いやマジに何その勢い……」
「ねぇ蒼依ちゃん。今朝初めて会った時の話なんだけどさ」
「ん?」
「蒼依ちゃんの登場の仕方、変じゃなかった? 木から落ちたみたいな落としてたけど」
「あー……それは普通に、昨日の夜この村に着いて、宿も無いし適当な木の上で寝ただけだけど」
答えた瞬間、冰華が素早く蒼依を押し倒した。
「やっぱり今日はうちにお泊りしてもらいます!」
「……なんで?」
「オニがいるかもしれない危ない夜に、友達を外に置いておけるわけ無いでしょ!」
冰華に見下ろされながら蒼依は目を泳がせ、逡巡の末に、観念したように溜息を吐いた。
「あー……うー……うん。分かったよ、分かったから……」

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑧

水面の半球状の物体は、続々とその数を増し、じわじわと川辺の二人に接近してくる。
蒼依がよく観察してみれば、藻のような頭髪と頭頂部に剥き出しになった白い皿、髪の下に隠れた鋭い両目、濁った黄色の平たい嘴などが見られる。
(マジでちゃんと河童なんだなぁ……)
蒼依が興味深げに観察している横で、冰華はしゃがみ込み、河童たちに呼びかけた。
「ねぇみんな。私たちね、鬼を探してるの、オニ」
両手の人差し指を額の前で立てながら言うと、河童たちは互いに顔を見合わせる。
「それっぽい生き物、見てない? 何か心当たりがあったら教えてほしいな」
河童の1体が僅かに沈み込み、口元の水面に小さな泡沫が浮かび上がる。彼らにとっての『言語』である。
「うーん……たしかに、探すの手伝ってもらえたら嬉しいけど」
小さな泡が4つ、立て続けに弾ける。
「良いの? じゃあ、お願いしようかな」
「ねぇ冰華ちゃん、何言ってるか分かるの?」
横入りしてきた蒼依に冰華は頷き、更に尋ねる。
「ねぇ蒼依ちゃん。鬼の見た目について、もっと詳しく分からない?」
蒼依は俯いてしばらく考え込み、口を開いた。
「聞いた話によると……背丈は多分2mいかないくらい。あと、爪が長いらしい。詳しい情報までは、ごめん。……あぁそうだ」
「どしたの蒼依ちゃん?」
「冰華ちゃん、村で子供が消えたりしてない?」
「そもそも子供が少ないかな」
「アイツについて聞いたことがもう一つ。アイツは、『子供を攫う』らしい」

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑦

およそ2時間後、冰華の予想より遅く帰ってきた母親に出かけることを伝え、二人は村に繰り出した。
「そういえば蒼依ちゃん、この村に、その……鬼? がいるんだっけ? なんでそんなの分かるの?」
「そこそこ信用できる筋からの情報」
「何かかっこいい。どこにいるの?」
「そこまでは……少なくとも、この山のどこか」
「広いよ。人手いる?」
「めっちゃ欲しい」
「分かった! じゃあこっち来て」
冰華の案内で訪れたのは、早朝二人が出会った川辺だった。
「ここで、みんなに手伝ってもらいます!」
「……河童に?」
「うん」
冰華は大きく息を吸い込み、口元に手のメガホンを当てた。
「みぃーんなぁーっ! 来ぃーてぇー!」
残響に応え、水面に複数の波紋が浮かんだ。
「……冰華ちゃん?」
「ん?」
「この川、結構深いわりに滅茶苦茶水きれいだよね」
「そうだね。良い場所でしょ?」
「うん。河童……いるの? 姿見えないけど」
「いるよー。河童は水泳上手いから、隠れるのも得意なんだよ。ほら、ちゃんと波紋が出てるでしょ」
「姿が無いのが怖いんだけど」
二人が話していると、波紋の一つを突き破り、緑色の半球が水面に現れた。
「ほら出てきた」
「うっわマジじゃん。初めて河童の本物見た」

