表示件数
0

ユーラシア大陸縦横断旅25

クラスノヤルスクを出てからおよそ五時間半、マリインスクに着いた
「え?今2時過ぎだよね?なんで10:27発なの?」彼女が駅の時計を見て驚く
「さあ、なんでだと思う?」といたずらっぽく笑って訊き返す
そしたら彼女が「その笑顔は反則だよ〜もしかして、あの中国のお仲間とグルでプロポーズとセットのドッキリ仕掛けたの?」と見当違いの質問が…
もう種明かしするしかないな
「ロシアって国土が大きいでしょ?だから、タイムゾーン、つまりある一定の範囲から向こう側に行けば時計の針が戻ったり進んだらするエリアの境界が複数あるんだ。それでも、一つの国の中にそうしたエリアの境界線があって、そこを跨ぐ列車を走らせるなら、基準が必要でしょ?」そこまで言うと、「じゃあ、その基準ってもしかして、首都であるモスクワの時間ってこと?」「その通りさ。ここはノボシビルスクのタイムゾーンの中なんだ。こことモスクワの時差がおよそ四時間なんだ。あと、プロポーズの件はアイツが勝手に指輪が入った箱を北京の大使館経由で俺に届けただけさ。俺は先輩がパリの日本大使館にいると思ってパリの大使館経由で渡したかったんだけどなぁ」そう説明しているうちに列車は駅を出る
「それってどういうことなの?」
「これ、見てみなよ」
「この日って…」そう、そこには『パリ到着』と書いてあり、その上には『想い人の誕生日』と書いてあったのだ
「この日って君の誕生日じゃなかったっけ?」「そうだけど、なんで知ってるの?」「あの時一緒だったオプで誕生日の話題になったの、覚えてない?」「思い出した!その時、私も自分の誕生日言ってた。と言うことは、覚えていてくれてたの?」と嬉し泣きしている「KLで言ったろ?君のこと忘れられなかったって。言い換えれば、君とのやり取りはほとんど、俺の頭の中に入っているんだよ。あと、俺は好きな人にプロポーズする時はその人の誕生日に『プレゼントは俺だよ。その証拠に、ほら』と言って夜景の綺麗な街で指輪と赤バラの花束を渡すシチュエーションに憧れてたんだ。でも、『愛の街』で有名なパリに着く前にやっちゃった」と言うと「じゃあ、11月生まれの貴方の誕生日プレゼントは花嫁姿の私だね」と彼女が顔を真っ赤にしつつも笑っている「いや、それよりも読売の日本一」と返す
彼女の誕生日まであと6日
よし、プレゼントをモスクワで調達だ

0

ユーラシア大陸縦横断旅22

午前1時、俺たちはノックの音で起きた
どうやらここは中蒙国境の中国側にある内モンゴル自治区のエレンホト(二連)のようだ
2人とも中国語が話せないので、彼女は英語、俺は片言のロシア語で対応して中国を出国する
そして、俺たちはすぐにモンゴルへ入国するが、列車は線路幅の関係上台車変更の作業中だ
車内に戻って2人とも一眠りするとカーテンの向こう側から朝日が差し込んできた
時計を見ると6:20とのこと
つまり、ここはゴビ砂漠の中にあるサインシャンドということか
実際、駅名標にはキリル文字でサインシャンドと書いてあった
ウランバートルの街は午後2時半ごろに見ることになるのかなぁと思い、二度寝した
チョイルという街の駅に着いて目が覚めた
そこで気付いてしまったのだ
そう、食堂車での朝食の時間は終わってしまったと
そして、彼女もまだ寝ている
暇を持て余していたので、モンゴル語で自分が歌える唯一の歌を歌いながら窓の外を流れるモンゴルの広大な荒野と草原の景色を見る
「ダルハン〜マンナイ〜ツスゲル〜ウルス〜♪」と歌っていると、なぜか隣の客室が静かになった
そして、昼食時に食堂車で隣の客室にいたモンゴル人の客に話しかけられた
お互いに英語で会話していると、実は俺が鼻歌で歌っていたのはモンゴルの国歌だったことを知った
そして、俺はモンゴル国歌を歌える日本人として男女関係なくモンゴル人の乗客から人気者扱いされてしまった
そして、その光景を見ていた彼女が嫉妬したのは言うまでもなく、その後客室で平謝りした
気付いたら列車は起伏の激しいウランバートルの郊外にある高原まで出ていた
その高原地帯に沈む夕陽を2人で見て、関係の修復に成功した
そして、夜になりスフバートルに着き、いよいよロシア入りすることになる

