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ファヴァー魔法図書館 #21

『婚前の段 o:@yP1』

少しだけ昔。
法帖敦は高校生であった。
成績が突出していいということを除けば、普通の高校生に見えた。
しかし、法帖は普通の高校生では無かった。
法帖は高校生ながらにして婚約者がいた。
相手の娘の名は月ヶ瀬ながよ。
余計かもしれないがなかなかの美人である。

法帖家と月ヶ瀬家は由緒正しき名家であった。
それ故に、「許嫁だろう」「二人は可哀想に」などという声もあがったが、この婚約は二人の意思である。

法帖は長野に、月ヶ瀬は京都に家を構えていた。
ある時、法帖はながよに会うため京都へ向かった。

時は大正、
17歳の法帖は一人夜行列車に乗るのだった。

To be continued #22↙
『婚前の段 o:@yP2 かすていら』

P.S.文体が変わったのは、
恐らく伸ばした髪を切ってしまったからでしょう。

てなわけで第3章のはじまりはじまりです。
この章は話に一貫性を持たせるつもりなので、これまでのそれよりは読みやすくなると思います。

みんなよろしくね。

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もう一回

もう一回なんてもうないよ
冷えたマグカップ両手でつつんだ
誰にもいえないような、気持ちが渦をまく
もう一回なんて期待ない
しあわせになれない理由をわかっているつもりなの
なのだけれど
ほっぺた染めたって胸が高鳴ったって
つたわらないじゃない
つたわっちゃ負けじゃない
もう一回なんて言うなよ
はなれて気づくことは、誰にもいえないような気持ちしか残らないこと
もう一回なんてもうないよ
盲目になったつもりはなかったけれど、少しはそうだったみたい
もう一回なんてもうないよ

1

一抜け

空は自由の象徴で。
私にとっての自由とは、他人を脅かす自由を誰も持っていないこと。
そういう世界を願ってる。
水たまりに押し付けられた、もしくは、浸りきった世界から、私は顔を上げるの。
(最近、身近にある色んな差別や抑圧に気づくようになって、その分生きづらさは増してるけど、もう流していたくはないなぁと)

2

勉強しなきゃ…!

まぶたを開くと
木製の地平線がそっと延びていて
頭を降ったら目の前に星が瞬いた
いつの間に寝てたっけ
目の前の真っ白な雪には
赤い丸と赤い流れ星
どちらが多いか、数えようとしてなかった
でも、向きあわなきゃ
私の手には未来がある

シャープペンシルを握りしめる

空をみつめた
君の瞳のうるみを
私はまだ覚えている

2

無題

冷え切ったこんな日は
海に沈めば気持ちかろ

切り裂くような冷たさには
清浄なものが宿っている

茹だるようなこんな日は
火口から落ちれば気持ちかろ

摺り潰されるような熱さには
清浄なものが宿っている

痛みには 清浄なものが宿っている