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑥

部屋の外から、冰華の母親が呼びかける。曰く、用事があって家を出るため、留守番を頼むとのこと。
「りょーかい」
冰華が答えると足音が部屋から遠ざかり、やや時間をおいて玄関が開き、また閉じた。
「……じゃ、私も鬼探しに行くから」
「あ、待って。私も一緒に行く!」
蒼依に続いて立ち上がった冰華の頭に、蒼依の軽いチョップが刺さった。
「痛いっ」
「さっき留守番頼まれてたでしょうが。親の言うことはちゃんと聞きなさいな。せっかくいい親御さんなんだから」
「でも……蒼依ちゃんのこと手伝いたいし……」
「危ないんだよ? あんまり無理しないで」
「危ないのは蒼依ちゃんも一緒じゃん」
「いやまぁほら、私は慣れてるから」
「それなら私はこの辺一帯に慣れてるよ? 土地勘!」
「……なんでそんなについて来たがるの」
「えー……お友達だから? あと面白そうだし」
「おいコラ冰華ちゃん」
「それに! 私だってそんなに弱くないんだよ!」
両腕で力こぶを作るジェスチャーをする冰華に、蒼依は溜め息を吐いた。
「……冰華ちゃんのお母さん、どれくらいで帰ってくると思う?」
「1時間くらいかな?」
「じゃ、その後出ようか。それまで、この村と周りのこと教えてよ」
「やったっ。私に分かることならなんでも聞いて!」
「うん。頼りにしてるよ」
「あっ、一応今のうちに番号交換しておこ? 何かあった時に便利だし」
冰華がスマートフォンを顔の前で軽く振った。
「スマホ持ってたんだ……」
「さすがに田舎舐めないで?」

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Specter children:人形遣いと水潜り その⑤

「おい何だその反応は。あんた人間でしょうが」
蒼依の怪訝な視線に、冰華はぎこちなく顔を背ける。
「な……何でもないよ……? あははァ……」
「おうコラ正直に吐けぃ。モチモチするぞ」
2体の【感情人形】が姿を現し、冰華の顔に飛びついて彼女の両頬をもみくちゃにする。
「あひゃひゃひゃ、やめてやめてー!」
【感情人形】たちと蒼依本人に組み伏せられた冰華は、息を吐き出し両手を投げ出した。
「こ、降参降参……」
「で?」
「私……友達に妖怪がいるの」
「種は?」
「河童」
「河童もいたの?」
「えっ、標的じゃなかったの? 私、この辺の妖怪で思い当たるのそれだけなんだけど……」
「ちなみに送り狼も道中にいたよ」
「世界は広いねぇ……」
蒼依が身体の上から退いたことで、冰華も起き上がる。
「ねぇ蒼依ちゃん……私の友達、殺さない?」
冰華の不安げな問いかけに、蒼依は人形の1体を冰華の頭に乗せながら答えた。
「河童のこと? 河童たちの前科は?」
「一番新しいのだと、私が襲われた時のことくらいかなぁ。大体5年くらい前? それ以降は、特に悪さしてる河童はいないかな」
「……自分を殺しかけた奴らと、友達? 妙だな……」
「私を襲った河童以外はみんな優しいよ?」
「うーん純粋」
「わーい褒めてもらった。それで? 蒼依ちゃんのターゲットって何者?」
「あーうん。何か、何かしらの鬼らしいよ。角も生えてるって」
言いながら、蒼依は両手の人差し指を立てて額の前に当てた。

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Specter children:人形遣いと水潜り その④

朝食を済ませた二人は、冰華の私室でしばしの食休みをとっていた。
「それで? 蒼依ちゃんはなんでこの村に来たの?」
「んー? んー…………これ言っていいやつかなー……」
「何、犯罪?」
「合法。っていうか現行法で多分裁けないやつ」
「つまり倫理的にはアウトなんだ」
「私はセーフだと思ってるよ」
「ふーん? まぁ正直に言いなよ」
「うーん……」
蒼依は言い淀みながら頭を搔き、髪の毛の中から掌大の人型ぬいぐるみを取り出した。
「斬新な髪留めだね?」
「違うわ。ほら」
人形を掌に載せたまま、それを冰華の眼前に差し出す。冰華がそれを見つめていると、人形はひとりでに動き出し、蒼依の掌に両腕の先端をつき、もたもたと立ち上がった。そのままバランスを崩し、床上に落下する。人形は数瞬震えた後、再び立ち上がり蒼依の肩までよじ登った。
「わぁすごい玩具。都会の流行り? 可愛いねぇ」
「……まぁ、うん」
目を伏せた蒼依に、冰華は堪えきれず笑いを漏らしてしまう。
「あははっ、ごめんごめん! 冗談だよ冗談! ちゃんと『視えてる』から!」
その言葉に、蒼依はきょとんとした表情を見せた。
「それ何? 式神的なやつ? 幽霊?」
「……えっと……私の『感情』を材料にした…………何か、そういうヤツ」
「へー。感情って、喜怒哀楽みたいなやつ?」
「うん。感情を1個ずつ切り離して、人形の形で動かすの。名付けて【感情人形】」
「わぁかっこいい。その人形、強いの?」
「弱いよ」
「弱いんだ」
蒼依が人形を指先でつまんで放り投げると、そのまま空中で溶けるように消滅した。
「……それで? 蒼依ちゃんなんでここに来たんだっけ?」
「あぁうんその話ね」
一瞬口をつぐみ、息を吸って再び口を開く。
「妖怪を殺しに来たの」
淡々と放たれたその言葉に、冰華は硬直した。

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Specter children:人形遣いと水潜り その③