0

ユーラシア大陸縦横断旅21

上海虹橋空港に隣接した虹橋駅からおよそ4時間半、北京の駅に着いた
そして、会心の友とはここで分かれるはずだ
ところが、彼は「俺たちの先輩で日本大使館に勤務している人がお前に渡したいものがあるそうだ。それを受け取りに行かないか?」と言って俺とより長く一緒にいようとした
結局、日本大使館へ3人で行って紙袋の中に入ったプレゼントのように包装された小さな箱と俺の名前宛てに書かれた便箋らしき封筒を渡された
そして、封筒の中を開けてみると手紙が入っていた
俺が朝鮮半島にルーツがあることを誰かが知っていたのだろう
内容は日本語だが、ハングル表記で書かれていた
要約するとこうだ
「この紙袋の中には、あのガイドをしていた友達から教えてもらった情報を元に、彼女へのプロポーズ用の指輪が入った小さな箱が入っている。北京で開けずに、『愛の街』として知られるパリまで開けるなよ」とのことだ
それを読んで俺は自分のメンツを潰された気がして茫然としていた
彼女は「ハングルって難しい。解読して」と俺にねだってくる
「これはちょっと見せられないよ…」と言うしかなく、彼女もそれ以上は追及しなかった
そして、いよいよ北京を発つ時間になり、友に感謝の言葉を述べて俺たちは寝台列車に乗り込む
次に起きる頃にはもうモンゴルだ

0

ユーラシア大陸縦横断旅20

3人揃って朝食を取った後、すぐに荷物を纏めて駅に行く途中のタクシーから京杭運河を見る
友曰く、「よく見ろよ。これが隋の煬帝の大運河を共産党下部組織の人たちが拡幅したもので、一部は世界文化遺産さ。」とのこと
俺たち2人の反応は少し違った
彼女は「これがあの大運河なの?すごい!初めて実物見たけどカッコいい」かなりと興奮気味
俺はというと、「大運河って、水の都の蘇州も通ってなかったっけ?」と質問する
「蘇州も天津も通るぞ。ただ、やっぱり終点の杭州が有名だな」とのこと
そんなやり取りを経て、杭州の駅に着いた
上海まではおよそ40分ほどだそうだ
実際、思いの外すぐに上海に着いた
ただ、列車の接続の都合上上海観光はお預けになった
それを聞いた彼女は少し残念そうだ
「超大都会の景色、見てみたかったなぁ…」
「俺も中国最大規模の貿易港の港湾の風景見たかった…でも、まだまだ超がつくほどの大都会には寄るからそこの風景見ようよ。夜景で輝くタワーブリッジとか、夕暮れのグランプラスとか、昼下がりの東京のアップローズの庭とかオススメだよ」
「昨日の情報、役に立つな」と耳打ちされて苦笑いするしかなかった
そして、彼女が疑問符を浮かべる
「アップローズってのは東京、それも俺が生まれ育ったエリアの施設の名前さ」と解説する
そして、友から「それも、結婚式場な」と補足されて2人とも頬を染め、沈黙が続く
車内でそんなやり取りをしていると早くも列車が蘇州を通過した
そして、最初の停車駅、南京南に滑り込む
南京南を出てすぐに長江を渡ったが、まだまだ北京への道のりは長い

0

杭州での一幕(ユーラシア大陸縦横断旅)

