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厄災どおるtutorial:嘘吐き煌星 その⑤

「……あなたの仕業か」
目だけをサユリに向け、少女は低く言う。
「だとしたら?」
「まず、あなたから」
倒れた体勢のまま、少女がロケットのようにほぼ水平に飛び出した。サユリは再び地面を揺らしたが、空中にいる少女に影響は無く、一瞬のうちに接近した彼女によって、サユリは両足首を切断されてしまった。
「っ!」
既に切断されている右腕を伸ばすが、透明な体内液が飛び散るばかりで、少女を止めることはできない。
更に踵を返した少女が、心臓目掛けて刺突を放ってくる。サユリは倒れ込みながらも身体を大きく反らしながら躱し、心臓の代わりに左の肩の辺りに刀剣が突き刺さる結果となった。
「……捕まえた!」
右腕の肘を刀を握る少女の腕に絡みつけ、残る左手で肩の辺りを掴み、自身の倒れる勢いも利用して引き倒す。
「は、離せ……ぎッ⁉」
サユリの左手から少女の身体に、強烈な振動が一瞬伝わる。全身へのダメージで一瞬意識が飛び、気付いた時にはサユリを下敷きにうつ伏せに倒れ込み、後頭部を呪術師の男性に抑えられていた。
「ぅぁ……」
「悪い子だ……少し大人しく、してもらおうか!」
男性の手から、呪術的エネルギーが直接注ぎ込まれる。少女は一度大きく痙攣し、脱力しきって動かなくなった。

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厄災どおるtutorial:嘘吐き煌星 その④

「そ、ソラ?」
「はぁ……我らが主さまはこれだから……コイツの手が見えないんですか」
ソラの言葉に男性が改めて少女の右手を見ると、手の中には長さ数㎝の刃が握り込まれており、それは男性の胸元にまさに突き立てられようとしていたところだった。
「なるほどォ? コイツ、まだ呪力が足りてないモンで暴走状態が収まってねーわけだ。言っとくけど私は手伝わないぞ?」
イユの言葉に男性は頷いた。それと同時にソラが少女を押し返すが、少女は飛び退くように躱し、それまで握っていた小さな刃の代わりに刃渡り50㎝ほどの片刃の刀剣を生成した。
「サユリ! その子を止めてくれ!」
「了解です、未熟なマスター」
向かってきたサユリに、少女が斬りつける。サユリは身体を大きく反らせて回避し、刀剣を持っている方の手を掴もうとする。少女はそれを素早く手を引きながら躱し、ついでとばかりに伸ばしてきたサユリの手首を切断した。
「っ……! 速い……」
少女が飛び退き、サユリは呪術師の男性を庇うように位置取りを調整した。
「サユリ。何とかしてあの子に直接触れたいんだ。手伝ってくれるね?」
「……まぁ、マスターはすっ鈍いから、1人じゃあの子に近付く前にナマスにされちゃうのは分かりますけど……たぶん、あたしじゃ抑えられないと思うので、粘っていられるうちにさっさと決めてください」
「ああ、やってみよう」
少女が再び距離を詰めようと駆け出す。その瞬間、突如バランスを崩し勢い良く転倒した。
「あれ……? 足元が、急にゆれた……?」
立ち上がろうとして、再び頽れる。