改めて自己紹介をし直した二人は、河原から集落への道筋を並んで歩いていた。
「豊原さん」
「何?」
「蒼依ちゃんって呼んで良い? 同い年だし」
「駄目。あんたのことも冰華ちゃんって呼ぶよ?」
「良いよ?」
「とにかく駄目。私が恥ずかしいから」
「おっけー蒼依ちゃん」
「おいコラ冰華ちゃん」
ぐだぐだと話し続けるうち、二人の歩みは集落に到達していた。
「それで蒼依ちゃん? なんでこの村に? 自然豊かなだけで何もないよ?」
「んー……旅行?」
「ろくな荷物も持たず、この季節に暑苦しい冬服で?」
「だってこの辺標高高いじゃん。あと長袖なら草で肌切る心配も無いし」
「なんで制服?」
「別に良いじゃんか。私ファッションセンス無いんだよ」
「じゃあ今度一緒にお洋服買いに行こうね。私あこがれだったんだ、お友達とお買い物に行くの」
「別にいいけど、一番近い服屋までどれくらいかかるよ?」
「片道2時間?」
「重いって」
二人は水潜家の前までやって来る。
「取り敢えず上がりなよ。朝ごはん食べよう?」
「良いの?」
「良いの」
「じゃあ……まあ、うん。お言葉に甘えさせてもらおうかね」
手招きする冰華の後に続いて、蒼依は引き戸の玄関をやや猫背気味にくぐった。

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Specter children:人形遣いと水潜り その②

明くる早朝、午前5時前。既に明るくなっていた空の下、村に住む少女が一人のんびりとした足取りで散歩していた。
集落の総面積のうち半分ほどを占める畑では、何人かの老人が農作業に従事している。彼らに軽く会釈しながら、少女は慣れ切った経路を迷いなく突き進む。
少女は集落範囲を外れ、獣道を抜け、ごつごつとした礫の転がる河原に下りた。
水際まで歩み寄り、瞑目して一つ深呼吸する。朝のまだ涼しい空気と流水の清浄な匂いで肺を満たし、再び目を開く。
「おはよーございまーすっ!」
口元に手でメガホンの形を作り、水面に向けて呼びかける。それに応えるように浮き上がる波紋や泡沫に、少女の顔は綻んだ。
次の呼びかけをどうしようかと考えていたその時、少女の背後でガサリ、と枝葉を折るような音が立った。
「うえっ⁉」
咄嗟に振り返り、ガサガサと動いている茂みを恐る恐る覗き込むと、ひと際大きな音と共に、その中から一人の少女が立ち上がった。
「うげ……屋根だけじゃなく落下対策も用意しとくべきだったな……寝相は良い方だったんだけど……」
「だ、誰?」
木の上から落下してきたと思しき冬用制服の少女はそう尋ねられ、ようやく顔を上げた。
「うおっ、第一村人。ども、豊原です」
「豊原サン……私は水潜です」
「ミクグリ=サン? あぁうんよろしく」
「……ねぇ豊原さん」
「何?」
「肩にイモムシ乗ってる」
「えっ嘘⁉」
水潜と名乗った少女、水潜冰華が指差した左肩を、豊原と名乗った少女、豊原蒼依は慌てて払った。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 キャラクター③

アヴェス:ガッルス・ガッルス
モチーフ:セキショクヤケイ(Gallus gallus)
年齢:16歳  身長:170㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”のメンバー。トウゾクカモメ先輩より誕生日が4か月ほど遅い。仲間がいないと何もできないクソザコ。逆に言うと仲間がいるととても怖い。今回は残念ながら登場しませんでした。
レヴェリテルム:フェロクス・プエル(Ferox puer) 語義:野生児
説明:変形コンパウンドボウと蓋付矢筒。矢のストックは24本。一度に6本まで同時に矢を番えることが可能で、射出した矢は極細の導線で右手と繋がり、導線伝いに自由に操れる。複数本を同時に装填する際は、弦に専用装填補助具を取り付け、そこに矢を並べる必要があるので、連射は無理。一度射出してしまえば、いくらでも好き放題できるんだけどねぇ。

アヴェス:エクトピステス・ミグラトリウス
モチーフ:リョコウバト(Ectopistes migratorius)
年齢:7歳  身長:120㎝
所属カテルヴァ:迦陵頻伽(非公式)
説明:とある研究者の手によって密かに生み出された、本来禁じられているはずの『女性のアヴェス』。感情の不安定さを爆発力として発揮してくれることを期待されているようだが、教育不足のせいで随分と好き放題しているようで。ちなみに“迦陵頻伽”は彼女を生んだ研究者が便宜的に彼女に与えた所属先であり、彼女以外の構成員は存在しない。
レヴェリテルム:プリンセプス(Princeps) 語義:支配者
説明:大量のナノマシン。アリエヌスの体内に侵入し、操り人形のように支配する。最終的には侵入したナノマシンはアリエヌスを体内から破壊する。ちなみにナノマシンの総量は大体、大型アリエヌス10万体を同時に支配してもまだ余る程度。普段は周囲のありとあらゆる『隙間』に潜ませ、自らに追随させている。