宿にチェックインしてすぐ、俺たちはカーテンを開けて眼下の夜景を眺めてすぐ、部屋のベッドの上に倒れ込んだ
それもそのはず
飛行機でも2時間半の距離を高速鉄道で約5時間、そしてそこにプラスしてビエンチャンからの約5時間、合計およそ10時間も列車に座っていたのだ
そして、会心の友から内線電話がかかってきたので俺が受ける
「2人とも、あんな長旅してるんだから疲れてるんだろ?だから、明日の朝まで起こさないよ。
ゆっくり寝て疲れ取れよ。でも、お互いが魅力的すぎてまともに眠れなかったとかいう言い訳はしないでくれよ?北京からの列車に間に合うよう全て手配してあるんだからな?
あっあと、お前が列車内で寝ている隙にお前にとって将来必要になるであろうモノを注文するためのメモ書いてズボンのポケットに突っ込んで置いたからな。参考にしてくれよ?」
「そのモノって何だ?危ないモノじゃないよな?」「おいおい…いくら何でも、危ないモノ注文してお前らの人生破滅させるほど愚かなことはしないぜ?そのモノってのは、婚約指輪だ。それだけ2人ともお似合いってことは将来的には彼女さんの左手に着けてやるんだろ?だったら、あらかじめ指のサイズ測った方がいいと思ってな」
そのやり取りを彼女も聞いていて、そばにいた彼女は顔を真っ赤にしてフリーズしていた
「君のその粋な計らいは嬉しいし、俺としても指輪なら将来的に渡すつもりだったからありがたいんだけど、そばで彼女が顔真っ赤にして聞いてるからその辺にしといてくれ」「お前も爆弾発言してないか?」
「あっ…」
それ以降の沈黙を破る砲撃のような大声で彼女が一言
「2人とも、あまり揶揄わないでください!」
そして、お互い気まずくなってどちらともなく電話を切った
お互いに興奮して眠れないので、過去の旅での体験談を語り合った
そして、話し疲れたのか彼女が寝落ちしたので、ベッドに運んでやることになった…
こんな可愛い姿見せられたら、眠れんわ!
彼女の寝顔が窓から差し込む月と港町のネオンの光に反射して今まで見たことない輝きを発していた

0

ユーラシア大陸縦横断旅19

2人分の荷物を3人で分担して大急ぎで目の前に止まっているバスに運び込み、昆明南駅から昆明駅に移動する
そして、すぐに和諧号上海西行きの列車に乗るため手続きを済ませて3人で車内に入る
すると、彼が「手配しといた宿に連絡入れるなら早い方がいいと思うから、検札済んだらすぐデッキ行っていいか?」といきなり尋ねてくる
彼に何か考えがあるのだろうと察して、「わざわざすまない。」とだけ返した。すると、すぐに車掌が来て検札が済んだ。
その時に彼が中国語で車掌に一言二言発したのだが、俺は「シャンハイシー」と「ハンチョウ」という2つの駅名、そして中国語で「私たち」を意味する単語を聞き取った。
ここで得られた情報から、直感で「もしかしたら行き先が変わるのかもしれない」と察して万が一に備えて彼に聞いた。
「もしかして、俺たちは上海じゃなくて杭州で降りることになるのか?」
彼は「そうだ。勝手に変えて申し訳ないけど、実は宿が上海だと値段は高い上に予約取れなくてな。だから、杭州に宿を手配させてもらったんだけど、切符だけは事前に上海までの分で買っておいて、手続きの関係上切符の変更が間に合わなかったんだ。あと、彼女さんもお前と同じ宿の方が心強いだろ?だから、さっきバスで彼女さんと話して宿の変更について承諾受けたから、彼女さんの宿も変えようと思ってな」と言ってスマホを持ってデッキに向かっていった。
それからおよそ20分、「おい、彼女さん起きたら伝えてあげて。『宿の変更できた』ってな。一応、俺も君たちと同じ宿取ってあるよ。部屋は分けてもらったよ。彼女さんとお前で一部屋使いな。」と言いながら彼が戻ってきた。
「甘い一時過ごしても良いけど、部屋の中だけにしてくれよ?俺は見てられんよ」という捨て台詞付きで
そして、列車が義烏の駅を通過する頃に彼女を起こして、降りる支度をする
あと、数十分で歴史と水路の街、杭州だ
明日の昼の列車で上海西へ行き、そこから北京行きの和諧号に乗り換えて北京を目指すことになっている
彼曰く、今回の宿では部屋から浙江省随一の大都市、杭州の夜景が一望できるそうだ
そんな話に俺たちカップルが想像を膨らませていると、列車は杭州の一つ手前の駅を通過した
目的の駅に着いて外に出ると、海の方から昇る月が綺麗だ

0