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Specter children:人形遣いと水潜り その①

8月中旬。時刻は18時過ぎ。“逢魔時”とも呼ぶべき薄暗がりの中、とある山間の集落に続く未舗装の細い道路を、一人の少女が歩いていた。
その集落に住む数少ない少年少女たちの通っているいずれの中学・高校の指定制服とも異なるデザインの、黒い長袖のセーラー服に身を包んでいながら、僅かに露出した素肌には汗の一筋も流しておらず、人界から隔絶しているかのような奇妙に仄暗い雰囲気を漂わせている。
少女は厚いスニーカーで石ころや木の根を踏み越えながら、歩調を乱すことなく歩き続けていたが、集落が目視できる距離にまで到達すると立ち止まり、溜め息のように長く細く呼気を吐き出した。
「……思ったより、距離あったな。タクシーでも使えば良かった」
その場で両脚を上げ下げしながら疲労を誤魔化していた少女は、不意に背後の木々の奥に広がる暗闇に目を向けた。
「ふむ…………“怒”」
呟いて少女がスカートのポケットから取り出したのは、掌に収まる程度の小さな人型のぬいぐるみだった。ジンジャーブレッドを立体的に膨らませたような、クリーム色の人型の頭部には、単純な丸型の小さな両目と半月型の大きく笑ったような口だけが縫い留められている。
「行っておいで」
少女が手の中に囁きかけると、人形は小さく震えながら立ち上がり、短い両腕で力こぶを作るようなジェスチャーを決めると威勢よく地面に飛び降りた。そのまま少女が元来た方向へ短い脚を精一杯回して走り、地面に盛り上がった木の根に阻まれあっさりと転倒した。
次の瞬間だった。暗闇の奥から風のように現れた大型の野犬のような生物数頭が一瞬にして人形に飛び掛かり、鋭い牙と爪によって無数の繊維片へと解体されてしまった。
破壊された人形の残骸が少しずつ崩れて消滅する様子を眺めながら、少女は溜め息を吐いて道端の木の根元に慎重に座り込んだ。
(……送り狼、かぁ…………。何か途中から気配がついて来るとは思ったけどさぁ……)
木の幹に寄りかかる少女の周囲を、送り狼たちはしばらくうろついてから、小さく鼻を鳴らして再び闇の奥へと消えた。
「……ま、あの村までの安全は担保されたってことで」
少女は立ち上がり、服に付いた土埃を手で払うと、再び集落へと歩き出した。

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空想少年要塞都市パッセリフォルムズ:告鳥と悪霧 キャラクター②

アヴェス:ピトフーイ・ディクロス
モチーフ:ズグロモリモズ(Pitohui dichrous)
年齢:12歳  身長:152㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”の新入り。戦績は上々。最近の悩みは前歯が抜けてしまったこと。ご飯が食べにくい。大人になりたくないので、立派に戦って殉職したい。
レヴェリテルム:ソルス=ヴェネヌム(Solus venenum) 語義:唯一の毒
説明:口を開けた毒蛇を模した、全長3mほどの金属製の杖。首が自由に動き、顎も開閉する。内部に仕込まれた腐食液を毒牙部分を通して射出可能で、相手に食いつかせてから注入すれば確実にぶつけられる。何故か火炎放射も可能。舌下の穴からぶわって出る。特に意味も無く目も光る。思いの外やりたい放題。

アヴェス:ステルコラリウス・ポマリヌス
モチーフ:トウゾクカモメ(Stercorarius pomarinus)
年齢:16歳  身長:173㎝
所属カテルヴァ:以津真天
説明:対大型敵対存在特攻先遣部隊“以津真天”の副隊長。高校生なので結構忙しい。一番の年上なので何かと頼られがちだが、他人のサポートはかなりド下手クソ。1人で戦うか、周りが合わせてくれるのが一番やりやすい。
レヴェリテルム:ポラリス=カエルム(Polaris caelum) 語義:極地の空
説明:長さ150㎝程度の短槍と、縦横150㎝×45㎝程の大盾。大盾は浮遊させ、飛行ユニットとして利用可能。小型無誘導ミサイルも撃てる高性能大盾。短槍の方は馬上槍形態と大刀形態に変形可能。短槍形態は投擲、馬上槍形態は刺突、大刀形態は斬撃の威力をブースターユニットによって強化可能。更に、大刀形態の武器と大盾を変形合体させることで、大型戦斧にもなる。